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Episode.9
【一旦完結】大嫌いだったはずなのに➃
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恋人関係っていう解釈でいいんだよね? 『お前が欲しい』ってそういうこと……だよね?
「まっ、その辺はちゃんと自分で確かめなさ~い。ささ、ショッピングして美冬の所へ行こ!! 急な仕事入っちゃったから、夕方には空港行かないと」
「そっか」
「あまりゆっくりできなくてごめんね?」
「気にしないで。準備して出掛けよ?」
「好きなものたっくさん買ってあげる!!」
それから『年上彼氏ゲットしたんだから!!』ってお母さんが張り切って、服やら下着やら化粧品をたくさん買ってくれた。今までの男女交際禁止! は一体何だったんだろうか……。
── 美冬のバイト先でお母さんと別れて、美冬のバイト終わり。
「もぉ、こんなにいいって言ったのになぁ……」
「雫さん、梓と出掛けられたのが嬉しかったんじゃない? てか、あたしの分まであるし……ほんっと申し訳ないわ。相変わらずセンス良すぎな、雫さん」
「まぁ、いいでしょ。お母さん美冬のこと大好きだし。美冬の選ぶの楽しそうにしてたよ~。ていうか、むしろ迷惑かけてごめんだよ」
「別に迷惑なんてかけられた覚えないって。めちゃくちゃ良くしてもらってるわ、実の子供でもないのにさ」
「……もう、うちの子だよ」
「ははっ。なにそれ、ウケるね~」
・・・美冬は家庭環境が複雑というか色々あって、先輩ん家とかを転々とする生活を送ってる。何度か一緒に住まない? って誘ったし、お母さんもめちゃくちゃ誘ってたみたいなんだけど、『それは無理』の一点張り。美冬のことだから迷惑かけたくない、とかなんだろうけどね。全然迷惑じゃないのにな。
「で、桐生さんとはどうなったのー?」
「あー、うん……多分、付き合うことになった……と思う」
「はあ? なんで曖昧なわけ~?」
「付き合ってくれとか言われてないし……」
「梓から言えばよかったじゃん、んなもん」
ごもっとも過ぎて、ぐうの音も出ない。
「後で聞いてみる」
「そうしたら? じゃ、また明日~」
「うん、送ってくれてありがとう」
── 夕飯も食べて、お風呂にも入ったし、後は寝るだけ……いや、まだメッセージが送れていない。
スマホと睨めっこして、《私達って付き合ってるってことでいいですか?》と、何度も何度も打っては消してを繰り返している。
「はぁぁ、ほんっとどうしよう」
ベッドに寝転んで、右を向いて左を向いて、忙しなく動いている私。
《こんばんは。一つ聞いてもいいですか? 私達って付き合ってるってことでもいいんでしょうか?》
・・・いや、やっぱ無理。打ったメッセージを消そうとした時だった。
「ああっ!!」
最っっ悪、送っちゃった……。
「け、消そう! 桐生さんが読む前にメッセージの送信を取り消せばっ」
・・・ええ……? 既読になっちゃったよぉぉー。
《今夜は帰れそうにない。今、電話してもいいか》
《お仕事お疲れ様です。はい、大丈夫です》
すると、すぐ桐生さんから電話がかかってきた。深呼吸して、少し震える手で通話ボタンを押す。
【もしもし】
【俺はそう解釈してたんだが、梓は違うのか】
姿が見えなくても声で伝わってくる。桐生さんの少し焦ってる顔が目に浮かんできた。それがとても愛おしい。
【違わないです】
【そうか、ならいい】
言わなきゃ、ちゃんと──。
【あのっ、桐生さん!! 私とっ】
【俺の女になってくれ、俺だけの女に】
これは、『付き合ってくれ』ってことだよね?
【桐生さんをください】
── 私だけのものにさせて。
【ああ、なんでもくれてやる】
【桐生さん大好き】
【梓、愛してる】
『愛してる』の一言で全身がアツくなった。
耳元で囁かれているような、そんな感覚。胸の高鳴りが抑えきれない。桐生さんに会いたい、早く会いたい。明日、会えるかな。
── 翌朝
「今日も雨かぁ」
毎年、この時期は憂鬱だった。
朝も昼も夜も絶え間なく雨が降り続けて、空はどんよりした灰色に覆われて、常に薄暗い日々……だったはずなのに、桐生さんと出会ったあの日から、私の世界は明るくて、『梅雨も悪くない』そう思えるようになった。
あんなにも大嫌いだったはずの梅雨が、“桐生さんに傘を貸してあげられる”……ただそれだけの理由で、こんなにも気分が晴れやかになるなんて、本当にどうかしてる。
「桐生さん、おはようございます」
「ん」
エントランスには、雨降りなのに傘を持っていない桐生さんが立っていた。
「傘、買ったらどうですか?」
「要らねえ」
「ですよね」
この役目は私だけのもの。誰にも譲れないし、譲らない。傘だって買わせてやんないんだから。
「はい、どうぞ」
私が傘を差し出すと、その傘を受け取って頭を撫でてくる桐生さん。
「ありがとな」
「うん。いってらっしゃい」
「ん。気をつけて行ってこいよ」
私は少し背伸びをして、桐生さんは少し屈んで、優しく触れ合う唇。降りしきる雨がキラキラ輝いて見えて、こんなにも綺麗だなんて……本当に信じれない。
「じゃあね、桐生さん!」
手を振っても振り返してはくれない。でも、優しく微笑んでくれる。
そんな桐生さんが── 大好きです。
「まっ、その辺はちゃんと自分で確かめなさ~い。ささ、ショッピングして美冬の所へ行こ!! 急な仕事入っちゃったから、夕方には空港行かないと」
「そっか」
「あまりゆっくりできなくてごめんね?」
「気にしないで。準備して出掛けよ?」
「好きなものたっくさん買ってあげる!!」
それから『年上彼氏ゲットしたんだから!!』ってお母さんが張り切って、服やら下着やら化粧品をたくさん買ってくれた。今までの男女交際禁止! は一体何だったんだろうか……。
── 美冬のバイト先でお母さんと別れて、美冬のバイト終わり。
「もぉ、こんなにいいって言ったのになぁ……」
「雫さん、梓と出掛けられたのが嬉しかったんじゃない? てか、あたしの分まであるし……ほんっと申し訳ないわ。相変わらずセンス良すぎな、雫さん」
「まぁ、いいでしょ。お母さん美冬のこと大好きだし。美冬の選ぶの楽しそうにしてたよ~。ていうか、むしろ迷惑かけてごめんだよ」
「別に迷惑なんてかけられた覚えないって。めちゃくちゃ良くしてもらってるわ、実の子供でもないのにさ」
「……もう、うちの子だよ」
「ははっ。なにそれ、ウケるね~」
・・・美冬は家庭環境が複雑というか色々あって、先輩ん家とかを転々とする生活を送ってる。何度か一緒に住まない? って誘ったし、お母さんもめちゃくちゃ誘ってたみたいなんだけど、『それは無理』の一点張り。美冬のことだから迷惑かけたくない、とかなんだろうけどね。全然迷惑じゃないのにな。
「で、桐生さんとはどうなったのー?」
「あー、うん……多分、付き合うことになった……と思う」
「はあ? なんで曖昧なわけ~?」
「付き合ってくれとか言われてないし……」
「梓から言えばよかったじゃん、んなもん」
ごもっとも過ぎて、ぐうの音も出ない。
「後で聞いてみる」
「そうしたら? じゃ、また明日~」
「うん、送ってくれてありがとう」
── 夕飯も食べて、お風呂にも入ったし、後は寝るだけ……いや、まだメッセージが送れていない。
スマホと睨めっこして、《私達って付き合ってるってことでいいですか?》と、何度も何度も打っては消してを繰り返している。
「はぁぁ、ほんっとどうしよう」
ベッドに寝転んで、右を向いて左を向いて、忙しなく動いている私。
《こんばんは。一つ聞いてもいいですか? 私達って付き合ってるってことでもいいんでしょうか?》
・・・いや、やっぱ無理。打ったメッセージを消そうとした時だった。
「ああっ!!」
最っっ悪、送っちゃった……。
「け、消そう! 桐生さんが読む前にメッセージの送信を取り消せばっ」
・・・ええ……? 既読になっちゃったよぉぉー。
《今夜は帰れそうにない。今、電話してもいいか》
《お仕事お疲れ様です。はい、大丈夫です》
すると、すぐ桐生さんから電話がかかってきた。深呼吸して、少し震える手で通話ボタンを押す。
【もしもし】
【俺はそう解釈してたんだが、梓は違うのか】
姿が見えなくても声で伝わってくる。桐生さんの少し焦ってる顔が目に浮かんできた。それがとても愛おしい。
【違わないです】
【そうか、ならいい】
言わなきゃ、ちゃんと──。
【あのっ、桐生さん!! 私とっ】
【俺の女になってくれ、俺だけの女に】
これは、『付き合ってくれ』ってことだよね?
【桐生さんをください】
── 私だけのものにさせて。
【ああ、なんでもくれてやる】
【桐生さん大好き】
【梓、愛してる】
『愛してる』の一言で全身がアツくなった。
耳元で囁かれているような、そんな感覚。胸の高鳴りが抑えきれない。桐生さんに会いたい、早く会いたい。明日、会えるかな。
── 翌朝
「今日も雨かぁ」
毎年、この時期は憂鬱だった。
朝も昼も夜も絶え間なく雨が降り続けて、空はどんよりした灰色に覆われて、常に薄暗い日々……だったはずなのに、桐生さんと出会ったあの日から、私の世界は明るくて、『梅雨も悪くない』そう思えるようになった。
あんなにも大嫌いだったはずの梅雨が、“桐生さんに傘を貸してあげられる”……ただそれだけの理由で、こんなにも気分が晴れやかになるなんて、本当にどうかしてる。
「桐生さん、おはようございます」
「ん」
エントランスには、雨降りなのに傘を持っていない桐生さんが立っていた。
「傘、買ったらどうですか?」
「要らねえ」
「ですよね」
この役目は私だけのもの。誰にも譲れないし、譲らない。傘だって買わせてやんないんだから。
「はい、どうぞ」
私が傘を差し出すと、その傘を受け取って頭を撫でてくる桐生さん。
「ありがとな」
「うん。いってらっしゃい」
「ん。気をつけて行ってこいよ」
私は少し背伸びをして、桐生さんは少し屈んで、優しく触れ合う唇。降りしきる雨がキラキラ輝いて見えて、こんなにも綺麗だなんて……本当に信じれない。
「じゃあね、桐生さん!」
手を振っても振り返してはくれない。でも、優しく微笑んでくれる。
そんな桐生さんが── 大好きです。
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