【完結】紅の戦女神は世界を変える

斉藤りた

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「わかりました!「異世界から人喰い魔物がやって来ました、倒す為に異世界からやって来た人達がいます、エネルギーが足りないから画面越しにエネルギーを分けてください!」ですね!」

言って良い事だけを復唱させてやっと理解した様子のユキリン。

本人は元気いっぱいだが、対照的に疲れた様子の狐顔と狸顔。

転生云々は現世の家族や友人らの事を考えて隠す事にしたのだ。

だが、撮影の練習をさせてみるとついつい

「実は女子高生で~」

「こう見えてまだ十一歳!」

などと口走るので、二人がかりで繰り返し教え込んだのだ。

グッタリしている二人を横目に、

「アニメみたいに両手を空に向けて「はぁぁぁ」とか言わなくていいですか?」

と呑気な事を言っている。

動画にはユキリンと前世の姿をした四人が出る事になった。

人間離れした美貌を見せれば納得する!とユキリンが熱弁した結果で、魔物もカメラに収める為砂浜での撮影だ。

ミコトが魔術を発動させ、精神エネルギーを抽出し発現させる。

それをアキラが回収し、結界を解くのと同時にミコトが電力を雷魔術に変え攻撃、多少身体を破壊したところで精神エネルギーを魔力に変換したアキラが攻撃、魔核を発見し次第アキラの残った魔力、ユウト、ツバサで攻撃、という手はずだ。

精神エネルギーを抽出した所で健康被害はない事は確認出来ているのだが、術式に本人の同意も盛り込んだ。

これは八尾の案で「後々の面倒事を避ける為にお願いします!」だそうだ。

エネルギーの回収については、アキラ曰く「魔物探知の魔術を改変したら意外と簡単に出来た」との事で、術式を見たミコトは「コイツの脳みそはどうなってんだい」と頭を抱えていた。


魔物本体は魔術しか効かないと証明されているが、魔核についてはまだわからないので、四人の魔力がなくなった場合に備え自衛隊にも艦対艦ミサイルや多連装ロケット弾などの遠距離攻撃の準備をしてもらっている。

そしていざ撮影、という段階で重火器の設置完了を告げに来た犬飼が気付いた。

「その服装で良いのですか?」

四人とも異世界から来た設定な筈だが、着ている服が上から下までファストファッション全開なのだ。

「ホントだ!ミコトさんダメじゃ~ん!」

「異世界から来て買い物してたって事にしちまうかい?」

「と言っても、着替えなんか無いぞ?」

「あっ!私のTシャツ全国制覇のやつじゃん」

今更気付いたのだが、異世界っぽい洋服なんて無い。

「え、近くにコスプレショップとかありませんかね?」

と八尾まで慌てふためいている。

と、田主が

「ほれ、小坊主、出番じゃぞ!」

とアキラの背を叩いた。

「おっちゃん、僕の扱い酷くない?」

と背中をさすりながらも、頼られて悪い気はしないのか満更でもない顔で一歩前に出る。

「アキラ、出来るの?」

ツバサが聞くと

「デザインとかそういうのは疎いから、前世の騎士団のでいい?」

と言うが早いか杖をクルクルと回して出て来た光の紐がアキラとユウトに巻き付いていく。

光が消えると、懐かしい鎧がその身体を包んでいた。

白銀を使い金色の模様で縁取りされた、強力な防御魔術が施された鎧。

頭部と二の腕、太ももに金属部は無く、鎧が無い部分に見える青色の服にも防御魔術がかかっている。

背中には白色のマントがはためき、その中心には大きく王国騎士団の紋章が描かれている。

「あぁ・・・」

「剣道の防具も悪くないけど、やっぱり私達にはコレだね」

「そうだな」

ユウトとツバサは懐かしい重みを感じ、騎士団での風景を懐う。

「師匠と僕はいつもの研究用の服じゃあんまりだし、式典用の服にするよ」

「アンタ、もう何でもアリだねぇ」

呆れるミコトを無視して光を巻きつけその光が消えると、二人ともマントと同じ深い青色のローブを羽織っている。胸元と背中には騎士団の2人と同じく王国の紋章が刺繍されている。

縁取りは銀と金の糸でなされており、魔力の高い人間に現れる色を基調とした国に仕える優秀な魔術師用の証だ。

アキラは前世で着る事は無かったが、もし成人していたら間違いなく着ていたであろう。

「ふぇぇ・・・皆さん麗しすぎます・・・」

ユキリンは胸の前で手を組み、今にも泣き出しそうだ。

アンタも前世では着てたんだよ、とツバサが心の中で思っていると

「師匠は昔、銀の魔術師として名を馳せてたからね」

とアキラが教えた。

銀は強い魔力の象徴で、魔術師にとっては最高峰の栄誉となる冠名だ。

「そ、そんな異名が・・・他には無いんですか!?」

チラリと騎士団の二人を見るユキリン。

「団長は金の武神で・・・」

「じゃあアンタは白銀のお子ちゃまだね」

とミコトがアキラの耳を掴み引っ張って行く。

「後で術式教えなよ」

「何に使うのさ」

「そらアンタ、旦那の為のファッションショーに決まってるだろう!」

名指しされたその旦那は、思い出の世界からまだ帰る気配が無さそうだった。


ユウトが鎧を十分に堪能し終わる頃、皆は外に出て準備をし始めた。

まだ明るいが、昼間のような夏らしい日差しは消え、柔らかな夕暮れを予感させる時間帯に差し掛かっている。

カメラ係に任命された自衛隊員にユキリンが使い方を教えながら化粧直しに精を出す。

その横で田主は再度

「転生とか言ったらいかんぞ!」

「出来るだけお堅い感じでしゃべるんじゃぞ!」

と繰り返し念押しをしている。

八尾は設置された蓄電池の確認。
集められた電力をその場で魔力に変換するので、蓄電池は小さな物でいいとミコトに言われたのだ。

犬飼は離れた場所で魔核が出た際の攻撃に備え隊員達に指示を出している。

ユウトは数字の八を横にしたようなマークを描くように剣を振り、感触を確かめ、ミコトはその背に向けて、アキラに教えてもらった身体にフィットするバリアをかけながら「こうじゃなくて・・・こう・・・んん・・・?」とブツブツ言っている。

そしてツバサとアキラは、海の家の入り口付近に座り込み、ツバサは上半身の鎧を外している。

「ホントにするのぉ?」

「じゃないと姉さん沈んじゃうよ?」

他三人が使える浮遊魔術が使えないツバサの為に、精神エネルギー変換の術式を書き込んだのと同じく、浮遊魔術の術式を書き込もうとしているのだ。

「うぅ・・・アレ気持ち悪いんだよね・・・」

「今から覚えても暗読で間違えるでしょ」

そもそも覚えられる気がしないのだが、口には出さない。

「王国では海で戦う事なんて無かったのにぃ」

「そうだね、内陸だったしね」

北の方に海はあったが極寒の地なので、人も魔物も盗賊も海賊も居ない。そもそも海で戦う事がなかったのだ。

ブツブツと聞こえる愚痴を軽くあしらいながら、ツバサの鎖骨辺りに掌を当て魔力を集め始める。

「んあっ・・・!」

胃の入り口辺りをつかまれるような感覚。魔術を書き込むと聞いたミコトに痛みなどがないのか聞かれたので、例えるなら天ぷら油を飲み干した後の胸焼けのような・・・と言ったら気持ち悪そうな顔をされた。

「んんんっ」

「もうちょいだから我慢してね」

アキラの熱くなった掌から魔力が流し込まれ続ける。

各々準備をしていた一同もツバサの声が聞こえ、遠くから様子をうかがっている。

「何すかアレ。なんかやらしい雰囲気ですけど」

とユキリン。

「アイツらはあれが通常営業だよ」

とミコトが手を叩いた。

「二人が終わり次第、始めるよ」
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