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その4

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そして、3つ目の選択肢は、今までとは全く違う、神様の割り当てたランダムな人生でした。これは一種のお遊びで、本気にはしていませんでした。しかしながら、自分の運命がこうも儚く苦しいものであると悟った時、全てを投げ捨てて、もう一度最初からやり直すというのも悪くはないと思いました。

「しかしながら、それは最終手段だからね!」

神様はこう言っていました。わかっています。でも、私はなんだか限界のようで……。

「もうそろそろいいでしょうか?」

私は安易に第三の選択をしようと思いました。

「まだ時期尚早だ!」

神様に怒られました。

「もう少し繰り返してみるんだ!それでダメだったら、そのときは考えてやろう!」

自分で提案しておいてひどいじゃないか、なんて思いましたが、まあそれはおいておいて。

「承知いたしました!」

私は叫んだ。そして、いちど家の中に入った。

「あなた……少し強く言い過ぎじゃないですか?」

私の父に反論をしていたのは、私の母でした。父よりは、私の言うことをきちんと聞いてくれて、私がしたいと思うことをさせてくれる親でした。

「クリスがああなるのには、何か深い訳がおありなのでしょう。ひょっとして……ハル様に何か問題でも?」

私は心の中で喜びました。母が気づいてくれたのか、そう思っておりました。しかしながら、父がすぐに怒りだしました。

「ハル様に問題があるだと?そんなわけはないんだ!全部、クリスが悪いんだ!」

父が怒り出すと、母の手にはもう負えませんでした。私は必死に涙をこらえました。母に申し訳なかったのです。母は、私の悲しむ姿を見たくないと言っていました。私が泣きだすと、母は私のことをそっと抱きしめてくれました。そして、

「あなたは何も悪くないですよ」

と慰めてくれました。母の優しい言葉に励まされて、私は母の顔を見つめると、途端に母は泣き出しました。そしてただ一言、

「ごめんね」

と言いました。私はこの、ごめんね、を聞きたくなかったのです。









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