彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。

和泉鷹央

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第一話 浮気男は川面に舞う

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 寝室の入り口近く。
 ベッドの足元と脇に置いてあるテーブルには、それぞれに仕掛けが施してある。
 どちらかでもいいからわたしがある行動を取れば、この家から望まない来客を排除することができる。

 そんな魔術は魔導師であれば当たり前に常備している防犯対策のようなものだ。
 まさか婚約者の浮気現場に使われてその相手ともども転送することになるなんて、これを施術したときは思ってもみなかったけど。

「……物も一緒に移動できるようにしとけば良かったわ……」

 いまから夜は始まるというのに、お気に入りだったベッドは裏切りの証拠として汚されてしまっているのだ。こんなもの、もう見たくもないと思ったって仕方ないじゃない……と、改めてベッドの脇を見直す。
 すると、ラルクが普段腰に装備している魔法剣がそこにかけられていた。
 持ち主は今頃、数キロ先の街の外壁の向こうに流れる大河の支流、それも流れもまばらな浅い河川敷か川面に落ち込んでいることだろう。

「無事に戻ってくればいいけどね」

 この魔法剣は明日、騎士団の宿舎へ、家人に言いつけて届けさせることにしよう。
 そう決めると家の周囲を囲む塀に仕込んだ防御結界を作動させた。
 これであいつは戻ってこようとしても戻れないだろうから。
 最も、何か理由をつけて騎士団から仲間を連れてきたら、結界を解除するしかないのだけれど。

 今はもう、何もかもがどうでもいいような気がしてしまい、わたしは気だるさとやるせなさを背負いこむと、いきなり襲ってきた疲労感に負けないように足を客室のベッドへと向けさせた。

「氷の魔女なのだから、氷塊に閉じ込めたらぜんぶ終わったのに……。馬鹿ね、わたしって……」

 自分の二つ名を恨みながらつぶやく。
 そうしなかった理性が残っていたことを誉めるべきなのか叱りつけるべきなのか、後悔するべきなのか。
 十八年の人生のうちで初めて出会った、浮気とその狂気。
 そんなものにあてられて心が苛立つのを止められない。
 気づいたときには何もかも記憶の彼方に消し飛んでいて、来客用のベッドに突っ伏したまま朝を迎えたわたしがいたのだった。
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