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気付き
しおりを挟む「おおりゃああっ! 喰らいやがれっ! さっきのお返しだっ! もう一丁!」
ドガッ! ドゴッ! ゴシャ! ゴンッ!
スインが叫ぶ度に巨大な岩が現れ、落ち、モンスターを潰して行った。
アイテムボックス無双。
誰もが憧れる能力の正し使い方。それがこれ。
アイテムボックスに収納してあった大岩をなるべく高い位置から取り出してやるだけの物理攻撃。
取り出す位置を見定めて効率的に行う必要はある。
「おらおらあっ! まだまだあっ! こっちもかっ!」
グジャッ! ドンッ! ゴッシャッ!
出したらそのまま壁として使ったり、囲まれないように立ち位置をずらしたり、時には再度収納してまた落としたり。
簡単とは言ってもここはモンスターハウス。一筋縄ではいかない物量がある。
でも無敵状態だから大丈夫。多少の無茶も、多少の攻撃を受けても大丈夫。
時には自分ごと押し潰したり、体当たりや蹴りを使ったりしながらも、確実に数を減らして行った。
当然、レベルは上がる。音が響く度にモンスターは減り、スインのレベルは上がって行く。
それは時間の問題だった。
疲れ知らずでどんどん身体能力が上がって行くスインと、何をやっても効果がなく徐々に数を減らして行くだけのモンスター。
ものの数分で終わった。やる気を出せばこんなもの。ではなく、二次元知識を正しく使えばこんなもの。そういう結果だった。
「……ふ、ふう~~。終わったか。なんとかなったな」
どがっ
フロアには無数の魔石が転がっていた。大岩は既に収納済み。
疲れてなどいないはずだが、流石にひと仕事終えた達成感と、ピンチを切り抜けられた安堵感で座り込むスイン。
「岩場のフィールドがあって良かったよ。ははは」
ぐだあっと力を抜き、猫背になってこれまでを振り返る。
もしかしたらと思ってやってみたのも良かった。容量無制限だからこそ出来た力技だった。
途中にあった岩場のフィールドで、なるべく大きな岩を片っ端から収納していたのだ。これは流石に入らないんじゃないかってサイズの岩も収納できてしまった。流石、容量無制限。
もっと早く気付けば良かったが、流石にあんな状況ではそんな冷静な思考は無理だった。終わったからいいか。そんな事をぼおっと思いながら落ち着きを取り戻して行った。
すると、目線の先に、何も着けずに露になってる息子を発見した。疲れた気がして視線を落としたから気付けたようだ。
「……くっそう。なんかすーすーすると思ってたらこれか。この懐かしい感じは頭のはずなのに、嫌なものを思い出させやがって。
それに噛まれてる時、時々やけに気持ちいいような気がしたのは、直接だったからかよ。ちっ」
何処がとは言わないが。噛みちぎろうとして引っ張られたり、根元までがぶっとやられてたみたいだったからか。舌使いは成ってなったが。……
そんなどうしようもない事を素っ裸のまま思い返していると、キラッと何かが光った気がした。
ふと視線を上げて確認してみると、部屋の中央にさっきまではなかったはずの物体が現れていた。
「っ! お、おお! あれはもしかしたら宝箱か?!」
上層で発見した宝箱、ここに落とされる事になったそれとは違い、光り輝くいかにも高そうなお宝が入ってそうな造りの物だった。
あれだけのモンスターを倒したのだ。きっと凄いお宝が入っているに違いない。興奮を抑えられないといった声を上げ、直ぐに中身を確認したくなった。
興奮するのは仕方がないと思うが、さっきの余韻が股間に残っていたせいか、着替えも取り出そうともせずに立ち上がり、前に進んだ。素っ裸のままで。
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