お兄様ヤンデレ化計画。~妹君はバッドエンドをお望みです~

瑞希ちこ

文字の大きさ
13 / 33

恋人ごっこをした

しおりを挟む
 具体的に、恋人というものは一緒にいるときどう過ごすのか。
 私とお兄様は〝とりあえず恋愛小説でも読んで参考にしよう〟ということになり、ふたりで書庫へと向かった。
 そこで私は一冊の本を見つける。タイトルは『恋人ができたら読む本』。……なんだこの胡散臭い恋愛本は。この世界にもこんな自己啓発本があることにまず驚く。

「うわ。そんな本あるんだ」

 後ろからお兄様が顔を覗かせ、私からその本をひょいと取り上げた。

「参考になりそうだし、これ見ながらやってみようか」

 本には〝恋人ができたらまずしたいこと〟という項目があり、私とお兄様はそこを見ながらひとつずつ試してみることになった。過激なことが書いてあったらどうしよう、と思ったが、ぱっと見る限りは全体的にピュアでクリーンな内容の本だったので、その心配はなさそうだ。多分。なんなら乙女ゲームのシナリオのほうが全然内容は過激だといえる。

 お兄様は楽しそうにページをめくりながら、恋人ごっこを開始した。


◆したいことその1.恋人同士の定番! 「あーん」で食べさせあいっこ

「ミレイユ、口開けて。このケーキ美味しいよ」
「あー……んっ。本当ね! クリームがふわっふわだわ! お返しに私のもあげる。はい、お兄様」
「ん、ありがとう」

◆したいことその2.手を繋いでお散歩

「春は咲く花の種類が多くて、庭園もぱっと明るくなるわね」
「そうだな。気温もちょうどいいし、春は散歩にも最適だ。……あ」
「なにか見つけた?」
「これ、今日ミレイユが着てる黄色のワンピースに似合うよ。白いイキシア」

 お兄様は花を摘んで私の髪の毛にさすと、小さく可憐なイキシアのように、控えめに微笑んだ。

◆したいことその3.ソファで一緒にごろごろ、じゃれ合い

「んー……お兄様とこうしてると、いつも眠くなっちゃう」
「さっきからずっとうとうとしてたしな。寝ていいよ。俺は君の寝顔を見てる」
「もう……そんなことして、なにが楽しいの、お兄様ったら……」

 そのまま眠気に勝てず、私はお兄様の肩にもたれかかったまま寝てしまった――。

◇◇◇

「んぅ……」
「……起きた? おはよう」

 うたた寝していた私が目を覚ますと、お兄様が優しく頭を撫でてくれる。

「ご、ごめんなさいっ! 私寝ちゃって」
「なんで謝るんだ。ここはミレイユの家なんだから好きなときに寝ていいんだよ。それに、ほんの数十分くらいだったし」

 幼い頃はお兄様も一緒に寝ていたのに、いつしか私だけが寝るようになって、そんなときは決まってお兄様は私が起きるまでずっとそばにいてくれた。寝起きにこうして頭を撫でられるのは何回目だろう。

「……なんか、ここまで試して思ったんだけどさ、俺たちってずっと恋人と同じことしてたんだね」
「……そうみたい。だって全部、いつもやってたこととと同じだもの」
「せっかくの楽しい遊びだったのに、結局いつも通りだったな」
「ふふ。本当に」

 私たちは目を見合わせて笑い合う。
 ――お兄様と一緒にいて、こんな穏やかな日は久しぶりだ。心が掻き乱されることなく、ただ流れるままに時が過ぎていく。
 今まで当たり前だった日常。当たり前でなくなって初めて、私はこの時間がどんなに自分にとって幸せだったかを思い知る。
 
 お兄様は、今なにを考えてる? ネリーが来ないから、暇つぶしに私に構ってくれただけ? エクトル王子との婚約が気に食わなくて、私がまた恋しくなっただけ?
 ゲームのように、選択肢さえ間違えなければ結ばれる運命だったらよかったのに。そしたらこんなに悩むこともなかった。私はバッドエンドが好きだけど、愛されずに終わるバッドエンドは好きじゃない。

「でもさ、さすがにこれはしたことなかったね。ほら」

 お兄様が本のページをめくると、そこにははっきりと〝その4.キス〟と書いてあった。

「キ、キス!? って、そ、それは……そうね。さすがに」

 あーんする、手を繋ぐ、ごろごろするときたら、次にキスがくるのは予測できる流れだった! 地味に段々濃厚なスキンシップになるようになっていたとは、この本なかなかやるわね……。
 え、じゃあ次はもっとすごいことが書いてあったりする可能性もあるの? それは困る。もう終わりにしないと。まずはお兄様から本を取り上げなくては。

 そんなことをひとりで考えていると、急に体重をかけられ自分の体が柔らかなソファにぼふっ、と倒された。
 視界には私を見下ろすお兄様と、その向こう側に天井が見える。

「お、お兄様!? なにを――」
「しようか。キス」

 私を押し倒し、顔の横に手をついて、お兄様はいつもより低い声でそう言った。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。

aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。 ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・ 4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。 それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、 生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり どんどんヤンデレ男になっていき・・・・ ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡ 何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。

転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!

弥生 真由
恋愛
 何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった! せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!  ……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです! ※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...