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エミル1
しおりを挟むエミル
「ベル~、最近アルフォンス様が冷たいんだけれど!」
かなり早い時間にアルフォンス様の部屋から追い出された僕は、自分の私室の隣にあるベルンハルトの私室に行き愚痴っていた。
護衛や侍従に与えられた一人部屋は主の部屋の向かいにあるが小さいので、男が二人でいると狭い事この上ない。
「そりゃあそうだろう。
いつまでも子供の頃みたいに仲良しとべったりなんて無いだろ。」
僕は目の前で余裕をかましている大男を睨みつけた。
・・・お前がそれをいうか。
「それに最近のアルフォンスは変わった。
人の事を気に掛けられるようになったし、執務も積極的にするようになった。
一人でいる事もできるようになったし、段々、大人になっているんだろう。」
ベルンハルトはアルフォンス様の事を思い出しているようだ。
「ますます俺好みになった。」
そしていつも無表情なのが柔らかく微笑んだ。
こいつは本当にムカつく。
学生時代は暴れん坊で一番お子ちゃまだったのに、今じゃ余裕たっぷり経験値たっぷりの大人の男ですから!って感じを醸し出しているのが特に。
「最近はシュミット様にべったりで、僕の出番が殆ど無いし。
用が済むと即お払い箱だし。」
僕は近くにあったベルの飲みかけのグラスの中身を一気に煽って、グラスをテーブルの上に勢い良く置いた。
「ちょ・・・お前それ」
「そりゃあお前は良いよ。
アルフォンス様に『騎士格好良い、ベルみたいな男らしいのに憧れる』って言われたんだろう。」
「いや、『ベル格好良い、憧れる、抱いて♡』って言った。」
「いやいや、そんなこと言うはずないじゃん!
大体、アルフォンス様は抱く方だから!多分。
勝手に想像を混ぜたらダメじゃん!」
「お前の方が混ざってるぞ。」
僕は自分が座っていたソファーから立ち上がって、向かいにあるベッドに座るベルンハルトの隣に座った。
「正確にはキャロルの婚約者だった王宮騎士みたいな体に憧れるって言ったんだ!」
僕は部屋着のベルンハルトの胸に手を当てる。
「あいつはもっと凄い筋肉だった。
厚みがあって、胸筋がピクピクしてて、腕の血管が浮いていて・・・ベルはまだまだだな。」
「何?見たの?」
ベルンハルトは驚いた顔でこっちを見ている。面白い。
「アルフォンス様はどんなのが好きなのかな?って参考に。」
そして僕は両手を目の前で組んで、上目遣いでベルンハルトを見た。
「こうやって、『騎士様、すっごく良い体してますね、素敵です♡僕、筋肉大好きなんです、良く見てみたいなぁ♡』って言ったら、脱いで見せてくれた。」
「・・・それは。」
「で、物陰に連れ込まれそうになったから『キャロルに婚約者さんの筋肉を見せてもらったって言って良いですか?』って、キャロルの友達なのを匂わせて逃げた。」
「ひど・・・」
ベルンハルトは絶句しているが、本当に酷いのは俺より、あの騎士の方だろう。
キャロルはあいつと結婚しなくて正解だったよね、僕には関係ないけれど。
「だからぁ、ベルももっとがんばれ。僕もがんばるからぁ。」
「あぁ?お前、酒弱いのか?大丈夫か?」
「あ、さっきのお酒だったんだ。」
どうやら僕の顔はかなり赤くなっていたらしい。
でも、もう少し飲みたい気分だったので、ベルンハルトにお酒をもらった。
「ぐすん、僕だってアルフォンス様に好きって、憧れるって言って欲しい。
でも、ベルみたいに男らしいタイプじゃないし・・・
ああ、アルフォンス様に抱いて欲しい。
くんくんしてぺろぺろしてぺろぺろされてぎゅーしたい。」
「おま・・・」
「大体、僕よりおじさんのシュミット様の方が良いってなんなの~?
僕の方が可愛いし、綺麗だし、近くにいるし、いつでもオッケーなのにぃ~!
うわーーーーーーん!」
「まぁ、確かにアルフォンスの趣味はどうかと思うけど・・・お前、飲みすぎ、部屋に戻れ!」
「やだぁ!」
「面倒くさ。」
その後も僕は延々とベルンハルト相手に愚痴を言い、最後はベッドを占領して眠ったらしい。
朝になったら、大きいベルンハルトが小さいソファーで小さくなって眠っていた。
そして「お前はもう酒を飲むな。俺の部屋に二度と来るな。」と言われて、朝から怒られた。
良いじゃん、たまにはストレス発散に付き合ってよ~!
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