ゼロから千まで

三旨加泉

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「ゼロから千まで」41話

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「ゼロから千まで」41話


 百合愛が帰った後、スマホを開くと大量に零一からのメッセージが入っていた。さっきの百合愛の言葉もあり、中々すぐに返信できなかった。恐る恐る百合愛が帰ったことを返信すると、パタリとメッセージや電話が止んだ。その騒がしさと静けさがどこか不気味に感じた。その不気味さが、浮ついていた千歳の心を掻き乱し始める。最近なぜか来る二葉たちのメッセージが千歳の癒しになっていた。
 しかし、それでも千歳は心のどこかで零一を求めている自分に気がついた。今日は自分の部屋のベッドで眠るが、隣に零一がいないことに寂しさを覚えていた。あの泣きそうな表情でキスをせがんできた零一の顔を思い出す。千歳にとってはそれはいつもの零一の姿のように思えた。しかし、確かに百合愛や二葉たちの言うように零一の行動には不可解な点が見られる。それが何を意味しているのか、いつも食べることか登ることしか考えていない千歳の頭では全く想像がつかなかった。

 悶々と考え込んでいる内に気がつけば外は明るくなっていた。スマホには零一や二葉たちから、おはようのメッセージが届いている。その中には百合愛のメッセージもあった。メッセージを返していると、次第に夜通し考えていたからか、すぐ千歳は眠くなり、気がつけばお昼過ぎの時間帯になっていた。
 祖母も心配したのか、千歳の部屋に来て朝ごはんを食べるよう促す。千歳は飛び起きてトーストを三枚程焼いて貪り食っていた。トーストにマーガリンを塗ると、メロンパンを思い出し、余計にお腹が空いた。祖母はそんなまるで食欲の権化にでもなったかのような千歳を微笑ましく眺めている。
 すると、家の固定電話が鳴り響く。祖母が電話に出る。何やら学校の名前を出しているので、学校関連の話などは千歳でも想像がついた。千歳はそんな祖母を見ながら口いっぱいに頬張ったトーストを牛乳で流し込む。電話が終わったのか、祖母は受話器を戻して千歳に向き直る。
「千歳、学校に提出しなくちゃいけない書類を取りに行かなきゃいけないらしいんだけど、千歳が取りに行くかい?」
 そういえば、学校から貰うプリントの類は全部零一が持って来てくれていた。
「うん!」
 千歳は大きく頷いた。それには、いつも零一にばかりやらせるわけにはいかないだろうという配慮と、久々に学校に行きたいという気持ち、両方があった。恐らく、祖母も千歳が学校に行きたがっているのを察して、態と訊いてきたのだろう。
 千歳は心を弾ませながら玄関を出た。頭の中は勉強など見えないところへ放って、二葉たちや百合愛と会うことでいっぱいだった。

ーいきなり行ったらみんな驚くかな。

 外を出た頃には夕方近い時間になっていた。今頃、きっとみんなは文化祭の準備中だし、零一も今日は水曜日だから美化委員の仕事中のはずだ。学校でみんなと会えるのは久々で懐かしかった。
 日が落ちるのがすっかり早くなってしまっている中、千歳はスキップをしながら学校へと歩みを進めて行った。


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