普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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5章 私が目指す聖女とは

100.星に願いを

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 夜食を終え自室に戻ろうとすると、太からさっきの続きを話したいと言われから自室で話すことに。
 もう公開告白系はこりごりだ。
 

「オレ星歌が好きなんだ。付き合って欲しい」
「はい、喜んで。よろしくお願いします」

 すごい今さら感があると思いながらも、やっぱり面と向かって言われるのは嬉しい。自然と笑顔が転び落ち二つ返事。

 私の片想いはようやく成就した。

「ありがとう。なら地球に戻ったらデートしよう。どこ行きたい?」
「デート? そうだよね。どこがいいだろう?」 

 想いが通じてそれで終わりではないことを気づかされる。
 恋人になったら何がしたいとか特に考えたことがなかったから、言われて目から鱗で今更ながらよく考えてみる。

 高校生のデートとは、どこに行くんだろう?
 遊園地?
 でも夏休みに陽と三人で行ったから、あえて二人で行かなくてもいいような?
 ゲーセン?
 元々二人で行く予定があったから、デートとは呼ばない気がする。
 
 あ!?

「満天の星空を眺めながら手を繋いで歩きたい」
「は、そんなんでいいのか? だったら早速夜の散歩に行くか?」

 前の願望をふっと思い出し頼むと太は拍子抜けしつつも、頷いてくれ手を差し伸べられる。




 今夜も夜空には満天の星と二つのメレが輝いていた。
 だんだんこの幻想的な夜空が普通になっているけれど、日本に戻ったら満天の星空はレアに戻るんだよね。
 そう思うと未練がちょっと残るかも?

「人間と魔族の和平会議にこぎつけたら、オレ達は地球に戻れるんだよな?」
「だと思うよ。その時はお母さんとチョピとガーロットも一緒に来ることになってる」
「へぇ~そりゃぁ楽しみだな」
「うん!!」

 少ししんみりと呟く太の問いに、私は明るく楽しみな未来を答える。
 そう言えば太には教えていなかったかも知れない。
 すると太の表情も明るくなり、私はますます嬉しくなり元気よく頷く。

「やっぱり星歌の笑顔は最高だな」
「え、いきなり何?」
「オレお前の笑顔がすげぇ好きなんだ。見ているだけで元気が湧いてくる」
「!!」

 くったくない笑顔で甘い台詞を耳元で囁かれた後、ギュッと抱きしめられる。あまりにも太らしくない行動にびっくりして、胸の鼓動が激しく高鳴り体温が急上昇。

 太ってそんなキャラだっけぇ?
 そう言えば私と違って恋愛経験がある上、師匠が龍くんだから二股は掛けないとしてもたらし?
 甘い台詞が次々と出てくるもの?

 太のことならなんでも知っていると思っていただけに、実はそうじゃないと知ってショックだった。

「星歌はこう言うの苦手か?」
「え、まぁいきなりでびっくりしただけ。恋人ってこれが普通なの?」
「普通って言うか女子はそう言うのが好きで、とにかくロマンティックなシチュエーションを演出すると喜んでくれた。でも気が抜けて素を見せていたら、幻滅され別れを切り出された」

 理由を話しているうちに、トラウマらしくシュンと小さくなる。

 今まで破局してもケロッとして見えたのは単なる強がりで、本当はダメージ受けていた。
 外見だけ好きになって、中身はお子様だから別れる。よく考えたら酷い話だ。
 そもそも太がお子様だってことは少し接点を持てば分かるはずなのに、何故彼女達は知ろうとしなかった?
 一目惚れですぐ告白しているのに、見た目と中身が違うからって振るなんてどうかしている。

「そうなんだ。でも私はありのままの太が好きだから、無理に背伸びしなくてもいいんだよ」
「本当か? 幻滅して離れて行かないか?」 
「もう八年も腐れ縁なんだから離れるわけないじゃん。太は外見イケメンでも中身は剣道大好きな悪餓鬼でしょ?」

 なんて言って太を元気づけたけれど、本当は私の知らない太を見るのが嫌なだけ。無理して演じてるって分かって、ホッとしている。

「……。ガキの頃から星歌は陽と同じぐらい大切で、何をするにも三人一緒だった。だからその関係を壊したくなくって、恋愛感情を封印していたのかも知れない」
「そうだね。私もそうだったんだと思う」

 私も太も鈍感な上に臆病の似た者同士。同じ悩みを抱えてきっかけ(洗脳)がなければ、私達の関係は今も友達以上恋人未満のまま。

 そう考えると結果オーライなんだろうか?
 なんて口に出して言ったら、人間性を疑われるから黙っていよう。

「オレ達同じ気持ちだったんだな。なんかそう思うとすげぇ嬉しい」

 気分は最高潮の中フッと我に返った瞬間、未だに私達は抱き合っていることに気づく。

 冷静になると恥ずかしい。

「少し歩こうか?」
「そそうだな」

 当たり障りのないこと切り出せば、頬を赤らませすぐに離され再び手をつなぐ。普通の手つなぎだったから、恋人つなぎに変えてみる。

「恋人になったけれど、しばらくは今まで通りでもいいよね」
「そうだな。焦ってもろくな結果は生まないし、オレはこうして星歌の笑顔が間近で見られるだけで幸せなんだ」
「私も同じだよ。太に私の背後を任せて良い?」
「おう、任せておけ。……星歌の聖剣があれば、オレは無敵になれる」

 太は胸を張り力強く頷き、いつものように調子に乗ってしまう。

 やっぱりこれが太の本心で少しは成長していると思ったんだけれど、こう言う所は何も変わっていない。
 
  確かに聖剣を使うことによって強くなるとは思うけれど、無敵になると言うのは虫が良すぎる。
 太が無敵だったら、パパと龍くんは最早神レベル?
 うん。あの二人は神レベルだね。
 でも万が一言葉の綾だって可能性もあるから、チャチャは入れずに嬉しく受け取っておこう。

「あ、流れ星」
「え、あ本当だ。願いごとしようぜ!!」
「うん」

 ここではそこまで珍しくない流れ星。今夜も次々に流れている。
 私も太も子供のようにはしゃぎ、願いごとに夢中となった。

 魔族と人間の和平会議が成功しますように。
 私も含めて、みんなが幸せでいられますように。

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