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悶々

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朝帰りした俺を母親は笑って迎えてくれた。
「久しぶりね、あんたがこんなに飲むの」
二日酔いに効くから、と朝ごはんの味噌汁だけ飲んで、すぐに二階の自室へ倒れ込んだ。
「う~…あたまいた…」
色々考えないといけないことはあるのに、頭が痛くて仕方がない。
結局この日は午後に目が覚め、腰を労りながらお店の手伝いを頑張った。

その数日後、
「すみません、ゆきくんいますか?」
と店の方から声がする。
はーい、と出ていくと、そこには颯太がいた。
「あ…」
なんとなく気まずくて、下を向いてしまう。
あの日、本当に俺たちは一線を超えてしまったのだろうか。
高校の頃からの親友で、そんな関係になるとは1mmも思っていなかった。
ただあの朝感じた痛みは、間違いなく事後のものであった。
「ゆき、ごめん。今日この後時間ある?」
今の時刻は午後5時半。
あと30分で店を閉める。
「あー…えーっと…」
颯太は覚えているのだろうか。
真実を知るには、この友情を捨てる覚悟でいないといけない。
最愛の夫と別れて、更には親友も失うなんて。
今の俺にはダメージがでかすぎる。
「あら、また飲んでくるの?
それならもう上がっていいわよ、どうせ今日はやることも少ないし」
お母さん、今はそんな優しさいらないよ…!
と心の中で叫びながらも、エプロンを脱いで退勤した。
「ごめん、遅くなって」
なんとなくそのままで出るのは嫌で、少しだけ髪にワックスを付けてオシャレをした。
もはや、自分が何を考えているのかわからない。
俺は颯太と、どうなりたいのだろう。
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