上 下
53 / 149
番外編、圭吾と零

零の得意なこと

しおりを挟む
※ 番外編のような何かです。
_____________

「お、零がんばってるね」
息子二人を寝かしつけた後、圭吾はリビングに戻ると裁縫に勤しむ零に紅茶を入れた。
「ありがとうございます、寝かしつけもお疲れ様です」
零が作っているのは、ゆいが幼稚園のお遊戯で使う衣装だ。
と言ってもそこまで難しいものではなく、既に出来上がっている衣装にアレンジを加えるというものだ。
ゆいはねずみさんの役で、衣装は灰色の上下に分かれたものだ。
無地のそれに、好きなアレンジを加えて提出するらしい。
ゆいの通う幼稚園はお母さんが専業主婦の方が多く、そのためこういうお願いをされることも多い。
もちろん、時間がなかったり、どうしても苦手だという場合にはシールのワッペンを貼るだけでも良い。
零は比較的裁縫は得意なので、ゆいのために色んなアレンジを加えている。
「すごいな、これ襟か」
首元にはゆいの好きな黄色の襟を付け、それと同じ生地で袖口にもフリルを付けた。
「なんか王子様みたいだな、かわいい」
零の描いたイメージ図を眺めながら、圭吾が笑う。
「ほんと、よくこういうの作れるよな~」
尊敬する。と珍しくはないけど圭吾に褒められたので、零は少し恥ずかしそうに頬を染めた。
いつまで経っても、初恋の人から褒められるのには慣れない。
零は幼稚園のバザーでも、こうやって裁縫でポケットティッシュケースやかわいい髪飾りなどを作って売っていた。
丁寧に作られた零の商品は、あっという間に完売する。
特に女の子のママたちには人気が高く、圭吾は少し嫉妬してしまう。
「よし、できた!」
子供用の小さなハンガーに完成した衣装をかけ、写真を撮る。
「すっご…え、これしっぽも作ったの?」
最初はなかったはずのしっぽを見て、圭吾は驚いた。
「あ、それは意外と簡単なんですよ。
ただ生地を縫って裏返して、そこに綿を詰めてるだけなんで」
と、零は簡単に言うが、実際やってみると難しいのである。
「はは、しっぽの先にリボンか。随分とメルヘンなねずみさんだな。かわいらしい」
圭吾は衣装をまじまじと眺めながら、一つ一つに感想を言っていく。
「なんか、作ってたら楽しくなっちゃって…あとでゆいに嫌がられないといいですけど」
だいすきなままが作ってくれたものなら、なんだってゆいは喜ぶ。
「って、まだなんか作るの?」
圭吾が感心して衣装を眺めている間に、零はまた生地を裁断し始めている。
「はい、生地が余ったので、今度はりおの着替えを入れる手提げを作ります」
ほんと、なんでも器用にやるな。
深夜なのに楽しいからと言って続ける零に、圭吾は半ば呆れながら、零が裁縫に満足するまでそれを眺めた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,345pt お気に入り:618

とくいてん(特殊性癖系短編集)

BL / 連載中 24h.ポイント:418pt お気に入り:13

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:15,612pt お気に入り:7,991

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,835pt お気に入り:4,127

【R18】君に触れる、全てのものから

BL / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:93

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:710pt お気に入り:2,922

処理中です...