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第一部 プロローグ
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しおりを挟む高校二年の一学期が始まって二日目の朝。
始まってそうそうに彼、風見抱介は、一時限目の授業を抜け出していた。
とはいってもサボリではない。
合法的な‥‥‥ちょっと教室で授業を受けづらいときに、学校側が用意してくれている、別の教室で自主勉強をしに来たのだ。
担任の教師に申請して、申請用紙に印鑑を捺してもらったら、自主勉強開始。
それは図書室か、保健室かの二択を選ぶことができる。
抱介は昨年からの習慣で、ついつい図書室を希望した。
「あー……誰もいない」
さすが、一学期。
さすが、第一週の二日目だ。
公的にさぼれるとはいえ、ここにくる生徒はほとんどいない。
本当につらい奴らは、保健室にいく。
いや、ここにきても偽物とはいえないのだけど。
中には、抱介のような自主的に教室から非難する生徒もいてもいいではないか。
そんなことを思いながら、抱介は持ってきたバッグを六人掛けのテーブルと椅子の側において、東側の窓から外を見た。
一年生だろうか?
今年は入ったばかりのなにやら眩しさを放つ彼らは、まるで子供みたいにはしゃいでいる。
多分、新しい環境が楽しくて仕方ないんだろう。
抱介はそう思うことにした。
「……俺も、あの時‥‥‥」
一年の初頭、同じクラスだった槍塚季美に誘われて、この自主勉強システムに手をだしたのも、そういえばこんな季節だった。
当たり前か。
ほとんど、昨年の今頃。
抱介と季美はちょうどいま、抱介が腰かけた椅子の前に座って笑顔を見せていたのだから。
「戻れねーな。救いようがない」
自分でそう言い、なんだか呆れてしまって自虐的にへへっと苦笑いする。
そのままバッグから教科書とノートと、支給されているタブレットと筆記用具を取り出して、それらをテーブルの上に広げた。
白い木目が春の陽光を反射して、なんだか目が痛い。
自分の良心をチクチクと刺激されるようで、抱介は思わず片目を閉じた。
そうしたら‥‥‥左前の席が引かれた。
そのまま椅子にストンっと腰を落として、テーブルにつく誰かがいた。
「は?」
思わず目を開けてそちらを振り向く。
そこには身長百五十あるかないか。
背の低い女子が座っていた。
制服のリボンの色は黒。
‥‥‥新入生か。
抱介は自分の青色のネクタイを見てそう理解する。
一年は黒、二年は青、三年はグリーン。
ここ歴史と伝統のある私立八津ヶ原高校は、各学年をそう色分けしていた。
一年生でもここに来るんだ。
つい、彼女の方に視線が向く。
なんとなく、目のやり場に困る、顔だった。
これまでテレビや雑誌やネットニュースでしか拝んだことのない、そんな顔立ちをしていた。
つまり、美少女がそこにいた。
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