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「君が花音くんだね。私は学園長のトロワ。この度は甥が迷惑をかけたようで、本当に申し訳ない。まさかあそこまで常識のない馬鹿だとは思いもしなかった」
「アハハ、よろしくお願いします」
学園長室は暖かく花音を迎え入れてくれ、やっぱりフランダー教授にはおかんぶりだった。
あそこまでやらかしたんだから無理もない。反省しているとは言えいろんな人から怒られないと、のど元過ぎれば熱さ忘れる可能性がある。同じ過ちをけしてしないように、抜けないぐらい釘を刺しといた方が良い。
「学園長、早速相談なのですが、花音さんは私と同室でもよろしいでしょうか?」
「私もエミリーさんと同室がいいです」
「おやもう二人は打ち明けたようだね。ではそうしてくれ。花音さんの素性は私の遠縁にしておけば、大丈夫だろう。取り敢えず最低限の物は、その箱に入っている」
「ありがとうございます。助かります」
学園長は微笑みそう言いながら、テーブルの上に置いてある大きめな箱を指を差す。
お礼を言い花音は箱を持とうとするけれど、見た目よりも重いのかなかなか持ち上がらず。
「花音、こう言うときは伸縮魔法を使うのです。こう言う風に」
パチン
箱を見つめ小さくするイメージをしながら、指を鳴らす。箱はたちまち手のひらサイズまで小さくなる。発動者によって伸縮サイズは異なる日用魔法。
「これが魔法? すごい。すごい」
「花音くんもこの程度なら、すぐに習得出来るはずだよ。聖女の魔力は偉大だからな。計測してみよう」
生魔法にキラキラと目を輝かせ声を弾ませる花音に、学園長は本棚から桐箱を取り出し中から水晶を出す。
水晶は、魔法測定器。
水晶に触れ集中すると魔力全般を測定してくれ、能力カードに数値化をしてくれる。
最低オレンジの輝きがなければ、学園の入試さえも受けられない。
オレンジは魔法の才能があり、赤・水・緑・黒・白に輝けばその属性が特に優れている。聖女候補だと金色に輝く。
ありきたりな設定だけれど、それでも決める時はいろいろと悩んだんだよね?
水晶で測定は入試と各学年末の五回となっている。
「これに触ればいいですね」
「さよう。神経を水晶に集中させれば、より正確な数値が出てくる」
花音はまったく知らないそぶりを見せながら、おっかなびっくり水晶をさわり目を閉じる。
パッと水晶が金色に輝きだす。
綺麗な透き通った金色。
「さすがは聖女。ここまで美しい金色は見たことがない。能力カードは、やはり治癒系が極めて高い。他の魔法は標準のようだ。エミリー様は聖女候補なのに炎系も高い。レオ様は水・風・補助系が高い。さすが皇太子様と言ったところだろうか」
聞いてもないのに学園長は詳しく教えてくれ、能力ガードを花音に渡す。
知っている花音の反応は薄く、何か思う所があるのか熱心に能力カードを見ている。
「花音、どうしたの?」
「え、うん。私って本当に聖女なんだなって思ってね。いくらなんでも興味本位で聖女を召喚できるのかなって、今更疑問に思ったの」
「あまり考えたくないのですが、私と言う鍵を使えば気軽に召喚出来たりしませんか?」
冷静に考えた末の花音の疑問に、私なりの考えを言ってため息をつく。
もしこの考えが正しければ、聖女なんて呼びたい放題。そんなことになったら世界は大混乱。
へたしたら悪人に絶対狙われる案件だよね?
せっかくレオとの関係がなぜか修復されて婚約破棄フラグが折れたと思ったのに、新たな破滅フラグが立った?
「エミリー、顔が真っ青だぞ? 大丈夫か?」
「──駄目かも知れない」
親身になって心配してくれるレオに、私は頼りなく馬鹿正直に答えてしまう。
嘘でもいいから大丈夫だと言うべきことなんだろうけれど、新たな破滅フラグ(仮)のことを考えたら偽れなかった。
これでも結構動揺している。
「安心しろ。何があっても私がお前を護る」
「!!」
そんな弱々しい私に情でもわいたのか力強く抱き寄せ、髪を優しくなぜながら耳元で男らしい台詞を囁かれる。
心臓の鼓動が高鳴って、体中が熱くなっていく。
エミリーの意識が吹っ飛ぶ。
これもうエミリーは落ちたな。
私もこれにはちょっと落ちたかも?
二人してレオを好きになるのは良いことだとは思うけれども、そうなってくると最大の敵はシャーロット。彼女をなんとかしないとハッピーエンドは迎えられない。
「私も教授に頼み込んで同行する」
「ありがとうございます。頼りにしてます」
今の私は恋愛脳に犯されていたため断ることが出来ず、しかも笑顔で可愛らしい台詞を言ってしまう。
このシチュエーションは誰が見たって、美男美女のカップルラブシーン。実際微笑ましく見守られていた。
「悪役令嬢転生物あるあるで、逆ハーレムEDを目指してたりする?」
「するわけないじゃん。レオに関してはあるあるかも知れないけれど、他キャラとは今の所接点ないから」
自室に戻り花音と二人っきりになった途端、早速興味津々とばかりに聞いてくる。
それはここが乙女ゲームだから、リーダー同様恋愛は捨てきれない。恋愛なんてなくしたいと思っているのに、現状完全にはなくせていない状況。
そもそもよくある悪役令嬢転生物は、嫌われ者の悪役令嬢がなぜか全攻略キャラに好かれる超ご都合展開。
まぁ乙女ゲーム自体の主人公が、全攻略キャラに好れるから同じか。
でも現実は全攻略キャラに好まれる所か、未だに出会っていないキャラが数人いる。出会うつもりもないから、それでいい。
レオは素のエミリーが好きだったから好まれただけで、他はそれなりの好感度があったとしても恋愛までには発展しないだろう。
フランダー教授を落とす計画も、この一見でがた落ちなので白紙に戻そう。
「逆ハーレムは、所詮オタクの願望って奴か。なら朋はレオ狙いでOK?」
「うん、そうなるねだろう。シャーロットと揉めたくないんだけど」
シャーロットは怖いけれど、認めるしかない。
「その言い方だとシャーロットとは対立してるんだね?」
「うん。シャーロットもレオが本命だから、重婚するって言い出して以来悪化する一方。重婚反対派見たい」
察しの良い花音にありのままの現状を伝え、ため息と肩を大きく落とす。
シャーロットのことを考えると気が重くなる以上に、こんなことになって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
シャーロットは何も悪くない。ゲームだったらレオと様々な困難を乗り越えて、ハッピーエンドだったのにね。
「レオ以外に候補はいないの? この時期ならまだ変更可能だったよね?」
「そう言えばそうだったね。シャーロットが他の誰かと結ばれれば、問題解決なんだよね」
その発想はなく目からうろこで、花音の手を強く握りはしゃいでしまう。
レオとオーランド以外の誰かと結ばれればいいんだ。
レオ以外の相手であれば、聖女の肩書きがなくてもなんとかなるだろう。
「アハハ、よろしくお願いします」
学園長室は暖かく花音を迎え入れてくれ、やっぱりフランダー教授にはおかんぶりだった。
あそこまでやらかしたんだから無理もない。反省しているとは言えいろんな人から怒られないと、のど元過ぎれば熱さ忘れる可能性がある。同じ過ちをけしてしないように、抜けないぐらい釘を刺しといた方が良い。
「学園長、早速相談なのですが、花音さんは私と同室でもよろしいでしょうか?」
「私もエミリーさんと同室がいいです」
「おやもう二人は打ち明けたようだね。ではそうしてくれ。花音さんの素性は私の遠縁にしておけば、大丈夫だろう。取り敢えず最低限の物は、その箱に入っている」
「ありがとうございます。助かります」
学園長は微笑みそう言いながら、テーブルの上に置いてある大きめな箱を指を差す。
お礼を言い花音は箱を持とうとするけれど、見た目よりも重いのかなかなか持ち上がらず。
「花音、こう言うときは伸縮魔法を使うのです。こう言う風に」
パチン
箱を見つめ小さくするイメージをしながら、指を鳴らす。箱はたちまち手のひらサイズまで小さくなる。発動者によって伸縮サイズは異なる日用魔法。
「これが魔法? すごい。すごい」
「花音くんもこの程度なら、すぐに習得出来るはずだよ。聖女の魔力は偉大だからな。計測してみよう」
生魔法にキラキラと目を輝かせ声を弾ませる花音に、学園長は本棚から桐箱を取り出し中から水晶を出す。
水晶は、魔法測定器。
水晶に触れ集中すると魔力全般を測定してくれ、能力カードに数値化をしてくれる。
最低オレンジの輝きがなければ、学園の入試さえも受けられない。
オレンジは魔法の才能があり、赤・水・緑・黒・白に輝けばその属性が特に優れている。聖女候補だと金色に輝く。
ありきたりな設定だけれど、それでも決める時はいろいろと悩んだんだよね?
水晶で測定は入試と各学年末の五回となっている。
「これに触ればいいですね」
「さよう。神経を水晶に集中させれば、より正確な数値が出てくる」
花音はまったく知らないそぶりを見せながら、おっかなびっくり水晶をさわり目を閉じる。
パッと水晶が金色に輝きだす。
綺麗な透き通った金色。
「さすがは聖女。ここまで美しい金色は見たことがない。能力カードは、やはり治癒系が極めて高い。他の魔法は標準のようだ。エミリー様は聖女候補なのに炎系も高い。レオ様は水・風・補助系が高い。さすが皇太子様と言ったところだろうか」
聞いてもないのに学園長は詳しく教えてくれ、能力ガードを花音に渡す。
知っている花音の反応は薄く、何か思う所があるのか熱心に能力カードを見ている。
「花音、どうしたの?」
「え、うん。私って本当に聖女なんだなって思ってね。いくらなんでも興味本位で聖女を召喚できるのかなって、今更疑問に思ったの」
「あまり考えたくないのですが、私と言う鍵を使えば気軽に召喚出来たりしませんか?」
冷静に考えた末の花音の疑問に、私なりの考えを言ってため息をつく。
もしこの考えが正しければ、聖女なんて呼びたい放題。そんなことになったら世界は大混乱。
へたしたら悪人に絶対狙われる案件だよね?
せっかくレオとの関係がなぜか修復されて婚約破棄フラグが折れたと思ったのに、新たな破滅フラグが立った?
「エミリー、顔が真っ青だぞ? 大丈夫か?」
「──駄目かも知れない」
親身になって心配してくれるレオに、私は頼りなく馬鹿正直に答えてしまう。
嘘でもいいから大丈夫だと言うべきことなんだろうけれど、新たな破滅フラグ(仮)のことを考えたら偽れなかった。
これでも結構動揺している。
「安心しろ。何があっても私がお前を護る」
「!!」
そんな弱々しい私に情でもわいたのか力強く抱き寄せ、髪を優しくなぜながら耳元で男らしい台詞を囁かれる。
心臓の鼓動が高鳴って、体中が熱くなっていく。
エミリーの意識が吹っ飛ぶ。
これもうエミリーは落ちたな。
私もこれにはちょっと落ちたかも?
二人してレオを好きになるのは良いことだとは思うけれども、そうなってくると最大の敵はシャーロット。彼女をなんとかしないとハッピーエンドは迎えられない。
「私も教授に頼み込んで同行する」
「ありがとうございます。頼りにしてます」
今の私は恋愛脳に犯されていたため断ることが出来ず、しかも笑顔で可愛らしい台詞を言ってしまう。
このシチュエーションは誰が見たって、美男美女のカップルラブシーン。実際微笑ましく見守られていた。
「悪役令嬢転生物あるあるで、逆ハーレムEDを目指してたりする?」
「するわけないじゃん。レオに関してはあるあるかも知れないけれど、他キャラとは今の所接点ないから」
自室に戻り花音と二人っきりになった途端、早速興味津々とばかりに聞いてくる。
それはここが乙女ゲームだから、リーダー同様恋愛は捨てきれない。恋愛なんてなくしたいと思っているのに、現状完全にはなくせていない状況。
そもそもよくある悪役令嬢転生物は、嫌われ者の悪役令嬢がなぜか全攻略キャラに好かれる超ご都合展開。
まぁ乙女ゲーム自体の主人公が、全攻略キャラに好れるから同じか。
でも現実は全攻略キャラに好まれる所か、未だに出会っていないキャラが数人いる。出会うつもりもないから、それでいい。
レオは素のエミリーが好きだったから好まれただけで、他はそれなりの好感度があったとしても恋愛までには発展しないだろう。
フランダー教授を落とす計画も、この一見でがた落ちなので白紙に戻そう。
「逆ハーレムは、所詮オタクの願望って奴か。なら朋はレオ狙いでOK?」
「うん、そうなるねだろう。シャーロットと揉めたくないんだけど」
シャーロットは怖いけれど、認めるしかない。
「その言い方だとシャーロットとは対立してるんだね?」
「うん。シャーロットもレオが本命だから、重婚するって言い出して以来悪化する一方。重婚反対派見たい」
察しの良い花音にありのままの現状を伝え、ため息と肩を大きく落とす。
シャーロットのことを考えると気が重くなる以上に、こんなことになって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
シャーロットは何も悪くない。ゲームだったらレオと様々な困難を乗り越えて、ハッピーエンドだったのにね。
「レオ以外に候補はいないの? この時期ならまだ変更可能だったよね?」
「そう言えばそうだったね。シャーロットが他の誰かと結ばれれば、問題解決なんだよね」
その発想はなく目からうろこで、花音の手を強く握りはしゃいでしまう。
レオとオーランド以外の誰かと結ばれればいいんだ。
レオ以外の相手であれば、聖女の肩書きがなくてもなんとかなるだろう。
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