不死身の魔女との妖しい契り～そして俺は魔女の剣となる～

狂気の魔女に支配された町

　カサンドラ達はサンスタの町の外までやってくると、門には誰も警備の者はいなかったのである。


「誰もいないのね……」


　彼女は懸念しながら呟くと、配下の者達と一緒に町の中に入って行ったのである。

　町の中は静寂に包まれており人の気配が全く感じられず、とても不気味さを感じさせていた。


「おかしいわね……。人っ子1人いないじゃない……」


　カサンドラはそう呟きながら町の中を見回していたのだが、やはり人の姿はなかったのだ。


「カサンドラ様、どうしますか？」


　配下のノバが話しかけてきたので、彼女は考えながら答えていた。


（何処かに魔女が居るのかもしれない……）


　そう思ったカサンドラは町の探索をすることに決めたのである。そして、配下達に指示を出したのだった。


「山賊が言うには狂った魔女に支配された街だと聞いているわ。だから、まず探索しましょう」

「分かりました……。それで、どのように？」


　彼女の指示に配下達は納得しながら答えたのだ。そんな配下の1人がカサンドラに質問してきたので彼女は口を開いたのである。


「まずは、住人の住居を調べてみましょう。もしかしたら隠れているかもしれないので……」


　そして、カサンドラ達は町の中を探索し始めたのである。それから、数軒の家を調べてみたのだが住人は1人もいなかったのだ。

　そんな状況に困惑するカサンドラ達だったのだが何かを感じたようである。


「隠れていないか見てみましょう……。皆、散開して探索するわよ！」


　そう言うと彼女は仲間を連れて町の中を探索し始めたのだった。そして、1軒の家を見つけると慎重に中に入って行ったのである。

　家の中に入ると人がいたのである。


「誰？」


　その女性と子供は、カサンドラ達の姿を見た瞬間、恐怖に怯えた表情になり聞いてきたのだ。


「私はエルミス教の修道女です。この町に魔女がいると聞いてやってきました……」


　カサンドラはそう言うと女性に近付いて行ったのだ。その女性は20代後半ぐらいで、子供は幼児の女の子だった。そんな女性が怯えた表情で話し掛けてきたのである。


「私達は無関係よ！ お願いだから入ってこないで！」

「落ち着いて下さい……。私は貴方達と敵対するつもりはありませんから……」


　彼女は、子供を庇う母親にそう話し掛けたのだが彼女は聞く耳を持たなかった。


「嫌よ！ お願いだから来ないで！」


　2人は明らかに何かに怯えているようだったのだ。その2人の様子を見てカサンドラは不思議に思った。


（何かに怯えている……。もしかして、この町の魔女を恐れているのかしら？）


　そして、カサンドラは母親に問い掛けた。


「私達は魔女を倒す為にやってきました……。この町の状況を教えてもらえませんか？ お願いします……」


　カサンドラの言葉に母親は思案していたのだ。そして、数分が経つと母親は答えを出したのだった。


「分かりました……。ですが、絶対に私が喋ったと言わないで下さい……」


　母親はそう言うとカサンドラ達に近くの椅子に座るように促してきたので彼女達は素直に応じたのである。

　そして、テーブルを挟んで向かい側に椅子を置き、母親が座ると話し始めたのだった。


「私達は家族3人で静かに暮らしていました……。しかし、1ヶ月前からこの町に魔女が現れてから、全てが狂い始めました……」


　母親は思い出すのも嫌だといった表情をしていたがカサンドラ達は黙って話を聞いていたのだ。

　そして、母親は更に話を続けた。


「魔女はこの町の領主と兵士達を全て殺し、残った者達を奴隷のように働かせ始めたのです……」

「それで、この町の人達はどうなったのですか？」


　カサンドラの質問に母親は泣きそうな顔になり答えるのだった。


「ある日突然、町から逃げ出さない様に魔女が生き残った者達に呪いを掛けたんです……」

「どんな呪いなのかしら？」


　彼女は母親に質問をしたのである。すると彼女は暗い表情で答えたのだ。


「この町から出ようとすれば首が吹っ飛ぶ呪いをかけられたのです……。だから、誰も町から出られなくなったのです……」


　彼女はそう言うと涙を流しながら俯いてしまったのだ。そんな様子にカサンドラは彼女の首に刻印があるのを目にしたのである。


（刻印が刻まれている……。ということは、本当に呪いを掛けられているのね……）

「家族3人と言ったわね……。貴女の夫はどうしてるのかしら？」

「夫は労働をさせられています……。生き残った男達は肉体労働をさせられています……」

「魔女は何処にいるのかしら？」


　カサンドラが質問すると母親は答えた。


「領主の館です……。毎日、町の人の誰かを殺しては楽しんでいるのです……。私達も、いつかその内の一人に選ばれると思うと……」


　そんな時、外で探索していたサロメと他の配下達が戻ってきたのだ。彼女達は家の中に入るとカサンドラに近付いて話しかけたのだった。


「この町の中央の広場には殺された兵士達の死骸が山のように積まれていて死骸は白骨化していました……」

「そう……、ご苦労様……」


　サロメの報告を聞いたカサンドラは険しい表情で頷いていたのだが、彼女は気になることを思いついたのだ。


「食料はどうなっているのかしら？ この町の人達を食べさせていくのなら、それなりの食料が必要だと思うんだけど……」

「食料は僅かしかなく、今では1日1回しか食べさせて貰えないです……」


　返答を聞いてカサンドラは考えていた。そんな彼女に母親は不安げに話し掛けたのだ。


「私達はどうすれば良いのでしょうか？ シスター？」

「心配しないで下さい。私達が魔女を倒して見せます」


　カサンドラはそう言うと母親に向かって微笑むのであった。そして、彼女は母親に頼みごとをしたのだ。


「私達はこれから魔女を倒しに行きますが貴女達は家の中で隠れていて下さい……。いいですね？」


　彼女の言葉に母親は不安そうに頷いたのだ。その様子を見ていた他の配下達が話しかけてきたのである。


「カサンドラ様、私達が先に行って様子を見てきます……」

「いいえ……。全員で行くわ」


　配下の提案を断ると立ち上がり母親に話しかけたのだ。


「私達は今から魔女の居る館に向かいます。そして、必ずや魔女を退治して見せます」


　彼女はそう言うと母親と娘に笑いかけたのだった。

　カサンドラ達は親子と別れて魔女が居るであろう領主の館に向かうことにしたのである。

　館に向かう途中にカサンドラ達は町の様子を見たのだが、人々は家の窓から虚ろな表情で彼女達を見ていたのだ。


（とても魔女を恐れているのね……）


　そんなことを思いながらも歩き続けた彼女達はとうとう領主の館の前に辿り着いたのだった。