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魔術師達との戦い(下)

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 ジャスターとハーヴィンは、双子達を無視して俺の方へ向かって来る。

 2人の目的は俺を殺すことなので、双子達は眼中に無いらしい。

 双子達も俺の元へ辿り着くと、2人で俺を囲むようにして戦闘態勢に入った。

 俺はジャスターとハーヴィンの動向に注意しながら、双子達に視線を向ける。

 双子達は俺を取り囲むように位置取りをしており、俺は前後左右からの攻撃を警戒をしていた。


「覚悟しろ……」

「あんた達なんかに負けないわ……」

「ふん、お前達など相手にしている暇はないんだよ……」


 ハーヴィンは双子達に対して余裕のある態度を見せる。


「何ですって?」

「お前等よりも、その男を先に殺さなければ……」


 ハーヴィンがそう言うと、俺に向かって短剣を投げつけてきた。

 俺は飛んできた短剣を剣で弾く。

 短剣は弾かれても、俺に向かって突き立てようと襲い掛かってくる。

 俺はそれを冷静に対処していた。

 その内、ジャスターが召喚した骸骨達が俺達に向かって各々の武器で攻撃してきたのである。


「付与魔術師と短剣は私達が対処するから、ラドリックは骸骨と死霊魔術師を相手して!」


 ミラが俺に指示を出すとニアと一緒に、ハーヴィンに向かって行く。


「分かった……」


 俺はそう返事をして、ジャスターと対峙した。


「お前は俺が殺す……。よくもユーザックを殺してくれたな!」

「俺だって簡単に殺されてたまるかよ!」


 ジャスターと4体の骸骨達との戦闘が始まった。

 俺はジャスターの出方を伺うために様子を見ていると、突然、骸骨が俺に斬りかかってくる。

 その攻撃を避けると、今度はジャスターが小剣で攻撃を仕掛けてきて、俺の腹部目掛けて突きを繰り出した。

 その攻撃を剣で防ぐと、そのまま剣を押し返すが2体の骸骨達の剣での攻撃が俺を襲う。

 俺はその攻撃を何とか回避し、反撃の隙を探る。

 しかし、骸骨達は攻撃の手を緩めることなく、次々と攻撃を繰り返してくる。

 俺は何とかその攻撃を避けながら、反撃の機会を伺っていた。


「どうした? 逃げてばかりじゃ、俺は倒せないぞ?」


 ジャスターは俺を挑発してくる。


「うるさい!」


 俺はそう言いながら、骸骨の1体に斬撃を喰らわせる。骸骨はバラバラになったかと思うと直ぐに再生してしまう。


「俺の作った骸骨達は壊しても直ぐに元に戻るぞ……」

「くそっ!」


 俺は悪態をつくと、他の3体も俺に向かって剣で切り付けてきた。

 俺は剣で攻撃を受け流しながら、ジャスターの剣撃も避け続ける。

 5対1の状況では、分が悪いと判断した俺は一度距離を取ることにした。


「どうやら逃げるつもりみたいだな……」


 ジャスターはそう呟きながら、俺を追いかけてくる。

 俺はジャスターから骸骨達を離れさせ1対1で勝負をつけようと考えていた。

 俺はジャスターを誘って廃墟の裏へ誘導することにした。


「ここなら誰にも邪魔されないな……」


 俺はそう言って剣を構える。


「しまった……。骸骨共が、まだ追いついていないぞ……」


 ジャスターは俺の言葉を聞いて焦っている様子だった。


「俺の勝ちだな……」


 俺はそう言うと、ジャスターに剣で連撃を加える。

 ジャスターは俺の連撃を必死で防いでいるが、次第に俺の速さについていけなくなり、俺の剣がジャスターの身体を捉えた。

 渾身の一撃を振り下ろし、ジャスターの身体を切り裂いた。


「ぐはぁ!!」


 ジャスターは口から血を吐いて倒れ込むと、そのまま動かなくなった。

 追いついてきた骸骨達が塵となり瓦解して消えていく。

 俺はその様子を見てジャスターの死を確認すると、双子達の確認をしに行った。


 そこには血塗れで倒れ込んでいるミラとニアの姿があった。

 ミラとニアはハーヴィンの操る短剣に体を切り刻まれていた。

 ミラは致命傷ではないものの、かなりの深手を負っており、ニアも全身血だらけの状態である。

 ハーヴィンは双子達の姿を見て嘲笑いながら、俺に話しかけてきた。


「これで終わりだ。まあ、楽しかったよ」

「ふざけんな!!」

「よく見ると、こいつ等は綺麗で可愛いな……。後でたっぷり可愛がってやるよ……」


 ハーヴィンは、にやにやしながらそう言うと倒れた双子達を両脇に抱えた。


「下衆野郎め!!」

「お前には僕を殺せないよ……。何故ならお前はここで死ぬんだから……。そして、後から彼女達にあんな事やこんな事をしてやるよ……」


 ハーヴィンがそう言うと同時に双子達が目を大きく開いてハーヴィンの首筋を噛みちぎった。


「ぎゃあああっ!!!」


 ハーヴィンは首から大量の血潮を吹き出しながら絶叫し傷口を押さえて地面に倒れていく。

 空中を浮遊していた4本の短剣も力なく地面に落ちていった。


「油断するなんて馬鹿ね! あいつ……」

「そうね。私達の演技に騙されていたわ……」


 双子の姉妹はそう言うと、俺の方を見て微笑んできた。

 俺は呆然とその光景を見ていた。


「お前達! 大丈夫だったのか?」


 俺は双子達に駆け寄って安否を確認した。


「えぇ、お陰様で助かったわ……」

「私達も人間じゃないから簡単には死なないわ……」


 2人は俺に笑顔を見せながらそう答えた。


「それは良かった……」


 俺はホッとするとランシーヌの方を見た。

 ランシーヌはハーヴィンが作った手足の枷が力を失ったのを察知したようで、思いっきり鎖を引っ張ると千切れていった。

 自由になったランシーヌは俺の元まで歩いてくると、俺の手を取り、俺の頬にキスをした。


「ありがとう……。ラドリック……」

「本来の力が戻ったようだな……。その姿を見ると安心したよ……」


 俺はそう言ってランシーヌを抱きしめた。

 そして、エリノーラの方を見るとユーザックの切断された頭部を抱き抱えてブツブツと呟いていたのである。
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