気が付いたら乙女ゲームの王子になっていたんだが、ルートから外れたので自由にして良いよね?

ume-gummy

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話し合い

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 次の朝はすっきりした気分で起きれた。
 あんなにレナトスの事ばかり考えていた理由も合点がいったし。

 夕べはあれからレナトスと抱きしめ合って、キスして・・・
 アルフォンスと海斗みたいな凄いのはまだ出来なかったけれど、俺は満足だった。
 レナトスも満足してくれたかな。
 あんまりやらしい事は苦手そうだけれど、だんだん慣らしていけばいつかは・・・
 むふふ。と、いかがわしい事を考えているとノック音がして、エミルが入ってきた。

「おはようございます。なんだか楽しそうですね。」
「まぁね。いい事があったから。」
 そうだ、二人の事はいつ言おうかな。
 大事になりそうだから、まずは母上ドリス妃に相談しないとな。
 あの人ならもう知ってる可能性もあるけれど。
 まぁ、バレても構わないんだけど、レナトスに迷惑が掛からないようにしなくては。

「エミル、母上に会いたいから予定の調整をお願い。」
 侍女に着替えを手伝ってもらいながら、エミルに聞いた。
「畏まりました。
 本日は昼食に王がお召しになるそうです。
 そちらにドリス様もご同席されるそうなので、その時に聞いてみます。」
 俺はそれに了解して、午前中はベルンハルトと久しぶりに騎士団の方へ顔を出して運動をした。

 昼食の時間になり、指定された場所へ向かう。
 今日は王族用のサロンだった。
 ここは少し薄暗いが、扉や窓が少なく、護衛が少なくても警備が出来る。
 俺もエミルとベルンハルトだけを連れて中へ入った。


 サロンの中は少しでも明るくする為か、壁も家具も白で統一されている。
 薄い色の花が飾られていて、一瞬、俺は向こうの世界の病院を思い出す。
 そういえば、こっちに病院ってないよなぁ。
 そんな事を考えながら食卓に着くと、すでに王も母も席に着いていて、俺は一礼して促された席に座った。

「・・・三人だけなのですか?マリアンは?」
 話している間にもどんどんコースで料理が運ばれてくる。
 こちらでは出された食事を会話の合間に上手に食べるのがマナーらしい。
 俺は最初、タイミングが掴めずになかなか食べられなかった。
「今日はアルの代わりに慰問に言っていますよ。
 貴方には大事なお話があるので。」
 ねぇ、と母は王に視線を向けた。
「うむ。実はお前に縁談が来ている。」

 いつもの見合い写真をポンと渡される時の気軽さは全くなく、王が話し始めた。
「お相手は?」
「キルシュの国主だ。お前を正妻にと。」
「え?」
「どうやらお前が治癒を使える事が向こうに知られたらしい。」
 王も母も大げさに肩を落とした。
 ・・・マジかこれ。ルーカスルートそのまんまじゃん。
 まだゲームの呪いは続いているのかな?
 もう自由になりたい。

「お前を寄越さなければ、いずれグーテベルクに攻撃をすると言って来た。」
「そんな、ラクーンと戦いながら、こっちにまで戦争を仕掛けるとか無理では?
 それにラクーンの王子はなんか言ってこないの?」
「ああ、ラクーンとキルシュはキルシュ主導の和平条約を結ぶつもりらしい。
 王子側はその為に黙らされたそうだ。」
「うちが除け者か。」
 思わずいつもの口調が出てしまった。
 母に睨まれる。

「こんな事ならアルフォンスを聖女に仕立てて、教会に閉じ込めておくんだったわ。」
 ゲームでもそれやってたけれど、主人公キャロルは結局キルシュに嫁に行かされてたよ。
 少し前だったら受け入れていただろうなぁ・・・でも。

「母上、俺とレナトスの事、もう知ってるんでしょう?」
「もちろんよ。私を誰だと思っているの?」
 怖!やっぱり母には隠し事できないんだな。
 もしかしたら、俺がアルフォンスじゃない事もバレてるんじゃない?
「もう、これからが面白いのに・・・」
「何の話だ?」
 母は澄まして口元を拭いている。
「父上、ちょうど良いので、私事ですがお話があります。」

 俺はレナトスとの事を父王と母に話した。
 王は眉間に深い皺を寄せて「私の初恋が」とか言っていたけれど、レナトスと心を通じ合わせたのは俺なので無視だ。
「そう言う訳で、キルシュには行けません。」
「いやしかし、国のためを思えば断る訳にいかないのだ。」
 知らん顔でお茶を飲む母の横で、俺と王は押し問答をした果てに、俺は返事をギリギリまで延ばすことを了承させた。



 話し合いが終わったら、直ぐにレナトスの執務室へ。
 昼食の話し合いの最中に、気を利かせた母の侍女が既に連絡しておいてくれた。有能すぎる。
 見返りに母には結果を逐一報告する事を約束させられたけれど。
 エミルにはこれからの予定は一切キャンセルしてもらう。

 執務室に着くと、これからするのは私的な話し合いだからと言う事で、二人きりにしてもらった。
「レナトス、やっと会えた。」
「アルフォンス様、話は大体聞いています。」
 俺をドアの側で迎えてくれたレナトスは、明らかにしょんぼりしていた。
 普段は顔色一つ変えないレナトスが、俺の前でだけ表情を変えるのが嬉しい。
 馬鹿だな俺は。こんな時なのに。

「俺、キルシュになんか行きたくない。
 折角、好きって伝えられたのに、俺はレナトスと一緒にいたいんだ。」
 レナトスの顔をもっと良く見たいと思い、明るい窓際へと移動しながら、俺ははっきりとそう告げた。
「はい。」
「どうしたら行かなくて済むか一緒に考えて。」
「はい。」
 レナトスはこちらへ向き合うと、優しく俺の頬を撫で始めた。
「泣かないで下さい。
 私は折角出会えたあなたを手放したりはしません。」
 俺は言われて、自分が泣いている事に気付いた。

 折角レナトスに好きって伝わったのに、何なんだよ。
 マッチングさせておいて、その後のフォローしないとか、駄目コーディネーターだな。女神さまは。

 レナトスは出窓の淵に一緒に座らせてくれて、ハンカチで俺の涙を拭ってそこにキスしてくれた。
「俺・・・子供みたい。」
「私には子供に見えませんよ、ん・・・」
 俺たちは唇を重ねた。


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