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22 オスカー・リシュルド
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オスカーはそわそわと落ち着かなく文字盤の周りでゆらゆらと揺らめいている。
ヴィヴィアンはそれぞれのカップにお茶を注ぐと、一口飲んだ。そしてオスカーににっこりと笑いかけた。
「オスカー様とお話ができて嬉しいですわ。もっと早く文字盤を使えば良かったです。ねえ、オスカー様、どんなお話を聞かせて下さるの?」
オスカーが話し始めたのは、驚くことに、この文字盤についてだった。
「この文字盤で交霊すれば、あの死神が召喚される確率が高い。なぜならこの文字盤には、グレースと、あの恐ろしい死神の痕跡が残っているのだから」
オスカーの話では、この文字盤は、オスカーが学園の三年生だった時に開催された交霊会で使われたものだった。
主催者は同学年の王女殿下で、参加者は学園内の高位貴族を中心としたカップルだった。オスカーにも招待状が届き、婚約者のグレースと一緒に参加したのだ。
交霊術を始めようという時に、誰かが死神を呼んでみようと言い出した。今になっては誰が言い出したのかも忘れてしまったが、皆面白がって賛成した。
図書館のカーテンを引いて室内を暗くし、蝋燭に火を灯しこの文字盤を置いた。
テーブルを囲むように皆で手を繋いで輪になり、王女殿下の呼びかけに唱和した。
始めは何事も起きなかったが、何度目かの呼びかけに、文字盤の上に黒い靄が集まりだした。
靄は黒い塊になり、それはだんだんと大きく膨れ上がり、ゆらゆらと文字盤の上で揺らめいた。
名前を聞くと「しにがみ」だと答えた。死神を呼ぶことに成功したんだと、歪んだ喜びがその場を支配した。そして自分達の力を過信した。死神を御すことが出来ると思ったのだ。
王女殿下が質問をし、文字盤のコインが答えをなぞる。それを何度か繰り返して、交霊術を終えようとした時に悲劇が起こった。
王女殿下の「お帰り下さい」の呼びかけに、死神は否と答えた。文字盤の上の黒い塊が羽を広げるように大きく伸び上がり、ゆらゆらと揺れては小さくなる。その度に室内にラップ音が響き、ポルターガイストが起きた。
図書館内は酷い有様だった。女生徒の何人かは悲鳴を上げて倒れ、男生徒も帯電しているようなピリピリとした空気の中で、感電したように身動きが取れなくなった。実際に髪が逆立つものもいた。まるで喜劇を見ているようだった。
そして私も動けなくなったうちの一人だった。
黒い塊が手を伸ばすように、黒い靄が私の方に伸びてきた。もう終わりだと思った。このままここで死んでしまうのだと。その時、私の婚約者のグレースが動いた。
私の前に身を投げ出したのだ。
黒い靄が触れた途端、眩い光が彼女の体から迸った。目が開けていられないくらいの光量だった。皆、時が止まったようにその場に立ち尽くした。
光が収まった後、最初に動いたのは王女殿下だった。
私は、私の足元で倒れている彼女を、ただ呆然と見下ろしていただけだった。王女殿下はグレースの上半身を抱えて座り込んだ。そして泣き出しそうな顔で私を見上げ、息をしていないと言ったのだ。
私は夢であって欲しいと思った。
ヴィヴィアンはそれぞれのカップにお茶を注ぐと、一口飲んだ。そしてオスカーににっこりと笑いかけた。
「オスカー様とお話ができて嬉しいですわ。もっと早く文字盤を使えば良かったです。ねえ、オスカー様、どんなお話を聞かせて下さるの?」
オスカーが話し始めたのは、驚くことに、この文字盤についてだった。
「この文字盤で交霊すれば、あの死神が召喚される確率が高い。なぜならこの文字盤には、グレースと、あの恐ろしい死神の痕跡が残っているのだから」
オスカーの話では、この文字盤は、オスカーが学園の三年生だった時に開催された交霊会で使われたものだった。
主催者は同学年の王女殿下で、参加者は学園内の高位貴族を中心としたカップルだった。オスカーにも招待状が届き、婚約者のグレースと一緒に参加したのだ。
交霊術を始めようという時に、誰かが死神を呼んでみようと言い出した。今になっては誰が言い出したのかも忘れてしまったが、皆面白がって賛成した。
図書館のカーテンを引いて室内を暗くし、蝋燭に火を灯しこの文字盤を置いた。
テーブルを囲むように皆で手を繋いで輪になり、王女殿下の呼びかけに唱和した。
始めは何事も起きなかったが、何度目かの呼びかけに、文字盤の上に黒い靄が集まりだした。
靄は黒い塊になり、それはだんだんと大きく膨れ上がり、ゆらゆらと文字盤の上で揺らめいた。
名前を聞くと「しにがみ」だと答えた。死神を呼ぶことに成功したんだと、歪んだ喜びがその場を支配した。そして自分達の力を過信した。死神を御すことが出来ると思ったのだ。
王女殿下が質問をし、文字盤のコインが答えをなぞる。それを何度か繰り返して、交霊術を終えようとした時に悲劇が起こった。
王女殿下の「お帰り下さい」の呼びかけに、死神は否と答えた。文字盤の上の黒い塊が羽を広げるように大きく伸び上がり、ゆらゆらと揺れては小さくなる。その度に室内にラップ音が響き、ポルターガイストが起きた。
図書館内は酷い有様だった。女生徒の何人かは悲鳴を上げて倒れ、男生徒も帯電しているようなピリピリとした空気の中で、感電したように身動きが取れなくなった。実際に髪が逆立つものもいた。まるで喜劇を見ているようだった。
そして私も動けなくなったうちの一人だった。
黒い塊が手を伸ばすように、黒い靄が私の方に伸びてきた。もう終わりだと思った。このままここで死んでしまうのだと。その時、私の婚約者のグレースが動いた。
私の前に身を投げ出したのだ。
黒い靄が触れた途端、眩い光が彼女の体から迸った。目が開けていられないくらいの光量だった。皆、時が止まったようにその場に立ち尽くした。
光が収まった後、最初に動いたのは王女殿下だった。
私は、私の足元で倒れている彼女を、ただ呆然と見下ろしていただけだった。王女殿下はグレースの上半身を抱えて座り込んだ。そして泣き出しそうな顔で私を見上げ、息をしていないと言ったのだ。
私は夢であって欲しいと思った。
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