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「ちゃんちゃら」37話
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「ちゃんちゃら」37話
海斗は初めて大地の部屋へ入った。バルコニーもさっき初めて見たが、ここの家はかつて自分が暮らしていたボロアパートの部屋を果たして何倍にしたものなのだろうかと驚嘆した。
大地の部屋は少なくとも海斗の部屋より断然広かった。それはきちんと整理整頓されているのも相まって広々として見えるのだろうと海斗は感じていた。海斗はすぐ使った物を仕舞わず、そのまま置く癖がある為、部屋をゴミの魔窟にしてしまう自分とは大違いだと思った。
「うーん、新品だと意味ないだろうしなぁ。」とぶつぶつ呟きながら大地は本棚や引き出しの中を漁っている。そんな彼を横目に海斗は部屋全体を見渡す。玩具や飾り物といったものは置かれていない、さっぱりした、まるでモデルハウスの一室のような部屋の中でたった一つだけ異色を放った物が置かれていることに海斗は気づいた。
「ぬいぐるみ?」とそれを海斗は何の気無しに撫でた。
テディベアにしては水色のモヘアで作られていて、この部屋で唯一明るい色を放っていた。大地はぬいぐるみ好きだったのかと思ったが、周りを見ても置かれてあるぬいぐるみはこのテディベアだけだった。
不思議に思いながらもフワフワしているが肌触りが良いテディベアを無意識にもみくちゃにしていると、後ろから大地が海斗の肩から顔を出すようにテディベアを覗き込む。
「あー、それか。懐かしいなぁ。久々にちゃんと触った気がする。」と大地もテディベアを手に取る。
「子どもの頃、母さんが誕生日プレゼントにくれたんだよ。」
海斗は懐かしみながら目を細めている大地を眺めていた。どこかアルバムのページを開いているかのような、そんな表情をしている。
「別にぬいぐるみが好きってわけじゃなかったんだけど、なんか俺が欲しそうにしてたように見えたんだってさ。」と大地ははにかんでいる。
母親から何かプレゼントを貰ったことなど人生で一度も無い海斗にとって、大地が手にしているテディベアがどこか遠い異国の土産物かのように思えた。
あまりにもテディベアを凝視していたのか、大地は海斗にテディベアを差し出す。
「じゃあ、これ持ってろよ。昔から俺の部屋に置いてたんだ。ちょうど良いだろ。」
「え」
海斗は尻込みした。
「だって、大事なお袋さんからのプレゼントだろ?俺が持ってていいのか?」
大地は少し気恥ずかしげに頷く。
「ここでただ座ってるより、海斗と一緒の方が楽しいだろ。」
海斗はテディベアを眺めた。黒いグラスアイに自分の顔が薄ら反射で見える。
この歳になってまさかぬいぐるみを貰うとは思ってもいなかったが、なぜだか海斗に恥ずかしさは無かった。
しかし、なぜかあげた側の大地の方が手を後ろに回して一人もじもじしている。海斗が不思議そうに見ていると、こちらをチラチラ見ながら大地は口を開けた。
「な、なあ。なにか、感じたりしないか?その、ぬいぐるみ持って。」
「ん?」
海斗は何か仕掛けがあるのかと思い、テディベアをぐるぐる回したり顔を覗き込んだりしたが、特に何も感じなかった。
「いや、別に?」
海斗の反応に大地は苦笑していた。
「俺たち番だから、なんか感じるかと思ったんだけどな。」と肩を落としていた。何だか、あまりにも寂しそうにしていたので、海斗も居た堪れなくなった。
「やっぱり俺たち、番として相性悪いのかな」
「そんなことはない!」と海斗が言い終わる前に大地はハッキリと言い放った。大地の大きな声に海斗は驚いてると、外のガレージから車が駐車する音が聞こえた。
その音を聞いて大地は謎の唸り声を上げているのを海斗とテディベアは小首を傾げながら見つめていた。
海斗は初めて大地の部屋へ入った。バルコニーもさっき初めて見たが、ここの家はかつて自分が暮らしていたボロアパートの部屋を果たして何倍にしたものなのだろうかと驚嘆した。
大地の部屋は少なくとも海斗の部屋より断然広かった。それはきちんと整理整頓されているのも相まって広々として見えるのだろうと海斗は感じていた。海斗はすぐ使った物を仕舞わず、そのまま置く癖がある為、部屋をゴミの魔窟にしてしまう自分とは大違いだと思った。
「うーん、新品だと意味ないだろうしなぁ。」とぶつぶつ呟きながら大地は本棚や引き出しの中を漁っている。そんな彼を横目に海斗は部屋全体を見渡す。玩具や飾り物といったものは置かれていない、さっぱりした、まるでモデルハウスの一室のような部屋の中でたった一つだけ異色を放った物が置かれていることに海斗は気づいた。
「ぬいぐるみ?」とそれを海斗は何の気無しに撫でた。
テディベアにしては水色のモヘアで作られていて、この部屋で唯一明るい色を放っていた。大地はぬいぐるみ好きだったのかと思ったが、周りを見ても置かれてあるぬいぐるみはこのテディベアだけだった。
不思議に思いながらもフワフワしているが肌触りが良いテディベアを無意識にもみくちゃにしていると、後ろから大地が海斗の肩から顔を出すようにテディベアを覗き込む。
「あー、それか。懐かしいなぁ。久々にちゃんと触った気がする。」と大地もテディベアを手に取る。
「子どもの頃、母さんが誕生日プレゼントにくれたんだよ。」
海斗は懐かしみながら目を細めている大地を眺めていた。どこかアルバムのページを開いているかのような、そんな表情をしている。
「別にぬいぐるみが好きってわけじゃなかったんだけど、なんか俺が欲しそうにしてたように見えたんだってさ。」と大地ははにかんでいる。
母親から何かプレゼントを貰ったことなど人生で一度も無い海斗にとって、大地が手にしているテディベアがどこか遠い異国の土産物かのように思えた。
あまりにもテディベアを凝視していたのか、大地は海斗にテディベアを差し出す。
「じゃあ、これ持ってろよ。昔から俺の部屋に置いてたんだ。ちょうど良いだろ。」
「え」
海斗は尻込みした。
「だって、大事なお袋さんからのプレゼントだろ?俺が持ってていいのか?」
大地は少し気恥ずかしげに頷く。
「ここでただ座ってるより、海斗と一緒の方が楽しいだろ。」
海斗はテディベアを眺めた。黒いグラスアイに自分の顔が薄ら反射で見える。
この歳になってまさかぬいぐるみを貰うとは思ってもいなかったが、なぜだか海斗に恥ずかしさは無かった。
しかし、なぜかあげた側の大地の方が手を後ろに回して一人もじもじしている。海斗が不思議そうに見ていると、こちらをチラチラ見ながら大地は口を開けた。
「な、なあ。なにか、感じたりしないか?その、ぬいぐるみ持って。」
「ん?」
海斗は何か仕掛けがあるのかと思い、テディベアをぐるぐる回したり顔を覗き込んだりしたが、特に何も感じなかった。
「いや、別に?」
海斗の反応に大地は苦笑していた。
「俺たち番だから、なんか感じるかと思ったんだけどな。」と肩を落としていた。何だか、あまりにも寂しそうにしていたので、海斗も居た堪れなくなった。
「やっぱり俺たち、番として相性悪いのかな」
「そんなことはない!」と海斗が言い終わる前に大地はハッキリと言い放った。大地の大きな声に海斗は驚いてると、外のガレージから車が駐車する音が聞こえた。
その音を聞いて大地は謎の唸り声を上げているのを海斗とテディベアは小首を傾げながら見つめていた。
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