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その2
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一遍に問題を片付けてしまってもいいのだが、せっかくだから、色々楽しんだほうがいい。マリアはそう思った。だから、第一王子アレックスの周辺部を固めている側近たちから切り崩していって、それから、アレックスとイングリットを葬り去ろうと考えた。
アレックスが、マリアの学生時代の試験不正云々と言っていたので、マリアはとりあえず、卒業したての学院に足を運んだ。そして、アレックスの発言に関わっていると思われる側近を洗い出すことにした。顔なじみの教師や、自分のことを慕ってくれた後輩たちに話を聞き、学業成績や卒業決定委員会の構成について聞き出し、黒幕のしっぽを掴むことができた。
「マリア様。恐れながら……私の口から申し上げるのは憚られるのですが……あの方を敵に回すというのは、避けた方がよろしいのではないかと思いまして……」
マリアの後輩で、最も親しかった公爵令嬢のカレンがそう言った。
「どうして???私にはもう失う物がないのよ???何も恐れてなんかないわ。それより……あなたに危害が加わることは避けたいから、これ以上私に関わらないほうがいいわ。今回の協力に関しては、最大限の感謝を示す。でも、ここから先は私の仕事だから……」
そう言い残して、マリアはカレンにさよならをした。
「おやおや、随分と早く分かったのですね???」
「ええ、私にも意外と協力者が多いものでね。グラント伯爵……」
アレックスの側近として、主に学術的なことを取り仕切るグラント伯爵。その聡明なる出で立ちに劣らず、頭脳明晰であり、評価は非常に高い。相手に対する敬意を常に忘れず、それ故、王子を始めとした王家の人間からも信頼の厚い、将来有望な貴族である。
「あなた様がここにいらっしゃったと言うことは……なるほど、この前の婚約破棄についてご不満がおありのようですね。あなた様が関わった不正について、私が何も隠さずに第一王子アレックス様に上奏したことが原因……だから、私のことを恨んでおられると、まあ、こういった具合でしょうか???」
「あら、流石は頭脳明晰なグラント伯爵。私が説明するまでもなかったようね」
すると、グラント伯爵は、身を乗り出してマリアの元に近づいた。
「ココだけの話……あなたは本当にアレックス様のことを愛していらっしゃるのですか???」
グラント伯爵はマリアに質問した。マリアは不意を突かれて、質問の意図が分からなかった。
「なるほど……恐らく、私に劣らないくらい成績優秀なあなた様が困惑していらっしゃるということは……私の説明がまずかったようですね……」
そう言って、マリアに色々と耳打ちを始めたのだ。
「実を言いますと、私はあなたのことを愛しているんですよ……」
グラント伯爵の思いもよらない告白に、マリアは一層困惑することになった。
アレックスが、マリアの学生時代の試験不正云々と言っていたので、マリアはとりあえず、卒業したての学院に足を運んだ。そして、アレックスの発言に関わっていると思われる側近を洗い出すことにした。顔なじみの教師や、自分のことを慕ってくれた後輩たちに話を聞き、学業成績や卒業決定委員会の構成について聞き出し、黒幕のしっぽを掴むことができた。
「マリア様。恐れながら……私の口から申し上げるのは憚られるのですが……あの方を敵に回すというのは、避けた方がよろしいのではないかと思いまして……」
マリアの後輩で、最も親しかった公爵令嬢のカレンがそう言った。
「どうして???私にはもう失う物がないのよ???何も恐れてなんかないわ。それより……あなたに危害が加わることは避けたいから、これ以上私に関わらないほうがいいわ。今回の協力に関しては、最大限の感謝を示す。でも、ここから先は私の仕事だから……」
そう言い残して、マリアはカレンにさよならをした。
「おやおや、随分と早く分かったのですね???」
「ええ、私にも意外と協力者が多いものでね。グラント伯爵……」
アレックスの側近として、主に学術的なことを取り仕切るグラント伯爵。その聡明なる出で立ちに劣らず、頭脳明晰であり、評価は非常に高い。相手に対する敬意を常に忘れず、それ故、王子を始めとした王家の人間からも信頼の厚い、将来有望な貴族である。
「あなた様がここにいらっしゃったと言うことは……なるほど、この前の婚約破棄についてご不満がおありのようですね。あなた様が関わった不正について、私が何も隠さずに第一王子アレックス様に上奏したことが原因……だから、私のことを恨んでおられると、まあ、こういった具合でしょうか???」
「あら、流石は頭脳明晰なグラント伯爵。私が説明するまでもなかったようね」
すると、グラント伯爵は、身を乗り出してマリアの元に近づいた。
「ココだけの話……あなたは本当にアレックス様のことを愛していらっしゃるのですか???」
グラント伯爵はマリアに質問した。マリアは不意を突かれて、質問の意図が分からなかった。
「なるほど……恐らく、私に劣らないくらい成績優秀なあなた様が困惑していらっしゃるということは……私の説明がまずかったようですね……」
そう言って、マリアに色々と耳打ちを始めたのだ。
「実を言いますと、私はあなたのことを愛しているんですよ……」
グラント伯爵の思いもよらない告白に、マリアは一層困惑することになった。
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