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「ちゃんちゃら」番外編15話
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「ちゃんちゃら」番外編15話
「これぐらいの距離でどうかな。」
「いいんじゃないすか。」
空島と鳥舟は散歩コースの河川敷にやってきていた。きっかけは、空島がずっと敬遠していた野球に触れたいと言ったからだ。鳥舟も「普段、空島に柔道を教えているから、お返しに教えてもらおうかな」と案外乗り気だった。
試しに空島が優しく鳥舟に向けてボールを投げてみた。鳥舟はグローブでそれを取ろうとしたが、上手く手に力が入らなかったのか、グローブの中でボールはバウンドし、地面に落ちてしまう。
「難しいなぁ」と鳥舟はよっこらしょっと言いながら腰を落としてボールを拾う。
今度は鳥舟が空島に向けてボールを投げてみる。力が強いからか勢いはあるが、コントロールは最悪だった。
「あー、もうゴリラなんすから。」
「普段はそんなに鍛えてないんだけどねぇ」と鳥舟はへらへら笑いながらグローブで首の後ろを掻いている。恐らく彼の場合は遺伝的な筋肉質なのだろうな、というようなことを空島はボールを拾いながら考えていた。
二人は暫くキャッチボールを続けた。桜はもうとっくに散ってしまい、緑の葉を揺らしている。徐々に鳥舟のボールのコントロールも良くなっていくのを見て、空島は鳥舟の元々の運動神経能力の高さに驚いた。
「普段そんなに素早いイメージ無いから変な感じっす。」
「そんなにのんびりしてる?」
「してるっす。はやく布団片付けて欲しいのとお風呂入って欲しいのと掃除機掛ける時、すぐ退いて欲しいのと」
「それは素早さ関係無いんじゃない?」
鳥舟が苦笑いを浮かべていると、河川敷の奥の方に幼いキャップを被った子どもが見えた。空島もボールを投げてこない鳥舟を見て、後ろを振り返る。遠くてよく見えないが、子どもはキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いているようだった。
空島も同じように辺りを見渡すと、周りには自分たちの他にカップルや親子連れが何組かいた。恐らくそのうちの子どもだろう。楽しそうに子どもが駆けているのを親が微笑ましく眺めているのを見て、胸がチクッと痛んだ。鳥舟は察したのか、空島のすぐ横まで歩いてくる。
「大丈夫?」
「うーん。なんか、周りから見たら俺って子どもを放ったらかしてる親だと思われるんすかね」
鳥舟はグローブを外した。
「空島くんは子どもに会いたいの?」
「分からないっす。」
視線が泳いでいる空島の肩に鳥舟の手が置かれる。
「好きにすればいいんじゃない?子どもだって好きにするよ。」
鳥舟が困り眉で空を仰ぐ。
「えーっと、名前なんだっけ?カイくんだっけ」
「翔っすよ。」
「翔は僕です。」
突然、後ろ下から幼い声が聞こえる。二人が見下ろすように視線を移すと、そこには一人のキャップを被った子どもが空島の裾を掴んでいた。あの河川敷の奥にいた子どもだ。子どもはキャップを取って空島の顔を凝視する。二人は同じタイミングでハッとした。
「やっぱり!ソラジマって僕のパパだ!」
パパという言葉に胸がざわつく。そう、空島もこの子どもには見覚えがあった。あの時、木待先輩に見せられた写真の翔という男の子だった。
唖然としている二人を前に翔は小さなリュックから一生懸命ボールとグローブを取り出す。
「一緒にキャッチボールしよう!パパ!」
「これぐらいの距離でどうかな。」
「いいんじゃないすか。」
空島と鳥舟は散歩コースの河川敷にやってきていた。きっかけは、空島がずっと敬遠していた野球に触れたいと言ったからだ。鳥舟も「普段、空島に柔道を教えているから、お返しに教えてもらおうかな」と案外乗り気だった。
試しに空島が優しく鳥舟に向けてボールを投げてみた。鳥舟はグローブでそれを取ろうとしたが、上手く手に力が入らなかったのか、グローブの中でボールはバウンドし、地面に落ちてしまう。
「難しいなぁ」と鳥舟はよっこらしょっと言いながら腰を落としてボールを拾う。
今度は鳥舟が空島に向けてボールを投げてみる。力が強いからか勢いはあるが、コントロールは最悪だった。
「あー、もうゴリラなんすから。」
「普段はそんなに鍛えてないんだけどねぇ」と鳥舟はへらへら笑いながらグローブで首の後ろを掻いている。恐らく彼の場合は遺伝的な筋肉質なのだろうな、というようなことを空島はボールを拾いながら考えていた。
二人は暫くキャッチボールを続けた。桜はもうとっくに散ってしまい、緑の葉を揺らしている。徐々に鳥舟のボールのコントロールも良くなっていくのを見て、空島は鳥舟の元々の運動神経能力の高さに驚いた。
「普段そんなに素早いイメージ無いから変な感じっす。」
「そんなにのんびりしてる?」
「してるっす。はやく布団片付けて欲しいのとお風呂入って欲しいのと掃除機掛ける時、すぐ退いて欲しいのと」
「それは素早さ関係無いんじゃない?」
鳥舟が苦笑いを浮かべていると、河川敷の奥の方に幼いキャップを被った子どもが見えた。空島もボールを投げてこない鳥舟を見て、後ろを振り返る。遠くてよく見えないが、子どもはキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いているようだった。
空島も同じように辺りを見渡すと、周りには自分たちの他にカップルや親子連れが何組かいた。恐らくそのうちの子どもだろう。楽しそうに子どもが駆けているのを親が微笑ましく眺めているのを見て、胸がチクッと痛んだ。鳥舟は察したのか、空島のすぐ横まで歩いてくる。
「大丈夫?」
「うーん。なんか、周りから見たら俺って子どもを放ったらかしてる親だと思われるんすかね」
鳥舟はグローブを外した。
「空島くんは子どもに会いたいの?」
「分からないっす。」
視線が泳いでいる空島の肩に鳥舟の手が置かれる。
「好きにすればいいんじゃない?子どもだって好きにするよ。」
鳥舟が困り眉で空を仰ぐ。
「えーっと、名前なんだっけ?カイくんだっけ」
「翔っすよ。」
「翔は僕です。」
突然、後ろ下から幼い声が聞こえる。二人が見下ろすように視線を移すと、そこには一人のキャップを被った子どもが空島の裾を掴んでいた。あの河川敷の奥にいた子どもだ。子どもはキャップを取って空島の顔を凝視する。二人は同じタイミングでハッとした。
「やっぱり!ソラジマって僕のパパだ!」
パパという言葉に胸がざわつく。そう、空島もこの子どもには見覚えがあった。あの時、木待先輩に見せられた写真の翔という男の子だった。
唖然としている二人を前に翔は小さなリュックから一生懸命ボールとグローブを取り出す。
「一緒にキャッチボールしよう!パパ!」
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