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第三章

エクスロー

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「ケイトには多分だけど、お兄様の思惑が絡んでいると思うの」
「お兄様? あの空の神ヌアザ神ですか? じゃあ、それを外して下さい。もう知り合いや身内を巻き込むのは嫌ですから」
「アイリス、それは――無理よ。各信者の扱いについては他所の神が口出しできないもの。まだ私の信者ならどうにでもできたけど……縄張りが合って――」
「関係ありません」
「関係ありませんってね……関係あるのよー!!」
「じゃあ、話してくださいよ。何がどう、関係しているのかを」
「……」
「今回の降臨も、関係しているんでしょ? 駄女神様?」

 はあ……、とサティナはおよそ神らしからぬため息を漏らしてしまう。
 二千年前の国民たちはあんなに神に対して敬虔な信徒たちだったのに、と。
 時間の経過は、人類に精神的な自由をもたらし、それは神への信仰心すらも薄れさせたらしい。
 言わなくてもただ、はい。とこたえるのは、この世代ではもう美徳ではなく愚かになったのだと、サティナは悟っていた。

「私はそうね……二千年前にもうこの地上を去ったの。その後に数代の神が生まれていまは四百年くらいかな? 人で言うところの甥や姪が管理しているわ」
「甥や姪? サティナ様の子供ではなくてですか?」
「……うるさいわね、まだ未婚だから。ほっといてよ……」
「話の続きを」
「アイリス、この西の大陸の北部はなんて呼ばれている?」
「は? 地名で言えばエクスローですけど……」
「そうね、じゃあそれはどこを中心にしていると思う?」
「どこ? うーん……」

 アイリスの脳裏に地図が浮かぶ。
 東西の大陸は実は極北でつながっている。その合間をシェス大河と呼ばれる一本の大運河が分断しているだけで、北上すれば歩いて移動ができるのだ。ただし、そこは魔族の土地だが……。
 そこより少しだけ南下すれば複合民族国家の枢軸連邦、その下にエクスロー地方がある。
 中央をティトの大森林と呼ばれる巨大な森林があり、それを時計回りに二重の円で回ることができる。
 外周を魔王フェイブスタークの国、魔都グレイスケーフから始まり、自分たちが住むトランダム王国、その下に分家筋で空の神ヌアザを祀るルベトナ帝国、炎の女神アミュエラが守るタレス王国、森の妖精王が守るナーブリー王国、水の精霊王が守護するレブナス王国、エクスローでは最大国家であり魔王と熾烈な争いを繰り広げてきた大地母神を奉じるラスディア帝国。
 これが外周、内周は地方の中心でありその名前の元になったエクスロー神を信じるイリヤーブリット王国、そして、双子の男女の神を信仰するアーゲイン王国。その他小国が諸々となっている。
 つまり、中心となると……
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