10 / 66
第一章 出会い
6
しおりを挟む
「槍塚には彼氏がいるだろ。バスケ部の飯島キャプテン」」
「槍塚、じゃないよ。季美、そう呼んで?」
「はあ? それめちゃくちゃでしょ」
「呼んでくれないの、残念だなあ」
心底、悲しそうなため息を彼女がついていた。
恋人がいるかいないかなんて話は、彼女にかかればあっという間にうやむやにされてしまう。
「あのなあ、意味わかんねーよ。勝手にキスしてきておいて……下の名前を呼べとか。どう理解したらいいんだ?」
「あー……そう言われたらちょっと罪悪感が湧くかもしれない」
「盛大に最高に。最上級の罪悪感を沸かせてくださいその心いっぱいに!」
「ごめんなさい」
そこまで言ってようやく彼女は謝罪を口にしてくれた。
恋人がいるかどうか、その質問に関してはまだ答えてもらっていない。
抱介はなんとなく納得がいかなくて、
「恋人いるよね? バスケ部の飯島キャプテンは中学の先輩で、俺も中学ときはバスケ部でさー……。その憧れの人の恋人が好きだって告白してくるなんて、冗談がすぎてるよ」
抱介はそう言うと、季美に向かってはい、と教室の出口の片方を指さしてやる。
季美はそれをちらりと横目で見て、抱介の顔を見て、自分の唇を人差し指の先で拭ってから、いきなりそれを口に含んだ。
「変態か?」
「そうかもしれない。そういうものになったのかも。ああ、違う」
「はあ?」
そこまで会話をしているうちに、季美は距離を近づけてきて。
不覚にも二度目のキスを奪われてしまった。
接触するくらいなら良かったのに。
彼女の舌先が自分のそれよりも長くて、向こうの口の中に吸い寄せられて、いきなり力いっぱい噛まれたら悲鳴しか出ない。
「何するんだよ!」
「あら、気持ちよかった? 私は好きなんだけどなこんなディープキス」
「ディープキスって。噛むことはないだろ!」
「血の味が好きなの」
めちゃくちゃだ。
抱介の心がそう叫んでいた。
最初、キスされた時は嬉しさと、いきなりやってきたその衝撃の大きさに、恥ずかしながら、抱介は目の端を潤ませてしまった。
と、同時に彼女もまた……同じように目に焼きつくような情動をにじませていた。
だけどいまは喜んでいいはずのものなのに、喜べない。
なぜなら彼女は先ほど抱介が言った通り、飯島先輩の恋人だと誰もが知っているからだ。
つまり公然と浮気がしたい。抱介はそう誘われていた。
「槍塚、じゃないよ。季美、そう呼んで?」
「はあ? それめちゃくちゃでしょ」
「呼んでくれないの、残念だなあ」
心底、悲しそうなため息を彼女がついていた。
恋人がいるかいないかなんて話は、彼女にかかればあっという間にうやむやにされてしまう。
「あのなあ、意味わかんねーよ。勝手にキスしてきておいて……下の名前を呼べとか。どう理解したらいいんだ?」
「あー……そう言われたらちょっと罪悪感が湧くかもしれない」
「盛大に最高に。最上級の罪悪感を沸かせてくださいその心いっぱいに!」
「ごめんなさい」
そこまで言ってようやく彼女は謝罪を口にしてくれた。
恋人がいるかどうか、その質問に関してはまだ答えてもらっていない。
抱介はなんとなく納得がいかなくて、
「恋人いるよね? バスケ部の飯島キャプテンは中学の先輩で、俺も中学ときはバスケ部でさー……。その憧れの人の恋人が好きだって告白してくるなんて、冗談がすぎてるよ」
抱介はそう言うと、季美に向かってはい、と教室の出口の片方を指さしてやる。
季美はそれをちらりと横目で見て、抱介の顔を見て、自分の唇を人差し指の先で拭ってから、いきなりそれを口に含んだ。
「変態か?」
「そうかもしれない。そういうものになったのかも。ああ、違う」
「はあ?」
そこまで会話をしているうちに、季美は距離を近づけてきて。
不覚にも二度目のキスを奪われてしまった。
接触するくらいなら良かったのに。
彼女の舌先が自分のそれよりも長くて、向こうの口の中に吸い寄せられて、いきなり力いっぱい噛まれたら悲鳴しか出ない。
「何するんだよ!」
「あら、気持ちよかった? 私は好きなんだけどなこんなディープキス」
「ディープキスって。噛むことはないだろ!」
「血の味が好きなの」
めちゃくちゃだ。
抱介の心がそう叫んでいた。
最初、キスされた時は嬉しさと、いきなりやってきたその衝撃の大きさに、恥ずかしながら、抱介は目の端を潤ませてしまった。
と、同時に彼女もまた……同じように目に焼きつくような情動をにじませていた。
だけどいまは喜んでいいはずのものなのに、喜べない。
なぜなら彼女は先ほど抱介が言った通り、飯島先輩の恋人だと誰もが知っているからだ。
つまり公然と浮気がしたい。抱介はそう誘われていた。
0
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる