【完結】紅の戦女神は世界を変える

斉藤りた

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数分後、何故か息を切らして頬を紅潮させた二十代前半であろう自衛隊隊員が海の家に居た。

「協力してもらえるんだよね?」

「はいっ!どんな事でも言ってください!」

と言いながら目線は海の家の中を泳ぎ回っている。

「あの、先程の、我々を救ってくれた金髪のめが・・・女性はどちらに・・・?」

「あぁ、あたしだね」

ミコトが立ち上がる。

ミコトはテレビや雑誌でもなかなかお目にかかれないほどの美少女だが、金髪の爆美女を求めて来たら黒髪の女子高生が出てきたので目がまん丸になったまま理解が追いつかず固まっている。

なるほど、さっきミコトが助けた自衛隊員の中に居たのか。

何かを察したユウトが

「アキラ、早く変換実験を始めろ」

とミコトと自衛隊員の間に立った。

名指しされたアキラはニヤニヤと笑いながら

「今の状態じゃどう見てもエネルギー不足でしょ~師匠、適当に何か魔術使ってよ」

と言うと

「あっ」

とユウトが止める間もなく

「ん?こうかい?」

と指先を光らせた。

と同時に真っ直ぐ伸びていた艶のある黒髪は緩やかなカーブを描く光り輝くプラチナブロンドへ。

切れ長で夜空色の瞳と小さくも赤く艶かしさを主張する唇は、クッキリとした二重に夏の青空色の瞳とピンク色でぷっくりと分厚く色っぽさが強調される唇へ。

女子高生としてはおそらく平均的なバストも、Tシャツを盛り上げてヘソが覗くほど大きな胸へ。

ホットパンツから伸びる若さ溢れる美脚は情欲的な色気を醸し出す長い脚へと変貌を遂げる

「はぁぁぁ…」

と詠嘆のため息を吐く若い自衛隊員はいつの間にか膝立ちになり胸の前で手を組んでいる。

ユウトは出来るだけミコトを隠そうと身体を大きく見せている。

その横で、真剣な眼差しで杖と左手の平を前に出したアキラが自衛隊員を凝視する。

サファイア色の瞳の周りにだんだんと光が集まっていく。

精神エネルギーや魔力を視ようとしているのだろう。

逆サングラスのように目の周辺を淡い光で包み、視線を外さず集中したままゆっくりと杖を半回転させる。

隊員の身体を縁取る景色が揺らめき、微かに光り始める。

アキラが手を上に上げると光も一緒に自衛隊員の頭上に浮かぶ。

左の手首をクルリと回すと、その光も回りながら小さくなり小指の先ほどの光の粒になった。

「はい、ゴキョーリョクありがとね~」

小さい光を杖の先に付け言うと

「念の為、健康に害がないか見といてね」

と耳打ちされた犬飼に促されホットパンツ女神教の信者は名残惜しそうに海の家を出て行った。

ムスッとしているユウトに気付いたミコトは数秒ほど考え、大きな目をさらに少し見開くとニマ~っと笑う。

顔を背けるユウトの表情を見ようと周りをクルクルと回り始めた。

キャッキャと楽しそうな声が聞こえるが、一同は敢えて聞かないように背を向けた。

イチャつき始めた二人を無視して、八尾はジッと杖の先の光を見つめるアキラに話しかける。

「どうですか・・・?」

「僕らより変換率は低そうだけど、取れるのは取れそう、かな?」

パァ~!と八尾の顔が明るくなる。

「ただ、あの精神エネルギーでこの量・・・って事は余裕持って直径1.5キロの球体だと仮定して・・・」

ブツブツと呟きながら空中に指の先の光で文字を描き始めた。文字が繋がっていて読めないけど、計算式かな?

「あれ?アキラさん?あきらさ~ん?」

八尾の声も届いていない。

「多分、もう大丈夫ですよ」

相変わらずの様子に笑みを隠せない。

自慢の弟が集中し始めたら、多分もう大丈夫。昔っからそう決まってるんだ。

「アキラ、もう聞こえてないのかい?」

イチャイチャに満足したのかミコトが戻って来た。

「師匠のあたしが言うのもアレだけど、この子は本物の天才だからね。異常な魔力の量は持って生まれたものだけど、魔術言語を覚える記憶力、魔術に対する理解力、周囲の力を視る観察力、それを組み合わせる発想力、それを実現させる集中力、その全てが飛び抜けてるのさ。そして今は努力して経験まで身についた。もうあたしも敵わないかもねぇ」

んふふん。
自分が褒められた訳じゃないが自慢げに胸を張るといつ来たのか後ろに居たユウトに後頭部を小突かれた。

「ただツバサの為にしか動かないってのが無ければな。他の有事にも動いてくれれば助かるんだが」

「団長いつもそれ言うけど、そんな事無いんだけどなぁ~」

「いや、基準はお前だな」

そんな事ないと思うんだけど・・・まぁいいや。

犬飼が田主と共に戻って来て、八尾とユウトとミコトも一緒に入り口付近で話し合いを始めたので、手持ち無沙汰になったツバサは手近な椅子に座って肘をついた。

アキラはまだ何か呟きながら光る指先を動かし続けている。

小さい頃も勉強しながらああやって空中に何か描いて集中してたなぁ。

大きくなったけど変わってなくてホッとする。

しかし、カッコよくなったな・・・背も高くなって、腕も太くなったし、私を軽々と抱え上げてたし、最初に襲われた時もすぐ駆けつけてくれて・・・

美術品のような顔が集中してるのを眺めていると、耳元で「イイ男になったよねぇ?」と聞かれ「ホントにね・・・」と思わず答えてしまった。

ハッとして耳を押さえながら横を見ると、戻って来ていたミコトがニヤニヤして口元を押さえている。

「え、何?」

頬が熱い、気がする。

「んや~?別にぃ~」

んふふ、と笑いながら八尾と話しているユウトのほうへまた行ってしまった。

「何なのよ、もう」

何だか耳まで熱くなってきた。

「何が?」

「うわっ!」

すぐ近くで声がして思わず飛び上がる。

「どうしたの?姉さん何か顔赤くない?疲れた?」

心配してくれてるのか顔を覗き込まれる。まだエネルギーを視る魔術使ってるのかな。何だかキラキラしているような・・・

「何もない!元気!」

思わず大きな声で答えてしまう。

大体、この姿は前世の姿で、今は子供なんだし、この顔と今の顔も違うし・・・

悶々と考えていると、アキラに気付いた面々が寄って来た。

「で?アンタの計算だとどうなんだい?」

「魔核を見つけるまでの時間回復しない程度の爆破力と、魔核を破壊するだけの魔力、集めてもらう電力とさっきの精神エネルギーの変換率と」

「面倒だ!結論だけ言いな!」

ミコトに遮られ、形のいい唇を少し尖らせるアキラ。

「大体100万人以上の精神エネルギーがあれば足りる。でもどうやって集めるか・・・」

「「ひゃくまん!?」」

自衛隊や警察、野次馬や町の人達を総動員したって足りない。お向かいの家のお爺ちゃんなんてエネルギー貰うどころか取られそうだけど・・・

「かなり多いな」

「一人当たりから取れる量を増やしたり出来ませんかね?」

「隊員達はギリギリまで取ってもらって構いません」

犬飼は献血か何かと勘違いしてそうだ。

「いや、イケるんじゃないかい?」

「そうじゃな、何とかなるじゃろ」

ミコトと田主だけはケロッとした顔をしている。

驚く一同を尻目に二人は顔を見合わせると

「多分さっきのやつだよねぇ?」

「そうじゃな、小坊主次第って所じゃな」

と会話を交わす。

「一体どうやるんだ?」

ユウトが尋ねる。

「さっきさ、ツバサの知り合いの女の子が~って言ってたでしょ?アレを使わせてもらうのさ」

「どうせある程度の情報は流すしな!失敗したら被害は世界中に広がる可能性が高いんだろ?せっかくならブィティアールを見とる国民にも協力させちまえばいいさ」

「あ、視聴者からエネルギーを集めるって事ですか!?」

八尾が閃いた様子で聞くと二人が同時にうなずく。

「動画を見た人達の精神エネルギーを何とかして抽出して~」

「小坊主が何とかして集める、これでどうにかなる!」

「え、ほぼ僕に丸投げじゃん・・・」

アキラが呆れた顔をする。

「いや、精神エネルギーを出す所はあたしが何とかしよう!師匠だからねぇ!」

ミコトが胸に拳をぶつける。ゴリラのドラミングのようだが、前世の姿のままなので豊満な胸がパンチの勢いでたわわに揺れる。

「動画もテレビも映像を電波に乗せてる訳だろ?って事は、電波信号にエネルギー抽出の魔術式を混ぜれば理論上は可能なのさ」

「あぁ、って事はこっちの術式じゃなく、この術式にコレを分解したやつを混ぜて・・・」

「いや、電波信号って事はこっちの方が混ざりやすいから・・・」

アキラがミコトと二人で空中に光る文字を描き始めたせいで頭上がキラキラと眩しくなってしまった。

「ね、出すのが出来そうってわかったけど、集めるのは?」

アキラのポロシャツの裾を引っ張り、意識を戻す。

「ほら、小坊主、何かチョイチョイっとやればお前さんなら出来るだろ?」

と田主が魔術師二人の真似をして指先を動かしてみせる。

ジロリと瞼の上半分を閉じた目で田主を睨んでみせたが、パッとツバサのほうを振り向き

「姉さんは?」

と聞いた。

「え、何が?」

「僕が頑張って、エネルギー集めて、魔力に変換して、ってやればいいと思う?」

何を今更言ってるんだろう。他の誰にも出来ない事でも、アキラにならきっと出来るのに。

じっと見つめてくるサファイアを、自分の顔がはっきり映るほどしっかりと見つめ返す。

「アキラにしか出来ない事だもの。それが出来る貴方が誇らしいよ。お願い」

数秒間、お互いしか見えなくなる。

すると、ニコーっと満足気な笑顔になったアキラが

「姉さんがそう言うなら仕方ないなぁ~!」

と背を向けたので、八尾と田主と犬飼が大きくため息を吐いた。

アキラのやる気が無くなってしまうと、現状で倒せる可能性がある攻撃手段は無いのだ。

鼻唄を歌いながら魔術を弄り始めたアキラを見て、

「ほらな」

「やっぱりね」

ユウトとミコトがツバサに聞こえるように言葉を交わす。

「アレは褒めて欲しいだけだって」

苦笑いで誤魔化すが、見つめ合ったせいで心臓がうるさい気がする。

耳も熱い気がして、短い髪の毛でこっそり隠した。大体、アキラがあの姿なのが悪いんだ。

「早く全部終わって、元に戻れるといいな・・・」

誰に言うでもなく、宙に向かって呟いた。
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