彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。

和泉鷹央

文字の大きさ
21 / 62
第四話 魔法剣と騎士の称号

しおりを挟む
 騎士団の紋章入りの黒く塗られたその箱馬車にはラルクと、彼にそそのかされた仲間たちが乗っているものだとばかり思っていたからだ。
 もしそうなら、レイの安否だって危ういのかもしれない。
 どうしようとぼやいたその時、馬車の扉を御者が開くと降りて来たのは我が家の侍女だった。

「国王陛下から頂いた魔法剣をこの身から手放すことなどあり得ない。絶対にそれは間違いの品だ、自分のものではない、と頑なに拒絶されまして」
「ラルクに会ったの!?」

 レイは屋敷に戻ると疲れたと言い、勝手に紅茶なんかを入れて座り込む始末。
 こちらの心配なんて無駄だったようで、しかし、その返事には呆れが混じっていた。

「会っていませんよ。あちらの上官様とお話をしていたら、ラルク様の部下という方がそう伝言を持って来られたの、アルフリーダ。彼はシェスの支流で夜釣りに興じていた、と話したみたいよ」
「夜釣り? 裸で……?」
「そこまでは知らないけれど、まあ、上官様はどこか薄っすらと笑われていらっしゃったわね」

 浮気男には相応しい罰が当たったのか。
 それとも恥をかいたままで黙る気は無いのか。
 どちらにしても、それなら魔法剣を出してみろと言われたら彼は出せずにどうにか似た物でその場を凌ぐだろう。
 例えば、魔法剣の柄にはめられた魔道具の調整などで一時的にでも手元から離れるときのために、似たような剣を二振りほどは作って常備しておくのが常なのだとか。
 ラルクが付き合い始めた頃に、そんなことを言っていたことを思い出し、わたしは忍び笑いを隠せなくなった。

「くっくく、おかしい。あの馬鹿、そんなことを言ってまで体面を取り繕ったのね」
「まあ、ですから。そのうちに取り戻しに来るのではないかなと、私は思うけれど。貴方はどう思いますか、アルフリーダ」
「……確かに、その可能性は高いわね。でもそれなら――彼からは魔法剣に似た品物を婚約の結納代わりに頂きました、とかって世間には言いたいくらいね。これがあると、地下水道に入った時に便利だもの」
「ああ、なるほど。それなら、貰っておけば?」
「いいのかしら」
「良いんじゃない? 貴方がこれを扱えるというなら、問題はないと思うわよ。でも、騎士の剣だから重いし――女性にはまだまだ扱いやすい物ではないと思うけど」

 出来るの?
 そう問われ、わたしはどうにかしてみると答えた。
 魔法学院では武技や乗馬なども必須科目として教えられたからだ。
 こんな田舎の小さな王国。
 近隣の大国からにらまれて起こる小さな紛争は、日常茶飯事だったからだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...