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第1章・遭遇編
白川郷編・災厄の化身(後編)
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自衛団に負傷者が出始める中、上空からヘリの爆音が聞こえて来た。
「ツクツクボウシからヒグラシへ、目標を確認、降下用意」
上空に現れたのはコードネームでツクツクボウシと呼ばれるUH-1J(映像伝送装置と怪獣観測用の装置、そしてドアガンを搭載)、クマゼミのCH-47JA(重機関銃を装備したガンシップ仕様)、そしてヒグラシと呼ばれる軽装備の戦闘部隊とアブラゼミの支援部隊で構成された先遣隊だった。
先遣隊は日本各地に散発的かつ、突如として出現する怪獣に対処するために創設された部隊で、47の各都道府県に必ず5部隊以上(但し規模は様々)設置されている。彼らはその中の第34先遣連隊・第123先遣隊である。
ヒグラシ部隊は降下後、アブラゼミよりクマゼミで運搬されていた重装備を受け取ると、戦闘に参加した。
一方、ツクツクボウシからの映像を受け取っていた総理達は・・・。
「まずいぞ、ニェコー星の方も居るのに・・・それにもし奴が御母衣(みぼろ)ダムを破壊したら大変だ!空自の基地には爆装した航空機も待機していた筈だろ!それはどうした?!」
「総理、それが・・・」
二ノ瀬防衛大臣によれば、対地装備でスクランブル待機していた機は別目標に対し既に発進しており、対地攻撃可能な機体は、海面へ落ちた飛行型怪獣の残党処理のために出払っているとの事だ。
「地上やヘリだと時間が掛かる・・・今すぐに向かえる機体は無いのか!」
「・・・確か、岐阜基地のF-2が今日、『新型対怪獣用貫通爆弾』の量産型を試験するために準備中だったはずですが・・・」
新型対怪獣用貫通爆弾・・・怪獣の強固な外皮を貫通するために開発された爆弾で、小型ながらも貫通力は大型貫通爆弾すら凌駕する。しかし小型故に爆薬搭載量は少なく、あくまで外皮に守られた重要器官を破壊する事が目的である。また、特殊な素材を用いているため量産が難しく、非常に高コスト。
「よし!全責任は私が取るから、今すぐに怪獣攻撃へ向かわせろ!」
総理の指示は防衛大臣によりすぐさま岐阜基地へ通達され、飛行開発実験団の任務内容が変更された。爆弾を搭載していたのはF-2B試作2号機で4発搭載、同試作初号機が観測役として同行していた。
パイロット達は離陸直後だった事もあり、突然の任務変更に驚いたが、直ぐに気持ちを切り替え、陸上部隊支援のために白川郷上空へ向け加速した。
しばらくしてF-2が戦闘地域上空へ到着し、2号機は爆弾を2発投下すると急加速する・・・これは怪獣が対空攻撃能力を持っていた場合、戦闘機であってもたやすく撃ち落とされてしまう可能性があるからだ。
しかし今回、怪獣からの反撃は無く、むしろ爆弾を受けて瀕死となっていたため、2号機は再度爆弾を投下し、その息の根を止めた・・・。
地上部隊は歓声を上げたが、それだけで終わらないのが怪獣災害だ。分裂した怪獣はまだ活動を続けており、さらに死亡した本体からは有毒ガスが噴き出したのだ。
「?!大変です!あの死骸から出ているのは火山性ガスと同様の、硫化水素などです!」
アブラゼミの隊員は計測器を見てそう言い、それを聞いた自衛官達は、状況ガス!と、叫び、元から着用していたアブラゼミ部隊を除き、直ぐに防護マスクを着用した。しかし、自衛団や警察はそんな装備など携行していないため、自衛隊は現場からの離脱を指示、大半はヘリに乗って離脱した・・・。
それから1時間後、応援の部隊も到着し分裂した個体はほぼ一掃された。ガスの濃度も低下したため、警備は警察と自衛団が担当した。
白川郷には、伝説のひとつで一夜にして滅んだ帰雲城と城下町(推定500名が死亡・但しこれは実話)、そして地震が発生する前に死に脈から異変を感じ取った名医の伝説、そして黄金の白山(はくさん)様伝説などがあり、白江は今回出現した怪獣がこれらを引き起こしたのでは?と、推測した。
分裂体鎮圧後、自衛隊が調査した際に未知の反応を検知、反応はあの旅行者4人組が持ち去った金塊から発せられていた・・・警察の事情聴取の結果、金塊について教えた老婆が「容疑者」として浮上したのだが、地元住民への聞き取り調査で驚くべきことが判明する、この地域に該当する老婆は存在しないと住民達が話したためだ。白川郷では地域の住人同士が親戚関係である場合もあり、大抵の人間は把握されている筈なのだが、その老婆だけ一切情報が出なかったのだ。
当初はこの老婆がテロリストではないかと睨んでいた警察と自衛隊だが、後に怪獣があらかじめ分裂させた「目覚まし時計」の様な役割を持つ存在ではないかとの仮説が立てられた。もっともその場合、この怪獣は永い眠りについていたために、時代の変化に対応できなかった事になるが・・・。
その後の研究で、この怪獣が生命エネルギーを吸い取って生きていた事が判明し、過去にも同地域で災害を誘発させ、生物を大量死に追いやっていた可能性が浮上した。そのため今回の出現理由は、観光客の生命エネルギーを狙ったものとされた。その特徴的な外見と特性により、怪獣は「デスゴールド」と名付けられた。
「ツクツクボウシからヒグラシへ、目標を確認、降下用意」
上空に現れたのはコードネームでツクツクボウシと呼ばれるUH-1J(映像伝送装置と怪獣観測用の装置、そしてドアガンを搭載)、クマゼミのCH-47JA(重機関銃を装備したガンシップ仕様)、そしてヒグラシと呼ばれる軽装備の戦闘部隊とアブラゼミの支援部隊で構成された先遣隊だった。
先遣隊は日本各地に散発的かつ、突如として出現する怪獣に対処するために創設された部隊で、47の各都道府県に必ず5部隊以上(但し規模は様々)設置されている。彼らはその中の第34先遣連隊・第123先遣隊である。
ヒグラシ部隊は降下後、アブラゼミよりクマゼミで運搬されていた重装備を受け取ると、戦闘に参加した。
一方、ツクツクボウシからの映像を受け取っていた総理達は・・・。
「まずいぞ、ニェコー星の方も居るのに・・・それにもし奴が御母衣(みぼろ)ダムを破壊したら大変だ!空自の基地には爆装した航空機も待機していた筈だろ!それはどうした?!」
「総理、それが・・・」
二ノ瀬防衛大臣によれば、対地装備でスクランブル待機していた機は別目標に対し既に発進しており、対地攻撃可能な機体は、海面へ落ちた飛行型怪獣の残党処理のために出払っているとの事だ。
「地上やヘリだと時間が掛かる・・・今すぐに向かえる機体は無いのか!」
「・・・確か、岐阜基地のF-2が今日、『新型対怪獣用貫通爆弾』の量産型を試験するために準備中だったはずですが・・・」
新型対怪獣用貫通爆弾・・・怪獣の強固な外皮を貫通するために開発された爆弾で、小型ながらも貫通力は大型貫通爆弾すら凌駕する。しかし小型故に爆薬搭載量は少なく、あくまで外皮に守られた重要器官を破壊する事が目的である。また、特殊な素材を用いているため量産が難しく、非常に高コスト。
「よし!全責任は私が取るから、今すぐに怪獣攻撃へ向かわせろ!」
総理の指示は防衛大臣によりすぐさま岐阜基地へ通達され、飛行開発実験団の任務内容が変更された。爆弾を搭載していたのはF-2B試作2号機で4発搭載、同試作初号機が観測役として同行していた。
パイロット達は離陸直後だった事もあり、突然の任務変更に驚いたが、直ぐに気持ちを切り替え、陸上部隊支援のために白川郷上空へ向け加速した。
しばらくしてF-2が戦闘地域上空へ到着し、2号機は爆弾を2発投下すると急加速する・・・これは怪獣が対空攻撃能力を持っていた場合、戦闘機であってもたやすく撃ち落とされてしまう可能性があるからだ。
しかし今回、怪獣からの反撃は無く、むしろ爆弾を受けて瀕死となっていたため、2号機は再度爆弾を投下し、その息の根を止めた・・・。
地上部隊は歓声を上げたが、それだけで終わらないのが怪獣災害だ。分裂した怪獣はまだ活動を続けており、さらに死亡した本体からは有毒ガスが噴き出したのだ。
「?!大変です!あの死骸から出ているのは火山性ガスと同様の、硫化水素などです!」
アブラゼミの隊員は計測器を見てそう言い、それを聞いた自衛官達は、状況ガス!と、叫び、元から着用していたアブラゼミ部隊を除き、直ぐに防護マスクを着用した。しかし、自衛団や警察はそんな装備など携行していないため、自衛隊は現場からの離脱を指示、大半はヘリに乗って離脱した・・・。
それから1時間後、応援の部隊も到着し分裂した個体はほぼ一掃された。ガスの濃度も低下したため、警備は警察と自衛団が担当した。
白川郷には、伝説のひとつで一夜にして滅んだ帰雲城と城下町(推定500名が死亡・但しこれは実話)、そして地震が発生する前に死に脈から異変を感じ取った名医の伝説、そして黄金の白山(はくさん)様伝説などがあり、白江は今回出現した怪獣がこれらを引き起こしたのでは?と、推測した。
分裂体鎮圧後、自衛隊が調査した際に未知の反応を検知、反応はあの旅行者4人組が持ち去った金塊から発せられていた・・・警察の事情聴取の結果、金塊について教えた老婆が「容疑者」として浮上したのだが、地元住民への聞き取り調査で驚くべきことが判明する、この地域に該当する老婆は存在しないと住民達が話したためだ。白川郷では地域の住人同士が親戚関係である場合もあり、大抵の人間は把握されている筈なのだが、その老婆だけ一切情報が出なかったのだ。
当初はこの老婆がテロリストではないかと睨んでいた警察と自衛隊だが、後に怪獣があらかじめ分裂させた「目覚まし時計」の様な役割を持つ存在ではないかとの仮説が立てられた。もっともその場合、この怪獣は永い眠りについていたために、時代の変化に対応できなかった事になるが・・・。
その後の研究で、この怪獣が生命エネルギーを吸い取って生きていた事が判明し、過去にも同地域で災害を誘発させ、生物を大量死に追いやっていた可能性が浮上した。そのため今回の出現理由は、観光客の生命エネルギーを狙ったものとされた。その特徴的な外見と特性により、怪獣は「デスゴールド」と名付けられた。
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