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第二章
提案
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「はい、サティナ様。もちろんでございます。発言の許可をいただいても?」
「もう発言しているじゃないの。好きになさいよ」
「ありがとうございます、サティナ様。このケイトは矮小なる人間の一貴族令嬢。それも魔力も大した地位も持ち合わせていない単なる女です。ただ、そこにいるアイリスとは長い付き合いですから、あれの痛みもわからないことはありません」
「あれって……あなた、主人でしょ? アイリスは……」
「主人なら、部下の家族を危うくも死に至らしめるなど、言語道断。恥の極みと言うべきかもしれません」
毅然とした態度で、毒舌を交えてさも丁寧な言葉に丸め込み、相手に一矢報いる。
忘れていたわ。ケイトってこんな性格だった。
アイリスはそう思い出していた。
罪悪感で胸がいっぱいになる。許してちょうだい、なんて叫んで涙してもこの親友は許さないだろう。
その代わりに要求するのだ。
自分が関わったことで危険にさらした存在――家族たちへの、女神からの謝罪と社会的な保護を。
ケイトは、親友はそういう性格の持ち主だった。
「アイリスのそばにいるから、ついついあの子の影にかくれてかすみがちだけど。類は友を呼ぶというかなんというか。あなた、ここでわたしが許さなければ、彼らの刃に倒れることくらい理解できないの?」
「女神様らしからぬ脅しですね、サティナ様?」
「脅していないわよ、聞いているの」
「別に構いません」
「へえ……そう。面白い返事ね、ケイト」
「おほめいただき光栄ですわ、サティナ様。その際は、我が家の係累、親戚及び、帝国にいまいる婚約者の家族に親戚筋から友人に至るまで。ああ、そうですわ、忘れていました。我が、怒りに任せて暴れまわった愛しの主人、アイリス様もこれから一族枯れ果てるまで、女神様とそれに連なる存在にあだ成すと思われますが? その数、どれくらいかしら? 千人とはならなくとも、数百には至るかと?」
王太子の愚か者。
サティナはそう毒づいていた。
アイリスではなく、このケイトを妻に選んでおけば。
あんな遊び人のような真似事も、神殿関係の問題も、うまく立ち回るように仕向けただろうに。
どうして、運命というのはこうもいたずらを起こすのか……そして、被害をくらうのはいつも自分だ。
「あーあ、もういいわ。分かったから。あなたには何を差し上げればいいのかしら、子爵令嬢様?」
「いえ、特に望むものはございませんが。それでも、特にとおっしゃるならば……」
「何? 不老不死とか、神格とかは上と相談がいるからすぐには無理よ?」
「そのようなものは望みません。ただ、上位の存在である我が子爵家が仕える侯爵家の安泰が、我が一族の安寧につながるかと思われます、サティナ様」
「つまり?」
そこで、アイリスとサティナ、そして――聖騎士であるシュネイル卿にケイトは順繰りに視線を移していく。
やっぱり、ここかな、落としどころは。
そう判じると、ケイトは口を開いた。
「サティナ様、シュネイル卿を。アルフォンス様を、我が主、アイリスの新たな婚約者としていただきたいと。そう存じます」
「はあ?」
この提案には、サティナも舌を巻いた。
「もう発言しているじゃないの。好きになさいよ」
「ありがとうございます、サティナ様。このケイトは矮小なる人間の一貴族令嬢。それも魔力も大した地位も持ち合わせていない単なる女です。ただ、そこにいるアイリスとは長い付き合いですから、あれの痛みもわからないことはありません」
「あれって……あなた、主人でしょ? アイリスは……」
「主人なら、部下の家族を危うくも死に至らしめるなど、言語道断。恥の極みと言うべきかもしれません」
毅然とした態度で、毒舌を交えてさも丁寧な言葉に丸め込み、相手に一矢報いる。
忘れていたわ。ケイトってこんな性格だった。
アイリスはそう思い出していた。
罪悪感で胸がいっぱいになる。許してちょうだい、なんて叫んで涙してもこの親友は許さないだろう。
その代わりに要求するのだ。
自分が関わったことで危険にさらした存在――家族たちへの、女神からの謝罪と社会的な保護を。
ケイトは、親友はそういう性格の持ち主だった。
「アイリスのそばにいるから、ついついあの子の影にかくれてかすみがちだけど。類は友を呼ぶというかなんというか。あなた、ここでわたしが許さなければ、彼らの刃に倒れることくらい理解できないの?」
「女神様らしからぬ脅しですね、サティナ様?」
「脅していないわよ、聞いているの」
「別に構いません」
「へえ……そう。面白い返事ね、ケイト」
「おほめいただき光栄ですわ、サティナ様。その際は、我が家の係累、親戚及び、帝国にいまいる婚約者の家族に親戚筋から友人に至るまで。ああ、そうですわ、忘れていました。我が、怒りに任せて暴れまわった愛しの主人、アイリス様もこれから一族枯れ果てるまで、女神様とそれに連なる存在にあだ成すと思われますが? その数、どれくらいかしら? 千人とはならなくとも、数百には至るかと?」
王太子の愚か者。
サティナはそう毒づいていた。
アイリスではなく、このケイトを妻に選んでおけば。
あんな遊び人のような真似事も、神殿関係の問題も、うまく立ち回るように仕向けただろうに。
どうして、運命というのはこうもいたずらを起こすのか……そして、被害をくらうのはいつも自分だ。
「あーあ、もういいわ。分かったから。あなたには何を差し上げればいいのかしら、子爵令嬢様?」
「いえ、特に望むものはございませんが。それでも、特にとおっしゃるならば……」
「何? 不老不死とか、神格とかは上と相談がいるからすぐには無理よ?」
「そのようなものは望みません。ただ、上位の存在である我が子爵家が仕える侯爵家の安泰が、我が一族の安寧につながるかと思われます、サティナ様」
「つまり?」
そこで、アイリスとサティナ、そして――聖騎士であるシュネイル卿にケイトは順繰りに視線を移していく。
やっぱり、ここかな、落としどころは。
そう判じると、ケイトは口を開いた。
「サティナ様、シュネイル卿を。アルフォンス様を、我が主、アイリスの新たな婚約者としていただきたいと。そう存じます」
「はあ?」
この提案には、サティナも舌を巻いた。
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