巻き込まないで下さい!!オカルト令嬢の婚約破棄騒動

ロク

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9 死神VSヴィヴィ

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 誰もが身動きもせず、静かにヴィヴィアンの一挙手一投足を見守っている。

「帰っていただくには供物が必要。この会の主催者はどなた?供物はご用意なさってるのかしら?」

「あ、の、鼠を用意してます」

 か細い女性の声が静かな闇の中で響いた。

「そう。それはどこに?」

「あ、あそこのテーブルに」

「死神相手に、小さな命で上手くいくかしら?」

 ヴィヴィアンは女性の指差す方へ行き、鼠の入った鼠取りの籠を手に持つと、文字盤があるテーブルの上にそれを置いた。そして数歩下がって、死神と対峙した。
 
「もう一度お願いしますわ。どうぞお帰りくださいな。供物は鼠の命。いかがかしら?」

「た り ぬ」

「やはり足りませんか。仕方がないですね。どなたかナイフをお持ちの方はいらっしゃいませんか?」

「あの、私が…でも何に…」

 女性が一人、震える手でナイフを差し出した。

「ありがとうございます」

 ヴィヴィアンは結えていた髪を解いて一房手に取ると、一気に切った。そしてそれを籠の横に置いた。

「私の生命力を少し差し上げますわ。では、あちらからお帰りになって!」

 ヴィヴィアンは入ってきた時に開いたままにしておいた扉を指した。

 死神は一際大きく揺れたかと思うと、手にしていた大鎌を水平に薙ぎ払った。その途端鼠の体が光だし、次の瞬間、目が開けていられない程の光が部屋中に飛び散った。そして鼠は動きを止め、籠の中でパタンと倒れた。金髪は輝きを失い白く色を変えた。

 死神はスーッと開かれた扉をくぐり消えた。その場にいた霊たちも引っ張られるように、次々と扉をくぐって出て行った。

 皆放心したようにその場に座り込み、死神が出て行った扉を呆然と眺めていた。
 


「と、いうことがあったんです」

「そ、そんな危ない所になんで入ったんだ?巻き込まれたらどうするんだ!」

「フフ、心配してくれてありがとうございます。でも私は大丈夫です。なんでかわからないんですが危ない目に遭ったことはないですから」

「いつもそうと限らないだろ。これからは危険なことには首を突っ込まないでくれ!」

「ええ、善処しますわ。それでね、死神が去った後、私も急いでその場を離れたんです。扉を出ようとした時に少し振り返ったんですけど、その瞬間パーッと光が差したんですの。雨雲が切れて日が出ただけだったのにタイミングが良かったんですね。そのせいで女神なんて呼ばれてるんですのよ!恥ずかしい……。でも逆光で顔は見えなかったはずなのに、マリア様もサラ様も、なぜ私だってわかったのかしら?」

「それはわからないけれど、どうしてそこから婚約破棄に繋がるんだ?」

「それはわからないわ。でも、その時のメンバーが、婚約破棄してるみたいなんですの」

「はあ、もしかしてと思うけど、あれだな?いや、もしかしなくてもきっとあれだ!『吊橋効果』っていう、あれじゃないか?」

「まああ、『吊橋効果』ですか?そうかもしれないわ。だって、とっても怖かったんですもの。それはもう史上最悪なくらいに。だったら極端に走っても仕方がない、ですよね?」

「仕方がないかもしれないが。とにかく、誰に迫られても勝手に返事をしてはいけないよ。必ず私に相談してくれ。いいね」

「ええ、わかりましたわ」

「愛してるよ、ヴィヴィ。初めて会った時からずっと。誰よりも。だからお願いだ、私から離れないで」

 アスベルは思い詰めた様子でヴィヴィアンを見つめた。



 
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