【完結】紅の戦女神は世界を変える

斉藤りた

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「何か少しでもヒントになれば良かったんだけど」

せっかく戦闘以外で役に立てそうだったのになぁとシュンとしてしまったツバサを見て、アキラは愛おしそうに片眉を下げ困ったような笑顔を見せる。

「人が元になった魔物だって事、アイツ自身も死を望んでるって事がわかったのは姉さんのおかげだよ。目標が魔核破壊って明確になったしね」

ニコニコとツバサに話しかけるアキラを見た八尾の、

「ツバサさんを見るときの目、ハートになってません?」

とユウトに呟いた小声は二人の耳には届かなかったようだ。

「しかし魔核持ちって事は身体を吹き飛ばす分と別で魔核を壊す分のエネルギーまで必要って事かい・・・必要なエネルギーが倍近くになるね」

「魔核って壊すのそんなに大変なの?」

そもそも見た事がないのでわからない。

「少ない記録だが、本体を倒すのと同じくらい大変らしい。さっきの話の火の玉のときは弱点が水だからな。わかりやすかったがそれでも確かに体感では同じ位の魔力が必要だったんじゃないか?」

ユウトは相対した経験者だが、魔術師ではない上にどちらかと言うとツバサ寄りの脳筋だ。

「そもそも僕が最後に見た時より身体のサイズが大きくなってるから、吹き飛ばす分のエネルギー総量も計算より増えてるよ。どこからそんなエネルギーを持ってこようか」

「も、もう流石に国からは出せませんよぉ?今ですら各方面にネチネチ言われてるんですから」

アキラの疑問に慌てた八尾が弱々しい泣き言を口にしていると、

「八尾室長、ちょっと・・・」

スーツ姿の男性が海の家に顔を出した。

30歳前後に見える八尾よりかなり歳上、タレ目に小太りの男性で、八尾と並ぶと狐と狸のようだ。八尾に何か耳打ちすると2人でツバサの方を見ている。

自分に関係する話だろうか。

「なんですか?」

と聞いた語尾に被せるように

「何?ツバサに関係ある事?」

とツバサの前に出るアキラ。

何とも言い難い気持ちでアキラを見るが、本人は当然のような顔で澄ましている。

傍から見ると小学生に守られる高校生だ。

八尾は笑いを堪えたような顔をしているが、狸顔の方は動じず話し始める。

「高野さんは初めましてですね。ワタクシ八尾室長のもとで働いております田主と申します。副室長の役職を任されておりますので、室長が多忙の際はワタクシの方に声をかけていただければ対応させていただきますので」

八尾の時と同じく名刺を渡され、慌てて受け取る。

そういえば八尾さんの名刺、短パンのポケットに入れっぱなしだったけど、どこいったんだろう・・・

「で?狸のおっちゃんはツバサに何の用?」アキラが慣れた様子で声をかける。

「こら小坊主!狸じゃなくて田主だと言っとるだろうが!」

「僕だって中身は坊主じゃないってば」

「フン、前と今、両方合わせたってワシより一回り以上は下だろうが。立派な坊主じゃ!」

あれ?何か仲良し?二人の軽快なやり取りに驚くツバサの横にススス・・・と寄って来た八尾。

「田主さん、有能だし顔も広いんですけど昔からあんな感じで歯に布着せぬというか、上にもすぐ食いついちゃうんで副室長なんですよ。でも実際はあの人がほとんど回してるんで、困った時は頼りになりますよ」

小声で教えてくれたその横顔は少し自慢げだ。いい関係なんだなぁ。

「だから何の用なのさ」

「おぉ、そうだ、向こうで騒いでビデオを撮ってる奴らの中に、高野さんの知り合いだって言ってる女の子が居てなぁ」

途中でチラと狐顔の上司を見ると、八尾が補足するように話し始める。

「実は、もう散々ネットに動画をアップされているので、じゃあいっそテレビ局を集めて報道させようかという話にもなったんです。ですが、国道も山道も野次馬と逃げる人との渋滞で通れなくなってまして。ヘリも先程見たように捕まってしまう危険があったりして安全性が確認されるまでは飛ばせない中、動画配信者が中途半端な情報を流し続けてて情報統制が取れなくなってる状況なんですよ。なので、こちらで精査した情報を公認動画としてメディア向けに出したいんですが、広報担当を連れてきていなかったので困ってまして・・・そこで、もし本当にお知り合いなら臨時の広報担当としてお願い出来ないかなぁと」

「はぁ・・・でも私配信者の知り合いなんて居ませんよ?」

「あれ?そうなんですか?でもツバサさんのお名前を言ってたんですが」

「何ていう人ですか?」

「本名じゃなくゆきりんって言ったらわかると・・・」

「・・・?あぁ~!」

もうずっと前のような気がするが、ほんの数時間前に聞いた名前だ。

あの胸の大きなお姉さんか。

しかし、少し会話しただけの仲なのに知り合いアピールするとは何ともたくましい根性だ。

まぁ悪い人には見えなかったし、誰でもいいなら別に構わないだろう。

「そうですね、知り合いといえば知り合いです。連絡先も交換してるし、親切な人だったんで誰かに頼むつもりならお願いしてもいいと思いますよ」

確か立派なカメラなんかも持ってたはずだし、力になってくれるだろう。

「そうかそうか、は~有り難い。このままじゃワシが責任者として出にゃいかんとこだったから助かった」

田主さんが出るよりはゆきりんの方が見栄えは良さそうだなぁと思ったが、あえて口に出さなかったのに

「おっちゃんじゃ見た人がテレビ消しちゃうよ」

とアキラが口に出した。

「フフン、うちのカミさんはワシが一番可愛いと言うとるしな!」

と笑いながら狸さんもとい田主さんは海の家を出て行った。

「さて、話を戻」

「ちょっと質問なんだが」

ミコトの声を遮った犬飼が顔の横で手を上げている。

「ずっと聞いていたんだが、さっきの話ではそこのお嬢さんは「高野ツバサさんね」元々何とかいう力「魔力」とかいうのを持っていないが、分けてもらって使えるようになったって事だな?」

八尾の助けを借りながら質問を続ける。

「で、以前説明を受けた時に聞いたんだが、前の場所にあったその、魔力?の素となる物質「魔素ね」がこちらにはないから、今は魔力?を消費して戦ったりしているんだろう?じゃあそこのお嬢さんは昔分けてもらった魔力が無くなったらもうこっちじゃ戦えないって事か?」

「あ~」

質問の意図を理解したアキラがチラリとツバサを見ると杖を出して大人の姿になり、空中に光で描いた図を使って説明を始めた。

「わかりやすく例えると、魔素があると体内に暖炉が出来るんだ。でも火種となる魔力がなきゃ何も燃やせない。魔術を使うには魔力が絶対に必要なんだ。魔力が多ければ魔力を燃やし続けられるし、少なければ魔素を燃やす。魔術はその暖炉で燃えてる火を使って攻撃したり人や物を浮かせたり変形させたり、色々な事をする為の手段だね」

お腹に火のついた暖炉を持つ人の絵が可愛らしく皆の頭上に描かれている。

「で、魔力は体力と同じようなものだから休めば回復する。でも、騎士団には休めない時や魔素が少ない場所で戦う事もある。だから、精神エネルギーを魔力に換えて連日不眠で戦う必要があるんだ。所謂心の強さとか気持ちだね。ただその術式が難しいからあんまり使える人はいないんだけど、王国騎士団に入る為の条件の一つにその術式が使える事ってのがあるから、副団長だったツバサはもちろん使えるんだ」

「あ~・・・」

話を聞きながら考えていたツバサは微妙な反応。

実は入団試験の前夜、どうしても魔力変換の術式が覚えられないと泣くツバサの精神の無意識領域に、アキラが術式を直接書き込んでくれたのだ。

なので、厳密に言うと使えない。
使えないが、気分が高ぶると勝手に精神エネルギーが変換されて魔術の威力が大きくなる。

おかげで入団当初は天才扱いをされたり、隣国に奴隷として攫われそうになった子供を助けようと爆発魔術を使うと怒りのあまり大爆発を起こした事もある。

ミコトとユウトには内緒にって話したけど、あれって今世でも内緒なのかな?

「なるほど、じゃあそのお嬢さんも戦力とみなして良さそ」

「あー!!!」

突然ミコトが大声で全員の注目を集めた。

「アキラ!それだよ!こっちの人間の精神エネルギーを魔力に変換したら、足りない分が補完出来ないかね?」

「あぁ、出来なくは無い・・・かも?こちらの人間の精神エネルギーがどんな物かわからないけど、試してみる価値はあるかも」

「え!じゃあ電力は集めなくても大丈「いやそれは必要」・・・はい・・・」

八尾が細い目を見開いて輝かせたが、アキラの一声ですぐ元に戻った。

お偉いさんの上司がいる責任者って大変なんだなぁ、と呑気に考えていると大人バージョンのままのアキラが犬飼に指示を出している。

「じゃあ誰か協力してくれる自衛隊の人、なんか強い気持ちがありそうな人連れて来て」
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