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覚悟と葛藤
01_思いの丈
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以前のように地下室まで、教会の床にある階段をゆっくりと下りていった。幾度とここに足を運んでいるとはいえ、相変わらず異様で独特な雰囲気に、緊張感が高まる。
舞台の上には、半獣たちが、集まり、何か会話する訳でもなく、黙って立っていた。僕が、来たのを見て、静まりかえった空間の中に、突如、狼男アウルフの声が轟いた。
「何のようだ!これで三回目だぞ!しつこいんだよ!前にも言ったが、ここはお前の遊び場じゃねーんだよ」
狼男アウルフは、相変わらず威圧的な口調で叫ぶと、ライオン男ライアンが、制止するように言った。
「まあ、アウルフ、このぼうやの話を聞いてやれ。なにやら、以前とは違って、だいぶ半獣化が進んでいるようだ。それに、悲しい顔をしている」
ライオン男ライアンは、僕の獣の毛が生えた顔を見て、なぜここに僕が来たのか、察したようだった。
「このガキに、何があったとしても、俺には全く関係のないことだ。知ったことではないぜ。まあ、話を聞くだけなら、聞いてやってもいいけどよ」
蛇女ムグリが、アウルフの様子を見て言った。
「アウルフは、素直じゃないわね」
「どういう意味だ!本当に、このガキのことなど、どうでもいいんだからな」
「まあ、茶番はここまでにしておくとして。ぼうやは、言うことがあってきたんだろ」
ライオン男ライアンが話し始めると、蛇女ムグリは狼男アウルフは何か言い出そうとしたところを口を塞いで止めた。
居場所がほしい。温もりがほしい。
幼い子供のように、待っていても、それらは、与えられることはない。自ら掴みとらなければならない。居場所や温もりは、無償ではない。どんなことにも、対価が必要だ。
この人たちに、自分の思いの丈を伝えよう。こんな僕を受け入れてくれるだろうか。拒絶するんじゃないだろうか。正直、色々な不安がつきまとうけれど、僕は覚悟を決めて彼らに言った。
「僕は、行く場所がありません。自分のわがままということは分かっていますが、どうか、僕をあなたたちの仲間に入れてもらえないでしょうか」
僕は、半獣たちに深々と頭を下げ、誠心誠意お願いした。同じような境遇を持った人たちとなら、半獣になった僕でも、新しい人生を歩み、分かり合えるのではないと思った。
半獣になったから、仲間にしてほしいというのは、都合のいい話だとは、重々承知している。彼らにとって、僕を仲間として迎える道理はない。
おそらく、僕は、仲間に加わったとして、お荷物にはなっても何の得にもならないだろう。だけど、もう僕には、こうする他、生きていく術が残されはいなかった。
少しの間、沈黙が続く。
(やはり、彼らの仲間に加えてもらえないのか......)
そんな考えが頭に過ったが、僕は頭を下げ続けた。すると、蛇女ムグリは、優しい口調で、話した。
「頭をあげて。あなたの気持ちは十分に分かったわ。あなたが、悲しい表情を浮かべて、ここに来た時、そう言い出すんじゃないかと、予感していたの。きっと、多くのものを一度に失ったんじゃないかしら」
彼女は、僕のおかれている苦しみを理解してくれているように感じた。
「友達も家族も失ってしまいました。僕は、これから、どう生きていけばいいのか正直、分かりません。今のこの状況に、頭の理解が未だについていけてない状態です」
「だと思うわ。半獣になった人たちは、皆、あなたのように頭を下げに来るの。かつての私もそうだった」
自分だけが、人外の存在になって自分だけが一人取り残され苦しんでいるのではないかと孤独感を募らせていた。
同じように、底知れない孤独感を背負って生きた人たちが目の前にいる。
半獣に苦しんでいるのは、自分一人だけではなかった。少しだけ心が軽くなった気がした。
舞台の上には、半獣たちが、集まり、何か会話する訳でもなく、黙って立っていた。僕が、来たのを見て、静まりかえった空間の中に、突如、狼男アウルフの声が轟いた。
「何のようだ!これで三回目だぞ!しつこいんだよ!前にも言ったが、ここはお前の遊び場じゃねーんだよ」
狼男アウルフは、相変わらず威圧的な口調で叫ぶと、ライオン男ライアンが、制止するように言った。
「まあ、アウルフ、このぼうやの話を聞いてやれ。なにやら、以前とは違って、だいぶ半獣化が進んでいるようだ。それに、悲しい顔をしている」
ライオン男ライアンは、僕の獣の毛が生えた顔を見て、なぜここに僕が来たのか、察したようだった。
「このガキに、何があったとしても、俺には全く関係のないことだ。知ったことではないぜ。まあ、話を聞くだけなら、聞いてやってもいいけどよ」
蛇女ムグリが、アウルフの様子を見て言った。
「アウルフは、素直じゃないわね」
「どういう意味だ!本当に、このガキのことなど、どうでもいいんだからな」
「まあ、茶番はここまでにしておくとして。ぼうやは、言うことがあってきたんだろ」
ライオン男ライアンが話し始めると、蛇女ムグリは狼男アウルフは何か言い出そうとしたところを口を塞いで止めた。
居場所がほしい。温もりがほしい。
幼い子供のように、待っていても、それらは、与えられることはない。自ら掴みとらなければならない。居場所や温もりは、無償ではない。どんなことにも、対価が必要だ。
この人たちに、自分の思いの丈を伝えよう。こんな僕を受け入れてくれるだろうか。拒絶するんじゃないだろうか。正直、色々な不安がつきまとうけれど、僕は覚悟を決めて彼らに言った。
「僕は、行く場所がありません。自分のわがままということは分かっていますが、どうか、僕をあなたたちの仲間に入れてもらえないでしょうか」
僕は、半獣たちに深々と頭を下げ、誠心誠意お願いした。同じような境遇を持った人たちとなら、半獣になった僕でも、新しい人生を歩み、分かり合えるのではないと思った。
半獣になったから、仲間にしてほしいというのは、都合のいい話だとは、重々承知している。彼らにとって、僕を仲間として迎える道理はない。
おそらく、僕は、仲間に加わったとして、お荷物にはなっても何の得にもならないだろう。だけど、もう僕には、こうする他、生きていく術が残されはいなかった。
少しの間、沈黙が続く。
(やはり、彼らの仲間に加えてもらえないのか......)
そんな考えが頭に過ったが、僕は頭を下げ続けた。すると、蛇女ムグリは、優しい口調で、話した。
「頭をあげて。あなたの気持ちは十分に分かったわ。あなたが、悲しい表情を浮かべて、ここに来た時、そう言い出すんじゃないかと、予感していたの。きっと、多くのものを一度に失ったんじゃないかしら」
彼女は、僕のおかれている苦しみを理解してくれているように感じた。
「友達も家族も失ってしまいました。僕は、これから、どう生きていけばいいのか正直、分かりません。今のこの状況に、頭の理解が未だについていけてない状態です」
「だと思うわ。半獣になった人たちは、皆、あなたのように頭を下げに来るの。かつての私もそうだった」
自分だけが、人外の存在になって自分だけが一人取り残され苦しんでいるのではないかと孤独感を募らせていた。
同じように、底知れない孤独感を背負って生きた人たちが目の前にいる。
半獣に苦しんでいるのは、自分一人だけではなかった。少しだけ心が軽くなった気がした。
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