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第二章

冒険者としてのリスク

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第二章 後編

 ワンニャン爆弾は檻から出たあと、「ニャンニャン、ワンワン」とフゥの声で鳴り始める。

「なんです?あれ?フゥ‥あなたそんな趣味が?」といってフゥを見ると顔が真っ赤になり、涙目になっている。

「ちが!違う!!そうたまたま!」

といって速攻でバレる嘘をつく。どう聞いたって可愛いと思っていれたでしょあれ?じゃないとあんなに意味の分からない動物の声真似なんて入れないでしょ‥と呆れていると。

「にいちゃん!!目と耳ふさげ!!」とフゥが叫ぶと物凄い光と爆音が鳴り響くと同時に簡素な檻が宙を舞う。それを確認したフゥが私の手を掴み「にいちゃん!!走るぞ!」と言って走り出す。牢屋から出たすぐ近くの扉をあけるとそこには、爆発音のした牢屋を見に来ようとしたのだろう、沢山のゴブリン達が集まっていた。それを見たフゥは

「こいやぁぁ!素材ども!狩り尽くしてやるぜぇぇ!!」

と言って私の手を振り払い両手にナイフを持つと同時に、本当に猿ではないかと疑うような身軽さで壁を走り回り次々とゴブリン達の"皮"を剥ぎ取っていく。皮を剥がされた、ゴブリンは青い血を全身から吹き出し絶命する。そんなゴブリンがまた一人、また一人と増えていく、最終的には5分ほどで25体のゴブリンの生皮を持ってニンマリしている、フゥがいた。

「やったぜ!!これで3週間はうまいもん食べれるし、風呂にも入れる!!」と言って大喜びするフゥしかし

「ここら出られないとと叶いませんよ?それ?」と私が聞くとフゥは頬を膨らませて。「出られない、じゃなくて出るんだぞ!!」といって訂正を求めてくる。私が訂正しようとした時「誰か助けぇぇぇしにたくないぃぃぃ」と声が聞こえ二人で顔を合わせて走り出す。そこには

部屋の隅にまで追い込まれた二人が巨大なゴブリンに入口を塞がれているようだ。ふと視界がベットに吸い寄せられる、近くにある槍には白を剥き涙で歪んだ顔のカウテラの頭が飾ってあった。

「くるな!来ないでぇ!!」と言ってアディがコーリーを守るように立ちメイスを振り回している。流石は【転生者】と感じているが状況は最悪だ。

「フゥ、あのでかいの売ったらきっと一か月は安泰です。剥製にすれば高く売れると思うので背中を切って臓器をとりのぞいてみては?」

それを聞いたやいなやフゥは「安泰ぃぃ!」と言って二つのナイフで巨大なゴブリンの背中をこじ開けて、中から青い血液を全身に浴びならがらゴブリンの"中"にあったであろうものを引きづり出す。
その光景を見ていたアディはあまりの残酷すぎる光景に失神していた。

           

        ※※※※※※※※※※※※※

         











          
      ※※※※※※※※※※※※※※※※※


 
 「おーい起きてるかぁ?おーい」とアディの顔をペチペチと叩くフゥ。叩かれるたびに「私は‥目立ちたい訳じゃ‥」といって寝言を繰り返すアディ。あの日、【管理者達】に気づかれないようにするため、自分の権能を全て封印した、現在そこに伸びている転生者の過去は知りません。知ろうとも思いません。まあ、そのせいで大幅に弱体化してるんですけどね私。まあ、切り替えていきましょう。


するとフゥがいきなり自分の手を開けたり閉じたし始めるので、私は気になり問いかける「何してるんですか?」と問いかけるとフゥは

「レベルが上がった!!やった~!これでまた魔物どもから剥ぎ取れる!!」と嬉しそうに一人でバンザイをしている。確かに今回は彼女がいなければ勝つことが出来なかった、レベルが上がるのは当然だろう。‥私も指示とか出していたのでレベルあがってないかなぁと思いを確認してみる。すると


〔レベル3〕

ステータスに変化なし、覚えたスキルなし、覚えた魔法なし、覚えた特技なし、【新たな固有スキル】を習得しました。

と表示される‥『新たな固有スキル?もう結構あれでお腹いっぱいなんですが?』そんな風に思ったが気になって確認する【影の尻尾】とゆう固有スキルが確認出来た。この固有スキルを確認した瞬間、私は気づく‥『あれ?私の唯一持ってきた黒猫の時にのみ使える触手、影の中で増えている‥?』そう思い足元の影に精神を集中する、すると封印していた私の【尻尾】達が元に戻っているではないかぁ!
ステータスの管理も奴らがしてるはずなのに、何故?わざわざ『侵略者』に力を与えようとするのかが分からない。「うーん‥」と唸っていると。フゥが私に思い切り叫んだ、

「にいちゃん!!後ろ!!」


と私は後ろを確認すると顔面に大きな【穴の空いた先程までは生きていたであろうゴブリン】の死体の穴を覗き込む形になる。私フゥの方に向き直り、ニコリと笑う。どうやら【尻尾が自己防衛機能】で勝手に動いたらしい。‥口の中が血生臭くなる。と共に筋っぽい肉に酸味のきいた味、ゼラチンのようにぐにゃりとした生臭い脂肪のした【ナニカ】食べていると認識する。‥ゴブリンてこんなゲテモノよりの味なのか

「にいちゃん━━━━━」とフゥ絶句している。それもそうだろう、その手に持った棍棒で殴りかかろうとした所を【尻尾】に喰われたのだ。

「か、、、、カッケェ!!なんか【ダークヒーロー】みてぇだな!」

やっぱりこの娘、理解出来ない。確実に【精神が狂っている】今の今まで【何の力もなかった私が】急にこんな力を持ち出したら、『お前戦えるじゃないか!なら何故さっきは?!』と普通なら怒りが湧いてくる筈だ、‥だって【今、魔物を殺したから】

「すげ~!まじですげ~どうやって出したの?!したからビッュ!てなんか出たよな?なにアレ!もっかいみして!!」

倒れているアディを放置してこちらに駆け寄ってくる。ナイフで私の影を突っついたり、後ろに周りコートを捲ったりして【尻尾】を探す。鬱陶しいのでやめて欲しいのだが‥

「あ、あんた達!やっぱり戦えたんじゃない!!」

いつの間にか正気を取り戻した、コーリーが私達二人に怒声を浴びせる。それは至極真っ当?な意見だった。私はこう言った人間の怒りで出た【感情まかせの理論】とゆう物を理解出来ない。

「何で、カウテラが死ななきゃいけないの?」

そう泣きながらこちらに聞いてきた。一番聞いたいことが"それ"なのだろうが、そんなものは決まっている

「そ、「そんなの当たり前だろ?」

私が話そうとした時、間に割って入りフゥが答える。

「戦ってるんだぜ?命【たま】取られる覚悟してねぇのか、だったら冒険者名乗ってんじゃねぇよ」

12歳の少女からは到底考えられない、発言だ。その歳でいくつの修羅場をくぐり抜けてきたのだろう?興味が出てきた私だったが、目の前の少女には酷だったようで

「うぅぅ‥そんなのぉ‥わかってるわよぉぉ‥」

そう言って彼女が泣いている側に彼女の泣き声で目を覚ましたアディが駆け寄り抱きしめる。そんな二人を置いていくかのように

「にいちゃん、救助用の発煙弾打ち上げに行くから一緒にくるか?」

とフゥが訪ねてくる。ここにいてもやることがないので「ええ、よろしければ」と言って私はフゥの後ろについていく。コツコツと音を立てながら洞窟の出口を目指す。殆どのゴブリンは巨大な親玉が死んだからか、全て慌てて逃げっていった。スコルパイオンは、まだ沢山いるが近寄っては来ない、どうやらかなりの間ゴブリンどもに遊ばれていたのだろう疲弊しきっているようだ。洞窟の先から光が見えるどうやら出口の近くにきたらしい

「なぁ、にいちゃん」とフゥが沈黙を嫌うように

「"俺とチーム!組まねぇか!"」

と振り返り満面な笑顔をこちらに向けながら話をする。洞窟の出口から見える朝日がフゥを照らす。

「俺となら!ぜっっったいさいきょーうのチームになれる、なあ頼むよ"俺に力を貸してくれよ"」

「‥最強になれる根拠は?」

私がそうフゥに聞くと「うーーーん‥」と考え始めた。やれやれ

「うーーん?うん!勘!!」

「勘ですか?」

『本当にこの娘は何かを考えて生きているのかと疑いたくなるレベルですが、そうですか‥勘ですか、なるほど‥なるほど』

「頼む!!なってくれたら俺お手製の道具色々やるからさ!」と言って私に頼み込んでくる。別にお手製の道具には全く興味ないのですが、彼女のもつ"狂気"に私は興味がある。なぜあそこまで、【素材】に命をかけるのかそれを知りたい私は

「えぇ良いですよ」

そう返事を返した。フゥの笑顔は先程よりも、キラキラと輝く。まるで、一番欲しかった物を貰った年頃の少女のように

「じゃあさ!にいちゃんの名前教えてくれ!!チームになるんだから教えてくれよ、な?」


そう聞いてくる。確かにこれからはチームになる、些細な事で仲間割れをしたくはない、私は少女に自分の名を告げる。


「‥アンドルフ、アンドルフ=ロバート」

その名前はかつてたった一人で私に【狂信した者の名前】私がこの異世界に来た理由の人物だ
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