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六話
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「芽李ちゃん、剛君?」
玄関の方から物音がしたので、とっさに二人の名前を呼び確かめに行く。
浅居君は、言いにくいんだけどトイレに行っている。
しかしそこにはいたのは、見たことがない人種だった。
猫の鋭い瞳にドラキュラのような牙。耳はとがっていて肌の色はクリーム色。
あたし達地球人とは、大分異なっている。格好は全身は鎧を身に纏っていて、細長い剣を持っている。
ここの住人だろうか?
だとしたら、ヤバイかも知れない。だって、日本ならこれって不法侵入なんだよね。れっきとした犯罪。下手をすれば刑務所に入れられちゃう。
それならまだしも、この人戦闘準備に入っている気がする。
「ま、待って下さい。話せばわかります」
あたしは冷や汗をかきながら笑顔で会話を試みたが、言葉が通じないのか男(多分)は無言で剣を構える。
あたしは恐ろしさのあまり腰が抜けてしまい涙目でしゃがみ込んでしまった。今日のあたしってこんなのばっかりで、情けない役周りかも。
所詮異世界ってこんな物なの?
あたしが思い描いていた異世界とは違うの?
男は、剣を振り上げる。
椛ちゃん大ピンチ!
こんな所で人生終わりたくないよ。
そんなことを思っていると、突然あたしの前に人影が現れ男の剣を光っている刃で受け止める。
「浅居君?」
それはなんと浅居君だった。なんてタイミングがいいのだろう。
「お前、誰だ?」
浅居君は男にそう聞くが、男は答えようとしない。
「ここの住人じゃないことは、解ってるんだ。まさかお前がこんな事を」
勝手に話を進めるが、男の反応全くはない。
きっと芽李ちゃんの言った通り、言葉が通じないんだ。
そしてチャンバラごときが始まった。
二人は動きは早くて詳しくは説明は出来ないけど、信じられないことに男を浅居君が押しっていることだけは一目瞭然で分かった。
あたしの知る限りでは、浅居君の運動神経がいいなんて知りもしないし聞いたこともない。
体育の時間に見たって、悪くはないが良くもなかった。
男の腕が悪くないことは確かだ。
それなのになぜ?
あたしは、目を大きく見開きながらそんな二人を見ていると、
「Vos collègues effectués à quelque part.」
突然あたしが知らない言葉を言いながら、芽李ちゃんと剛君が現れた。
壁に追いやられた男は、一瞬芽李ちゃんの顔を見る。
言葉が通じたようだ。
「今ならお前も逃がしてやる。そいつは天才剣士なんだ。ここは大人しく言うことを聞いた方が身のためだ」
剛君のセリフを芽李ちゃんが通訳するかのように男に向かって言い捨てる。
理解したのか男は、悔しそうに浅居君を押しの逃げて行った。
意外に素直なんだな。それにしても、一体何がどうなっているの?
「緑河、大丈夫か? ごめんな、俺がついていながら」
いつも通りの優しい表情をした浅居君が、手を差し伸べる。あたしは手を取りその場に立ち上がった。
そんな様子を微笑みながら、芽李ちゃんは見ている。きっと良からぬことを考えてるに違いない。
「いいよ、助けてくれたから。それにしても凄いねびっくりしちゃった」
鼓動が浅居君に聞こえてしまうぐらいに、大きな音がしている。それに胸が熱い。
「椛知らないのか? 優は中学時代まで剣道界では世界的に有名だったんだよ。大会という大会は総ナメにした、天才少年剣士“平成の武蔵”という異名でな。今では伝説化しているけれどな」
当然そうに答える剛君。
もちろんそんなこと知るはずがない。
浅居君小説のヒーローをみたかった。
「知らない。だって浅居君高校時代剣道部じゃなかったし、体育も普通だったよ」
あたし一人が驚きながら、剛君に興味津々と尋ねる。
芽李ちゃんはあまり驚いていない。
きっと剛君からいろいろ聞いているのだろう。
だってあたしの知っている浅居君は、どう見たってお人好しの優しい何処にでもいそうな普通の人なんだもん。そんなに凄腕の剣士だったとしたら、普通なら剣道部に入るだろうし体育だって出来るはずだよね。
「それは、優が剣道より読書が好きだったからだよ。体育はオレも不思議に思うんだ。多分性格上の問題だとオレは思う」
簡単に答える剛君。その横で浅居君は、顔を少し赤く染め照れている。
なんだか言われてみると、とっても浅居君らしい理由だって思える。
「よせよ。そんな話」
「でも、俺の睨んだ通りそれが剣だったろう?」
自慢げに剛君が、さっきまで光の刃が出ていた柄を指さす。
「ああ、助かったよ。所で松田、今の言葉は一体?」
「フランス語よ。なんかこの世界フランス語が通じるみたい」
うまい具合に話をそらされた。
もっと詳しいこと聞きたかったのに、しょうがないな。後で剛君に詳しく聞こう。
「そうなんだ。よく分かったね」
「外であいつの仲間達がしゃべっているのを偶然聞いたのよ。あいつら俗に言う盗賊らしいわよ」
あっさりと芽李ちゃんは答えたけど、フランス語を知らないあたしには絶対に不可能だ。
しかもちゃんと話の内容が分かっている。
「ちなみに文字は、英語だからオレにも読めるぜ」
と剛君が付け足した。
そう言えば芽李ちゃんと同じ大学の学部に通っているって、剛君が言っていたから当然と言えば当然か。
あたしは英語が嫌いだし苦手だから読めないけどね。浅居君だってあたしよりは英語の成績は良かったが、あんな馬鹿高校の英語なんてたかがしれている。
でもこれで、言葉が通じない・文字が読めないと言う心配はなくなった。
短い時間のうちにいろんな事件が起こったけど、同じぐらいこの世界のことが分かった気がする。
この調子で全てがうまくいくといいな。
なんて単純に思ったあたしであった。
フランス語については、無料翻訳サイトなので間違っていると思います。
玄関の方から物音がしたので、とっさに二人の名前を呼び確かめに行く。
浅居君は、言いにくいんだけどトイレに行っている。
しかしそこにはいたのは、見たことがない人種だった。
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あたし達地球人とは、大分異なっている。格好は全身は鎧を身に纏っていて、細長い剣を持っている。
ここの住人だろうか?
だとしたら、ヤバイかも知れない。だって、日本ならこれって不法侵入なんだよね。れっきとした犯罪。下手をすれば刑務所に入れられちゃう。
それならまだしも、この人戦闘準備に入っている気がする。
「ま、待って下さい。話せばわかります」
あたしは冷や汗をかきながら笑顔で会話を試みたが、言葉が通じないのか男(多分)は無言で剣を構える。
あたしは恐ろしさのあまり腰が抜けてしまい涙目でしゃがみ込んでしまった。今日のあたしってこんなのばっかりで、情けない役周りかも。
所詮異世界ってこんな物なの?
あたしが思い描いていた異世界とは違うの?
男は、剣を振り上げる。
椛ちゃん大ピンチ!
こんな所で人生終わりたくないよ。
そんなことを思っていると、突然あたしの前に人影が現れ男の剣を光っている刃で受け止める。
「浅居君?」
それはなんと浅居君だった。なんてタイミングがいいのだろう。
「お前、誰だ?」
浅居君は男にそう聞くが、男は答えようとしない。
「ここの住人じゃないことは、解ってるんだ。まさかお前がこんな事を」
勝手に話を進めるが、男の反応全くはない。
きっと芽李ちゃんの言った通り、言葉が通じないんだ。
そしてチャンバラごときが始まった。
二人は動きは早くて詳しくは説明は出来ないけど、信じられないことに男を浅居君が押しっていることだけは一目瞭然で分かった。
あたしの知る限りでは、浅居君の運動神経がいいなんて知りもしないし聞いたこともない。
体育の時間に見たって、悪くはないが良くもなかった。
男の腕が悪くないことは確かだ。
それなのになぜ?
あたしは、目を大きく見開きながらそんな二人を見ていると、
「Vos collègues effectués à quelque part.」
突然あたしが知らない言葉を言いながら、芽李ちゃんと剛君が現れた。
壁に追いやられた男は、一瞬芽李ちゃんの顔を見る。
言葉が通じたようだ。
「今ならお前も逃がしてやる。そいつは天才剣士なんだ。ここは大人しく言うことを聞いた方が身のためだ」
剛君のセリフを芽李ちゃんが通訳するかのように男に向かって言い捨てる。
理解したのか男は、悔しそうに浅居君を押しの逃げて行った。
意外に素直なんだな。それにしても、一体何がどうなっているの?
「緑河、大丈夫か? ごめんな、俺がついていながら」
いつも通りの優しい表情をした浅居君が、手を差し伸べる。あたしは手を取りその場に立ち上がった。
そんな様子を微笑みながら、芽李ちゃんは見ている。きっと良からぬことを考えてるに違いない。
「いいよ、助けてくれたから。それにしても凄いねびっくりしちゃった」
鼓動が浅居君に聞こえてしまうぐらいに、大きな音がしている。それに胸が熱い。
「椛知らないのか? 優は中学時代まで剣道界では世界的に有名だったんだよ。大会という大会は総ナメにした、天才少年剣士“平成の武蔵”という異名でな。今では伝説化しているけれどな」
当然そうに答える剛君。
もちろんそんなこと知るはずがない。
浅居君小説のヒーローをみたかった。
「知らない。だって浅居君高校時代剣道部じゃなかったし、体育も普通だったよ」
あたし一人が驚きながら、剛君に興味津々と尋ねる。
芽李ちゃんはあまり驚いていない。
きっと剛君からいろいろ聞いているのだろう。
だってあたしの知っている浅居君は、どう見たってお人好しの優しい何処にでもいそうな普通の人なんだもん。そんなに凄腕の剣士だったとしたら、普通なら剣道部に入るだろうし体育だって出来るはずだよね。
「それは、優が剣道より読書が好きだったからだよ。体育はオレも不思議に思うんだ。多分性格上の問題だとオレは思う」
簡単に答える剛君。その横で浅居君は、顔を少し赤く染め照れている。
なんだか言われてみると、とっても浅居君らしい理由だって思える。
「よせよ。そんな話」
「でも、俺の睨んだ通りそれが剣だったろう?」
自慢げに剛君が、さっきまで光の刃が出ていた柄を指さす。
「ああ、助かったよ。所で松田、今の言葉は一体?」
「フランス語よ。なんかこの世界フランス語が通じるみたい」
うまい具合に話をそらされた。
もっと詳しいこと聞きたかったのに、しょうがないな。後で剛君に詳しく聞こう。
「そうなんだ。よく分かったね」
「外であいつの仲間達がしゃべっているのを偶然聞いたのよ。あいつら俗に言う盗賊らしいわよ」
あっさりと芽李ちゃんは答えたけど、フランス語を知らないあたしには絶対に不可能だ。
しかもちゃんと話の内容が分かっている。
「ちなみに文字は、英語だからオレにも読めるぜ」
と剛君が付け足した。
そう言えば芽李ちゃんと同じ大学の学部に通っているって、剛君が言っていたから当然と言えば当然か。
あたしは英語が嫌いだし苦手だから読めないけどね。浅居君だってあたしよりは英語の成績は良かったが、あんな馬鹿高校の英語なんてたかがしれている。
でもこれで、言葉が通じない・文字が読めないと言う心配はなくなった。
短い時間のうちにいろんな事件が起こったけど、同じぐらいこの世界のことが分かった気がする。
この調子で全てがうまくいくといいな。
なんて単純に思ったあたしであった。
フランス語については、無料翻訳サイトなので間違っていると思います。
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