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第五章 騎士の誇りと折れた魔法剣
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ありがたい。
この優しさに救われる。
幼いこの身体よりも大人のそれが、わたしを優しく癒してくれる。
「本当にいいの? みんな、困らない?」
「良いのですよ。この地方の古い慣習で、新しい貴族や有力者が引っ越して来たら、地元の名士や貴族がまずやって来て。それから、後に続々と地元の方々が挨拶に来られる――なんて。そんなものがあるから、平日はアルフリーダ。貴方、仕事どころじゃないでしょ?」
「そう、ね……。週末、彼が来ないときはずっと地下に潜っていたから……休みなんて無かった」
「なら、休むべきだわ。アルフリーダ、貴方は働きすぎたの。たまには、心を休めて欲しいわ」
「うん……」
半年前。
この地に来たわたしが彼との婚約を決めた時。
地場の名士たちはこぞって会見を求めて来た。おかげで平日に迎えるべき本来の仕事の顧客はほとんど会うことができない始末。
夜や早朝、休日を使ってその両方をこなしつつ、無口だけど甘えたがりの彼の相手をするのはいろいろと大変だった。
まあ、因習にはいい面もあって。
婚約どころか結婚前の女性は、その身を慎まなければならない。
そんな考えがこの地方にはあったから、ラルクに身体を求められたことはない。
それがある意味、わたしを救ってくれていた。
「ところで、あの魔法剣。どうするの?」
「ああ、あれ? 地下に棲みついた野生動物もそうだし、スライムとか魔獣もどこかにはいるだろうし……焼き尽くせないかなって」
「……」
わたしの顔を解放したレイはその問いに対する答えを聞くと、微妙な笑顔を浮かべた。
まるでその炎は、嫉妬の炎のようで怖い。
そんな感じにも見えなくはない。
「ダメ?」
「私なら、炎を越える氷の魔導で凍らして、やってきたラルクの目の前で叩き折ってやります」
どうやら、わたしより苛烈なのはやはり、我が家の侍女のようだった。
さすがにそれをやったら、国王陛下に対する侮辱にもなりかねない。
「それは厳しくないかなー。陛下から拝領したものだし……」
「ラルク様が、ね? 自分の剣じゃないと否定したのですから、持ち帰らされた時点で既に我が家の拾得物。好きにしろと言われましたし」
「騎士団長とそんな話までしたのね?」
「まあ――後から理不尽な怒りを落とされて責任を追及されても面倒ですから。あちらも話の裏側をほぼほぼ把握されたようですから、これも意図的な許可だと思いますよ」
「だけど、叩き折るなんてやり過ぎじゃないかしら」
レイはうーん、とわたしの意気地がない返事をどうやる気に差せようかと悩んでいた。
侍女としてはそれくらいするのは当然の権利だと考えているようだ。
彼女の過去に付き合った男性たちはさぞや、大変だったろうと思わせる一面だった。
「なら、その魔法剣にかかっている魔術が果て尽きるまで使いこなしてはどうですか?」
「……は? そりゃ、そうなると魔道具は砕けるし剣も折れるけど」
「では、そうしましょう。地下に棲みついた魔物とやらを退治してらっしゃい。息抜きに――ウサ晴らしに」
こうして、否応なしにわたしは足元に広がる地下に旅する、小さな冒険を始めることになったのだった。
この優しさに救われる。
幼いこの身体よりも大人のそれが、わたしを優しく癒してくれる。
「本当にいいの? みんな、困らない?」
「良いのですよ。この地方の古い慣習で、新しい貴族や有力者が引っ越して来たら、地元の名士や貴族がまずやって来て。それから、後に続々と地元の方々が挨拶に来られる――なんて。そんなものがあるから、平日はアルフリーダ。貴方、仕事どころじゃないでしょ?」
「そう、ね……。週末、彼が来ないときはずっと地下に潜っていたから……休みなんて無かった」
「なら、休むべきだわ。アルフリーダ、貴方は働きすぎたの。たまには、心を休めて欲しいわ」
「うん……」
半年前。
この地に来たわたしが彼との婚約を決めた時。
地場の名士たちはこぞって会見を求めて来た。おかげで平日に迎えるべき本来の仕事の顧客はほとんど会うことができない始末。
夜や早朝、休日を使ってその両方をこなしつつ、無口だけど甘えたがりの彼の相手をするのはいろいろと大変だった。
まあ、因習にはいい面もあって。
婚約どころか結婚前の女性は、その身を慎まなければならない。
そんな考えがこの地方にはあったから、ラルクに身体を求められたことはない。
それがある意味、わたしを救ってくれていた。
「ところで、あの魔法剣。どうするの?」
「ああ、あれ? 地下に棲みついた野生動物もそうだし、スライムとか魔獣もどこかにはいるだろうし……焼き尽くせないかなって」
「……」
わたしの顔を解放したレイはその問いに対する答えを聞くと、微妙な笑顔を浮かべた。
まるでその炎は、嫉妬の炎のようで怖い。
そんな感じにも見えなくはない。
「ダメ?」
「私なら、炎を越える氷の魔導で凍らして、やってきたラルクの目の前で叩き折ってやります」
どうやら、わたしより苛烈なのはやはり、我が家の侍女のようだった。
さすがにそれをやったら、国王陛下に対する侮辱にもなりかねない。
「それは厳しくないかなー。陛下から拝領したものだし……」
「ラルク様が、ね? 自分の剣じゃないと否定したのですから、持ち帰らされた時点で既に我が家の拾得物。好きにしろと言われましたし」
「騎士団長とそんな話までしたのね?」
「まあ――後から理不尽な怒りを落とされて責任を追及されても面倒ですから。あちらも話の裏側をほぼほぼ把握されたようですから、これも意図的な許可だと思いますよ」
「だけど、叩き折るなんてやり過ぎじゃないかしら」
レイはうーん、とわたしの意気地がない返事をどうやる気に差せようかと悩んでいた。
侍女としてはそれくらいするのは当然の権利だと考えているようだ。
彼女の過去に付き合った男性たちはさぞや、大変だったろうと思わせる一面だった。
「なら、その魔法剣にかかっている魔術が果て尽きるまで使いこなしてはどうですか?」
「……は? そりゃ、そうなると魔道具は砕けるし剣も折れるけど」
「では、そうしましょう。地下に棲みついた魔物とやらを退治してらっしゃい。息抜きに――ウサ晴らしに」
こうして、否応なしにわたしは足元に広がる地下に旅する、小さな冒険を始めることになったのだった。
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