【完結】紅の戦女神は世界を変える

斉藤りた

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海の家に入ってきたユキリンこと山本敏江は絶望していた。

遡る事一時間ほど前。

他の配信者のライブ配信でさっき会ったばかりの美少女が映ったのを見逃さず、ダメ元で警察にごねてごねてごねまくってみたのが発端だ。

その結果、撮影許可ではなく緊急放送する為の動画を撮って欲しいと言われ、言われるがままに関係者が集まっているという海の家へと移動している。

だがユキリンこと山本敏江は最初こそ大役に震えてはいたものの、自分がこの世界的大事件の顔になる!?全国デビュー!?と気が付いてからはニヤニヤが止まらなくなっていた。

狸顔のオジサンが

「山本さん」

と呼ぶも

「ユキリンです」

「えーと、敏江さ「芸名はユキリンです!」」

と、気分はもう芸能人だ。
あの可愛い子は誰だって話題になってぇ、グラビアアイドルか女優にスカウトされてぇ・・・いや、用意された情報を伝えるらしいからアナウンサーの方が可能性あるかな?

なんて妄想を爆発させながら透明の箱に入った真っ黒の化け物を横目に、芸能界のトップへ駆け上る為の説明を受けに海の家に入って来た。

そして、絶世のナイスバディ金髪美女と対面してしまったのだ。

腰ほどまでの長さがあるのに毛先までキューティクルツヤツヤの金髪、マツエクより長く多いまつ毛、青の瞳は自分の2倍近く大きいし、ツンと上を向いた鼻も口紅も塗ってなさそうなのにツヤツヤのリップも全て見た事がない程の美しさだ。

しかも、誰にも負けた事がなかった胸すら疑う余地もなく負けている。

さらに、傍らにはガチムチ系のイケメン学生、向こうには超絶美形な銀髪の外国人にさっきの美少女もいる。周りも含めて完敗どころか同じ土俵にすら上がれていない。

海の家に入るや否や両手両膝をついて動かなくなったユキリンを見て一同は戸惑っていた。

田主が

「えっと、山も、違った、ユキリンさん?」

と声をかけるも

「いえ、もう山本敏江でいいです・・・私なんてトシエで十分です・・・」

と弱々しい。

「このお嬢さんどうしたんだい?ユキリン?トシエちゃん?大丈夫かい?」

と金髪美女に抱き起こされる。

「はぁぁぁぁ優しいぃ~」

と泣きそうな声を出している。

困ったが、事を進めなくては時間がないのだ。

「ユキリンちゃん、これから見せて説明する事は、他言無用でよろしく。放送用の設定は後で説明するからね」

と言うと、ミコトは空中に描いていた光る文字を消す。

魔術を使うのを止め、金髪美女からスルスルと現世のミコトが現れる。

「はれ・・・?へ・・・?どうなってるの・・・?」

「ぶくく・・・あーっはっはっは!いいねぇ、この反応!たまんないねぇ!」

とミコトは膝を叩きながら豪快に笑い飛ばした。

八尾と田主、途中でユウトやミコトが補足しながら説明しているのを少し離れて見ていると、横に立っているアキラが口に手を当てて何か考え込んでいる。

「どうしたの?」

「ん、あのさ、姉さんからあの人に声掛けたんだよね?」

「ん?そうね、確かそうだったけど」

「他にも人が居たのにあの人に声掛けた理由ってわかる?」

「え、いや特に何となく、近くに居たからとかじゃないかな?なんで?」

先程と同じ体勢のまま、眉間に皺が寄っている。

「前世のさ、団長と姉さんの同期だった@?rw・・・あ~貴族の三男坊で、腕は良いのにお調子モンだった奴居たの、覚えてる?」

そう言われて思い浮かぶのは、恵まれた魔力の証の金髪がクルクルの天然パーマだった同じ歳の騎士。

髪色と同じく魔力量の多さを表す青目に貴族の生まれという恵まれた環境だったにも関わらず、勉強嫌いの努力嫌いで無理矢理騎士団に入れられた奴だ。

だが貴族出身なのに平民やツバサのような元孤児にも偏見を持ったりせず、気が合う奴だった。

「あぁ居たね。アイツがどうしたの?」

「多分、アイツだよ。あの女の人。」

「え・・・えぇ~!?」

思わず大きな声を出してしまい、全員がこちらを向く。

ごめんごめんと片手で謝り、小声で聞き直す。

「え、なんで?わかるの??」

「魂の色というか質というか・・・そういうのが一緒なんだ」

「え、魂の?そういうのが分かるの?」

「うん、だから姉さんを見つけられる自信があってすぐ後を追わなかったっていうのもあるんだ。師匠の近くに居るはずだろうと目星も付けてたから。まぁ感知魔術使うまでもなく、姉さん見たら僕はすぐ分かったけどね。」

フフン、と鼻を鳴らして続ける。

「でも、確かアイツは転生魔術使えないし記憶は無いはずだよ。本当に偶然、だろうね。まぁ師匠と団長も近くで生まれてるんだしこの辺に生まれ変わっててもおかしくは無いんだけど」

「へぇ・・・そういう事もあるんだね」

そう言われてみると、何だか懐かしくなってくるから不思議だ。

確かにあの適当そうなところやリアクションが派手なところはアイツっぽいかも。

「まぁだからって何て事はないんだけど。他にも人が居たのにアイツに声掛けたのも、気付かないくらいの無意識に、姉さんの記憶が魂に残ってたのかな」

そうなのかな。でも、もうあの姿で会う事は出来なくても、二度と会えないと思っていた仲間が目の前にいる。そう思うだけで熱い気持ちが胸に込み上げてくる。

「僕としては、アイツが女に転生していて良かったよ」

とアキラが呟いた声はツバサの耳には届かなかった。
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