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エピローグ
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その朝。
ようやく大好きな男性を手に入れたと喜び、二人だけの時間を満喫していたサリーナは急な来客の訪問に驚いていた。
「え? どちら様……」
「あ、え?! 母上……っ!!?」
「は? え、そんな。お母様!?」
ベッドに入っていたクレイがふと玄関を見ると、そこには見覚えのある疫病神が一人。
まぎれもない、実の母親。
ヴィクトリアがそこに立っていた。
命よりも大事にしている楽器と下男、下女をそれぞれ一人ずつ。
そして、私物だと思われる大量の荷物と共に。
「クレイ。結婚したらしいですね?」
「あ、いえ。まだです。その予定ですが、フィルナンドからしばらくは戻らないようにと、爵位継承者が変わったと聞きまして、はい……」
「そなたの弟はまさしく悪魔の申し子じゃ!」
「はあ……その荷物といい、使用人といい。何がありました??」
「追い出されたの」
「は?」
悔しそうにワナワナと震えながら、ヴィクトリアは怒りに拳を固めていた。
あんなに見事に追い出されるなんて……思ってもいなかったと悔しそうにつぶやきながら。
「これまでしてきた贅沢のせいで、兄上が結婚できなかった。それはこの母のせいだと。だから、出ていけと。あとはお前に任せるそうですよ!!」
「嘘だろ、フィルナンド……」
「それもこれも、お前がきちんと弟の教育をしなかったせいです! これから厄介になりますからね!!!」
そう言うとヴィクトリアはサリーナのアパートの客間に居座ってしまった。
最悪な相手を夫にしちゃった。
サリーナは大きなため息をつくと、それでも家族がいない自分に親ができたと喜んでそっと扉をしめたのだった。
ようやく大好きな男性を手に入れたと喜び、二人だけの時間を満喫していたサリーナは急な来客の訪問に驚いていた。
「え? どちら様……」
「あ、え?! 母上……っ!!?」
「は? え、そんな。お母様!?」
ベッドに入っていたクレイがふと玄関を見ると、そこには見覚えのある疫病神が一人。
まぎれもない、実の母親。
ヴィクトリアがそこに立っていた。
命よりも大事にしている楽器と下男、下女をそれぞれ一人ずつ。
そして、私物だと思われる大量の荷物と共に。
「クレイ。結婚したらしいですね?」
「あ、いえ。まだです。その予定ですが、フィルナンドからしばらくは戻らないようにと、爵位継承者が変わったと聞きまして、はい……」
「そなたの弟はまさしく悪魔の申し子じゃ!」
「はあ……その荷物といい、使用人といい。何がありました??」
「追い出されたの」
「は?」
悔しそうにワナワナと震えながら、ヴィクトリアは怒りに拳を固めていた。
あんなに見事に追い出されるなんて……思ってもいなかったと悔しそうにつぶやきながら。
「これまでしてきた贅沢のせいで、兄上が結婚できなかった。それはこの母のせいだと。だから、出ていけと。あとはお前に任せるそうですよ!!」
「嘘だろ、フィルナンド……」
「それもこれも、お前がきちんと弟の教育をしなかったせいです! これから厄介になりますからね!!!」
そう言うとヴィクトリアはサリーナのアパートの客間に居座ってしまった。
最悪な相手を夫にしちゃった。
サリーナは大きなため息をつくと、それでも家族がいない自分に親ができたと喜んでそっと扉をしめたのだった。
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