上 下
8 / 18

その8

しおりを挟む
「君のおかげで私は人と関わることが上手くできるようになった。ありがとう」

ハル様は行動変容を起こしました。ああ、良かったですね。今までよりは大部ましです。女は嫌いだ、なんて、そんなことはもう言いそうもありませんでした。

「それはよかったですね。もしよろしければ……」

私はここでチャレンジしました。しかしながら、ハル様は違った答えを示しました。

「そうなんだ。君のおかげで、私は恋をするようになった。ほら、こちらが人生最初の恋人であるマーガレットだ。ほら、きちんと挨拶して!」

「この度は、まことにありがとうございました」

新しいケンカを売っているのでしょうか?私は反応に困りました。

「これで、やっと私は幸せになれる。ありがとう。それでは……」

「お待ちください!!!」

私はハル様に向かって叫びました。

「そんな勝手なことが赦されるとお思いですか?私の気持ちを全部踏みにじって……あなただけが幸せになるんですか?私が今まで繰り返してきた人生は何だったのですか?」

ハル様は、私が人生を繰り返していることなんて知りませんでした。ですから、私が勝手に一人で吠えていたのです。

「許しません。あなたを絶対に許しません!!!」

次の瞬間、私はハル様の元に駆けよって、頭を一発殴りました。

「クリスさん!」

マーガレットが私のことを制止しようとしました。

「うるさい!あなたには関係ないでしょう!!!」

その制止を振り切って、私は自分の指先が痛むのを忘れて、何度も何度も殴りました。
しおりを挟む

処理中です...