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サイキック・ケースワーカーズ【結成譚】
序章「終わりの季節」
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中学卒業を間近に控えた放課後。清司の頬に当たる空気は、まだ冬の気配を残している。
昼まで降っていた雨で濡れたアスファルトは、午後の日差しを受けても冷たいままだ。
彼ら四人は駅前通りを歩いていた。
帰宅するにはまだ時間が早いため、ゲームセンターにでも行こうという話になり、目的地を目指している。
清司が友人二人の後ろを歩きつつ、くだらない話で盛り上がっているのを見ていると、ふいに何かが彼の視界の端を縦に切り、雑踏の向こうから、どさっという音が耳に届く。
思わず足を止め、音がした方に視線を向けたが、通りを歩いている人は、誰も立ち止まらないでいた。
清司がそこで見たのは、道路を挟んだ反対側にある、高いビルの玄関前で横たわる人だった。
ここからでは断定できないが、髪の長さから女性だろう。
手足があらぬ方向に曲がっているのが見えた。
彼女はその曲がった手足のまま、ほんの数秒で立ち上がると、ビルの横に付いている外階段に向かい、上り始める。
まるでコマ送りでもしているかのような速さで、彼女の姿はビルの屋上へ到着していた。
歩道に面したビルの端に立ち、そのままふらりと落下する彼女の姿。
再び衝突する音と共に、彼女は地面に叩きつけられた。
そしてまた階段を上り始める。
(……繰り返してるのか)
そう清司は胸中で独りごちる。
普段から、人には見えないものを見続けている彼でも、このパターンは初めての経験だった。
ある種の不快感と、人の死の瞬間を見てしまったという嫌な恐怖が、清司の中でこみ上げる。
これがもし、誰もいない夜、一人きりなら逃げ出していたかもしれない。
そんな思考が頭をよぎり、眉間にしわを寄せたところで、ぽんと肩を叩く者がいた。
「清司」
はっと我に返りそちらを見ると、幼馴染の少年が少し困った笑顔でこちらを見ていた。
ビルの前を、何事もなかったかのように人々が通り過ぎていく。
「……お前、あれ初めて?」
「……ああ、この辺じゃ珍しいだろ。太壱は?」
「おれは昨日も落ちてんの見た」
そう言って、太壱もビルの方に顔を向ける。
清司と同じものを見ているのだろう。
彼の眉間にもしわが刻まれている。
「そっか……見たくなかったな」
清司は言いながら、苦虫を噛み潰したような顔になった。
「ほんと。マジ勘弁」
太壱はそう、ため息まじりに言う。
そう言っている間に、また女性が屋上から空中に身を躍らせ、地面と衝突した。
それによって、何かが飛び散るなどということもなく、彼女は変わらないテンポで曲がった手足を動かし、起き上がる。
「あれ、ずっとやってるのか?」
そんな彼女を見ながら言うと、太壱は肩をすくめた。
「昨日もやってたからそうなんじゃねえの?」
その言葉に、今度は清司がため息をつく。
「……気分のいいもんじゃねぇな」
「まったくだぜ。あんなもん見たくないし、関わらないに越したことねえよ」
「それな」
そう言って清司は、また階段を上り、屋上に到着した彼女から視線を外した。
そんな彼を見て、
「清司、さすがにビビったろ」
太壱はにやりと笑みを浮かべて言う。
清司はそんな彼の言葉に呆れ、腕組みをして言い返した。
「あんなもんビビらねぇほうがおかしいって。お前こそ、ホントは昨日見たときチビったんじゃねぇのか?」
「残念。そこのコンビニでションベンした直後でしたー」
そんなやり取りをしている間にも、しつこく聞こえる衝突音。
すると、先に進んでいた友人二人が、立ち止まった彼らに気づいた。
「なんかあったかー?」
「もしかして清司、またなんか見た?」
駆け足で、そう言いながら戻ってくる二人に、清司は小さく舌打ちをした。
太壱も少し困ったような、微妙な表情を浮かべ、二人を見ている。
「え、マジで?オレも見たい!」
「僕も見てみたいね」
そう言うと友人二人は、清司が見ていた方へと視線を向けた。
しかし、もとよりそういったものが見えない体質である二人に、あの女性の姿が見えるはずもなく、二人はどこだどこだとキョロキョロしている。
清司は再びため息をつくと、幼馴染の太壱と、友人二人の首根っこをそれぞれ掴み、
「くだらねぇ。行くぞ」
「さあ、おとなしくゲーセン行こうなー」
と、歩き始めた。
関わらずに済むなら、それが最善に決まっている。
彼女は誰にも気づかれることなく、永遠に繰り返し続けるのだろう。
衝突音は、いつしか雑踏と街頭スピーカーに紛れて聞こえなくなる。
しかしあの生々しい音は、しばらく彼の耳から離れることはなかった。
昼まで降っていた雨で濡れたアスファルトは、午後の日差しを受けても冷たいままだ。
彼ら四人は駅前通りを歩いていた。
帰宅するにはまだ時間が早いため、ゲームセンターにでも行こうという話になり、目的地を目指している。
清司が友人二人の後ろを歩きつつ、くだらない話で盛り上がっているのを見ていると、ふいに何かが彼の視界の端を縦に切り、雑踏の向こうから、どさっという音が耳に届く。
思わず足を止め、音がした方に視線を向けたが、通りを歩いている人は、誰も立ち止まらないでいた。
清司がそこで見たのは、道路を挟んだ反対側にある、高いビルの玄関前で横たわる人だった。
ここからでは断定できないが、髪の長さから女性だろう。
手足があらぬ方向に曲がっているのが見えた。
彼女はその曲がった手足のまま、ほんの数秒で立ち上がると、ビルの横に付いている外階段に向かい、上り始める。
まるでコマ送りでもしているかのような速さで、彼女の姿はビルの屋上へ到着していた。
歩道に面したビルの端に立ち、そのままふらりと落下する彼女の姿。
再び衝突する音と共に、彼女は地面に叩きつけられた。
そしてまた階段を上り始める。
(……繰り返してるのか)
そう清司は胸中で独りごちる。
普段から、人には見えないものを見続けている彼でも、このパターンは初めての経験だった。
ある種の不快感と、人の死の瞬間を見てしまったという嫌な恐怖が、清司の中でこみ上げる。
これがもし、誰もいない夜、一人きりなら逃げ出していたかもしれない。
そんな思考が頭をよぎり、眉間にしわを寄せたところで、ぽんと肩を叩く者がいた。
「清司」
はっと我に返りそちらを見ると、幼馴染の少年が少し困った笑顔でこちらを見ていた。
ビルの前を、何事もなかったかのように人々が通り過ぎていく。
「……お前、あれ初めて?」
「……ああ、この辺じゃ珍しいだろ。太壱は?」
「おれは昨日も落ちてんの見た」
そう言って、太壱もビルの方に顔を向ける。
清司と同じものを見ているのだろう。
彼の眉間にもしわが刻まれている。
「そっか……見たくなかったな」
清司は言いながら、苦虫を噛み潰したような顔になった。
「ほんと。マジ勘弁」
太壱はそう、ため息まじりに言う。
そう言っている間に、また女性が屋上から空中に身を躍らせ、地面と衝突した。
それによって、何かが飛び散るなどということもなく、彼女は変わらないテンポで曲がった手足を動かし、起き上がる。
「あれ、ずっとやってるのか?」
そんな彼女を見ながら言うと、太壱は肩をすくめた。
「昨日もやってたからそうなんじゃねえの?」
その言葉に、今度は清司がため息をつく。
「……気分のいいもんじゃねぇな」
「まったくだぜ。あんなもん見たくないし、関わらないに越したことねえよ」
「それな」
そう言って清司は、また階段を上り、屋上に到着した彼女から視線を外した。
そんな彼を見て、
「清司、さすがにビビったろ」
太壱はにやりと笑みを浮かべて言う。
清司はそんな彼の言葉に呆れ、腕組みをして言い返した。
「あんなもんビビらねぇほうがおかしいって。お前こそ、ホントは昨日見たときチビったんじゃねぇのか?」
「残念。そこのコンビニでションベンした直後でしたー」
そんなやり取りをしている間にも、しつこく聞こえる衝突音。
すると、先に進んでいた友人二人が、立ち止まった彼らに気づいた。
「なんかあったかー?」
「もしかして清司、またなんか見た?」
駆け足で、そう言いながら戻ってくる二人に、清司は小さく舌打ちをした。
太壱も少し困ったような、微妙な表情を浮かべ、二人を見ている。
「え、マジで?オレも見たい!」
「僕も見てみたいね」
そう言うと友人二人は、清司が見ていた方へと視線を向けた。
しかし、もとよりそういったものが見えない体質である二人に、あの女性の姿が見えるはずもなく、二人はどこだどこだとキョロキョロしている。
清司は再びため息をつくと、幼馴染の太壱と、友人二人の首根っこをそれぞれ掴み、
「くだらねぇ。行くぞ」
「さあ、おとなしくゲーセン行こうなー」
と、歩き始めた。
関わらずに済むなら、それが最善に決まっている。
彼女は誰にも気づかれることなく、永遠に繰り返し続けるのだろう。
衝突音は、いつしか雑踏と街頭スピーカーに紛れて聞こえなくなる。
しかしあの生々しい音は、しばらく彼の耳から離れることはなかった。
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