巻き込まないで下さい!!オカルト令嬢の婚約破棄騒動

ロク

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21 リシュルド家の秘密

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「もう我慢できない!あんな無礼な奴らと付き合うのはやめてくれ!よりによって私の目の前でプロポーズをするなんて!どこまで私を侮辱すれば気が済むんだ!」

「落ち着いて下さいませ。揶揄からかわれているだけですわ」

「愛してるよ、ヴィヴィ。貴女だけが、私をこんな情けない馬鹿な男にしてしまうんだ」

 ヴィヴィアンは何度も囁かれている言葉だけれど、アスベルの口から紡がれると嬉しくて、その度に頰が赤く染まり、ドキドキと胸が高鳴るのを止められない。

「私もアスベル様をお慕いしていますわ」

「私だけかい?」

「ええ、もちろんです」

 アスベルは感極まって目を潤ませ、ヴィヴィアンの手にキスをした。そのまま横に座り、額に、こめかみに、頰にキスを落としていく。
 ヴィヴィアンは真っ赤になりながらも、その一つ一つを享受した。

「愛してるよ、ヴィヴィ」

 鼻先が触れ合う程の近さでささやくと、最後にそっと唇に触れた。

 甘い時間はあっという間に過ぎ、馬車はリシュルド家に着いた。アスベルは遠慮がちに舌打ちしながら馬車を降り、ヴィヴィアンをエスコートして屋敷へと向かった。


 ヴィヴィアンが屋敷に足を踏み入れると、暖かい空気が頰を撫でた。
 アスベルはテラスのある小部屋にヴィヴィアンを案内し、お茶の用意を頼むために部屋を出て行った。

 テラスの扉を開けると、ふわりと花の香りが室内に入ってくる。どこの屋敷の庭園も、色んな花が咲き誇っていて美しい景色が広がっている。

「ああ、気持ちのいい風!!」

 ヴィヴィアンが軽く伸びをすると、テラスのテーブルに置いた文字盤がカタカタと音を立てた。
 慌ててコインを置くと、スーッと文字をなぞり始めた。

「ご機嫌よう、オスカー様。どうかなさったの?」

「vivi」

 ヴィヴィアンは文字盤のコインに手を乗せている男性を見た。精悍な顔立ちの美丈夫で、目元や鼻筋など、どことなくアスベルに似ている。ヴィヴィアンが婚約の顔合わせで、初めてこの屋敷に来た時からの付き合いだ。

 オスカーは初めて会った時から、ヴィヴィアンが屋敷に来ると、誰よりも先に迎えてくれ、屋敷にいる間は危険から守るようにピッタリと寄り添い、常に会えた喜びを示してくれていた。

 オスカーという名は屋敷に飾られている肖像画で知った。今から四十年程前に若くして亡くなった、アスベルのご先祖様だ。確か戦争に巻き込まれて亡くなったと聞いた。
 
「またオスカー殿が来てるのかい?」

 アスベルは少し嫌そうな顔をして、ワゴンを押しながら入ってきた。ワゴンにはお茶の用意がされている。ヴィヴィアンも手伝いながら、二人でテーブルにセッティングした。
 
「ええ。今日は文字盤でお話ししてるのよ」

 
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