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18 囚われた霊の解放
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机上に置いたランタンの火が、心許なく揺らめいた。かなりの時間が経ったのだろう。ヴィヴィアンは深いため息を吐いて、文字盤から目を離した。
「そろそろ帰らないといけませんね」
ヴィヴィアンの言葉に一同は深い夢から覚めたような気がした。アメリアの話は思った以上に長く複雑で、夢うつつのうちに、まるで自身が体験してきたようだった。
「アメリア、最後に言いたいことはありますか?」
「はい」
そうしてアメリアは、文字盤を処分して欲しいこと。二度と交霊会をしないで欲しいこと。そして、テアに会って謝りたいと話した。
「ええ、お約束しますわ。私が文字盤を処分します。そしてテアもお呼びしますわ」
ヴィヴィアンは司書室の扉を開け、さらに司書室に近い図書館の窓を開けた。外から湿った風が吹き込んだ。
そして静かな声で室内に向かって呼びかけた。
「テア、いらっしゃるのでしょう?テアに会いたい方がいるんですの。こちらにいらっしゃって下さいな」
そしてヴィヴィアンは司書室に戻った。
スーッと文字盤の側にもう一体の女生徒の霊が現れた。ヴィヴィアンは彼女に話しかけた。
「テアですね」
コインが「はい」の文字をなぞった。文字盤の横に立つのは穏やかな表情をした、三つ編み姿の女生徒だった。
アメリアはテアの手を取って涙を流しながら揺らめいている。テアも嬉しそうにゆらゆらと揺れた。
テアはアメリアを恨んですらいなかった。それどころか心配していたのだろう。共に相手を気遣う優しさが二人からは滲み出ていた。二人は学生の時そのままに手を取り、そこから一つに溶けていくように、ゆらゆらと嬉しげに揺れていた。
「良かった。アメリア、テア、どうぞ自由になって下さい」
ヴィヴィアンの言葉に、二人は弾けたように一瞬広がり、手を繋いだまま楽しそうにゆらゆらと揺れた。そうしてゆらゆらと広がったり縮んだりしながら、窓から暗くなった空へと出て行った。
「ふう、疲れた」
ヴィヴィアンは長時間神経を集中させたことで、かなり体力を使ってしまった。霊が司書室から出た瞬間グラリとからだが傾いだ。慌ててクロードがヴィヴィアンを支える。
「ヴィヴィアン、大丈夫ですか?私が馬車までお運びしましょう。さあ、掴まってください」
「いや、俺が運ぶ!俺の方が力があるからな」
「何を言ってるんですか、カイザー。私が運ぶのに決まってるでしょう。デューク、ヴィヴィアンは私の婚約者ですよ。その手を離して下さい」
「仕方がないな、今日は君に譲るよ。では私は文字盤を運ぶとしよう」
「リシュルド、疲れたら俺が代わるから声をかけてくれ」
ウォルフがアスベルに言うが、そんな非力ではないから大丈夫ですよと、ヴィヴィアンをそっと抱き上げた。
ヴィヴィアンはよほど疲れたのか、大人しくアスベルの腕の中で目を瞑っている。
クロードとウォルフは悔しそうにアスベルを見ていたが、クロードが消えかけたランタンを持って足元を照らした。
「ヴィヴィが怪我をしてはいけませんからね」
「あ、お前まで愛称で呼ぶなんてダメだ!」
「ヴィヴィからの許可は先程頂きましたよ」
「くそっ!ヴィヴィの優しさに漬け込みやがって!」
「アスベル、ヴィヴィが起きる。静かにしろ」
ウォルフの言葉に、アスベルは顰めっ面をして黙った。
その日はかなり遅くなったので、そのまま別れてそれぞれの家に帰った。
「そろそろ帰らないといけませんね」
ヴィヴィアンの言葉に一同は深い夢から覚めたような気がした。アメリアの話は思った以上に長く複雑で、夢うつつのうちに、まるで自身が体験してきたようだった。
「アメリア、最後に言いたいことはありますか?」
「はい」
そうしてアメリアは、文字盤を処分して欲しいこと。二度と交霊会をしないで欲しいこと。そして、テアに会って謝りたいと話した。
「ええ、お約束しますわ。私が文字盤を処分します。そしてテアもお呼びしますわ」
ヴィヴィアンは司書室の扉を開け、さらに司書室に近い図書館の窓を開けた。外から湿った風が吹き込んだ。
そして静かな声で室内に向かって呼びかけた。
「テア、いらっしゃるのでしょう?テアに会いたい方がいるんですの。こちらにいらっしゃって下さいな」
そしてヴィヴィアンは司書室に戻った。
スーッと文字盤の側にもう一体の女生徒の霊が現れた。ヴィヴィアンは彼女に話しかけた。
「テアですね」
コインが「はい」の文字をなぞった。文字盤の横に立つのは穏やかな表情をした、三つ編み姿の女生徒だった。
アメリアはテアの手を取って涙を流しながら揺らめいている。テアも嬉しそうにゆらゆらと揺れた。
テアはアメリアを恨んですらいなかった。それどころか心配していたのだろう。共に相手を気遣う優しさが二人からは滲み出ていた。二人は学生の時そのままに手を取り、そこから一つに溶けていくように、ゆらゆらと嬉しげに揺れていた。
「良かった。アメリア、テア、どうぞ自由になって下さい」
ヴィヴィアンの言葉に、二人は弾けたように一瞬広がり、手を繋いだまま楽しそうにゆらゆらと揺れた。そうしてゆらゆらと広がったり縮んだりしながら、窓から暗くなった空へと出て行った。
「ふう、疲れた」
ヴィヴィアンは長時間神経を集中させたことで、かなり体力を使ってしまった。霊が司書室から出た瞬間グラリとからだが傾いだ。慌ててクロードがヴィヴィアンを支える。
「ヴィヴィアン、大丈夫ですか?私が馬車までお運びしましょう。さあ、掴まってください」
「いや、俺が運ぶ!俺の方が力があるからな」
「何を言ってるんですか、カイザー。私が運ぶのに決まってるでしょう。デューク、ヴィヴィアンは私の婚約者ですよ。その手を離して下さい」
「仕方がないな、今日は君に譲るよ。では私は文字盤を運ぶとしよう」
「リシュルド、疲れたら俺が代わるから声をかけてくれ」
ウォルフがアスベルに言うが、そんな非力ではないから大丈夫ですよと、ヴィヴィアンをそっと抱き上げた。
ヴィヴィアンはよほど疲れたのか、大人しくアスベルの腕の中で目を瞑っている。
クロードとウォルフは悔しそうにアスベルを見ていたが、クロードが消えかけたランタンを持って足元を照らした。
「ヴィヴィが怪我をしてはいけませんからね」
「あ、お前まで愛称で呼ぶなんてダメだ!」
「ヴィヴィからの許可は先程頂きましたよ」
「くそっ!ヴィヴィの優しさに漬け込みやがって!」
「アスベル、ヴィヴィが起きる。静かにしろ」
ウォルフの言葉に、アスベルは顰めっ面をして黙った。
その日はかなり遅くなったので、そのまま別れてそれぞれの家に帰った。
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