NTRするなら、お姉ちゃんより私の方がいいですよ、先輩?

和泉鷹央

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第一章 出会い

6

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「槍塚には彼氏がいるだろ。バスケ部の飯島キャプテン」」
「槍塚、じゃないよ。季美、そう呼んで?」
「はあ? それめちゃくちゃでしょ」
「呼んでくれないの、残念だなあ」

 心底、悲しそうなため息を彼女がついていた。
 恋人がいるかいないかなんて話は、彼女にかかればあっという間にうやむやにされてしまう。

「あのなあ、意味わかんねーよ。勝手にキスしてきておいて……下の名前を呼べとか。どう理解したらいいんだ?」
「あー……そう言われたらちょっと罪悪感が湧くかもしれない」
「盛大に最高に。最上級の罪悪感を沸かせてくださいその心いっぱいに!」
「ごめんなさい」

 そこまで言ってようやく彼女は謝罪を口にしてくれた。
 恋人がいるかどうか、その質問に関してはまだ答えてもらっていない。
 抱介はなんとなく納得がいかなくて、

「恋人いるよね? バスケ部の飯島キャプテンは中学の先輩で、俺も中学ときはバスケ部でさー……。その憧れの人の恋人が好きだって告白してくるなんて、冗談がすぎてるよ」

 抱介はそう言うと、季美に向かってはい、と教室の出口の片方を指さしてやる。
 季美はそれをちらりと横目で見て、抱介の顔を見て、自分の唇を人差し指の先で拭ってから、いきなりそれを口に含んだ。

「変態か?」
「そうかもしれない。そういうものになったのかも。ああ、違う」 
「はあ?」

 そこまで会話をしているうちに、季美は距離を近づけてきて。
 不覚にも二度目のキスを奪われてしまった。

 接触するくらいなら良かったのに。
 彼女の舌先が自分のそれよりも長くて、向こうの口の中に吸い寄せられて、いきなり力いっぱい噛まれたら悲鳴しか出ない。

「何するんだよ!」
「あら、気持ちよかった? 私は好きなんだけどなこんなディープキス」
「ディープキスって。噛むことはないだろ!」
「血の味が好きなの」

 めちゃくちゃだ。
 抱介の心がそう叫んでいた。
 最初、キスされた時は嬉しさと、いきなりやってきたその衝撃の大きさに、恥ずかしながら、抱介は目の端を潤ませてしまった。

 と、同時に彼女もまた……同じように目に焼きつくような情動をにじませていた。
 だけどいまは喜んでいいはずのものなのに、喜べない。
 なぜなら彼女は先ほど抱介が言った通り、飯島先輩の恋人だと誰もが知っているからだ。
 つまり公然と浮気がしたい。抱介はそう誘われていた。

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