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2度ある事は3度ある
しおりを挟むがぷんっ
そんな音がした。
巨大な生き物が、小さな物を口に含んだ音だった。
ここが何階層かは分からない。
分かるのは、また罠に嵌まってしまった事。またかなり落ちてしまった事。
更に、今回はそこを確認する事もなく、少し明るくなったと思ったら、また直ぐに暗闇の中に包まれてしまった事。
やはり怖くなって目を瞑ってしまっていたのがいけなかった。
現状理解不能。
そしてやってくる2度目の体験。
今度はさっきよりも大きな存在。複数ではないようだが、そんな事は比べようもないくらいに圧倒的な力が加えられているのが分かった。より大きな牙によって食われていただけに。
『ドラゴン』
ひと昔前のRPGでよく見掛けたあっさりしたフォルムのドラゴン。勿論、スインには分からない。
中級ダンジョンだけあって存在していてもおかしくない。かと言って中級だから属性付きのドラゴンではなかった。
そんな事は大した違いじゃないくらいにはレベル差があるのだが。モンスターハウスを1つ攻略したくらいでは埋められない圧倒的な差が。
それがドラゴン。そんなの誰でも知っている。二次元好きなら当たり前情報。
長いスロープの先に滑り落ちたのが、ドラゴンの居る底だった。
ズジャジャジャジャ~~~ッと辺りに響き渡る痛々しい音を立てたり、通常なら肉まで削られ、骨まで達しているんじゃないかと思われるゴガガガガッとの音も出したりして登場したのもさっきと一緒だった。
今回は素っ裸なのに一緒と言うのもおかしいが、それが無敵状態だったから。という事にしておいて頂きたい。
ドラゴンは光り物が好き。収集癖がある。突然、武装もしていない素っ裸の人間が落ちて来た。しかも光り輝く要素を秘めた逆立つ金髪状態で。
興味はあったが、本能からか、人間は殺すべき相手とされているからか、少しの逡巡はあったものの、思わずぱっくんこ。
いきなり噛み付かれたのも一緒だったのだが、今回はドラゴンだけに、ひと噛り。ふた噛り。そしてあっという間に胃袋の中へ。ごっくんこ。
そんな音と共に、またしても暗闇の中を滑り落ちる体験をするのだった。本日3回目。
やはり何も出来なかった。
「うおっ! な、な、な、何だっていうんだーっ!」
「ぐわっ、ぐわっ、ん?」
「ぐわああぁぁ~~~っ!」
そんな事は叫んではいたようだ。
そしてたどり着いたドラゴンの胃袋。
生暖かい感覚と、ねちゃ~っとした感触と、いや~な酸っぱい臭いの中に包まれていた。勿論、真っ暗闇。
無敵状態でなければ、恐らく数分のうちに息絶えている事だろう。そもそも噛られた時点でアウトだっただろう。
胃酸、酸欠。
素っ裸だから溶ける物はない。飲み食い要らずの無敵状態だから酸素も不必要。全て無効。神にも等しい存在だった。こんな事の為に与えられた期間ではなかったはずなのだが。
神によって叶えられた髪。ユニークスキル『カリスマヘアー』は伊達じゃない。ドラゴンごときの胃酸で溶けてしまうような柔な髪じゃなかった。
スインの毛髪を貶める、落としめる物などこの世界に存在しない。それがカリスマヘアー。
『逞しい髪の毛』
『決して抜けない毛根』
『恥ずかしくならずに生きて行けるだけの毛量』
それは天寿を全うするまで保証されているのだ。無敵期間なのだから、そもそも髪も無敵なのだが。
それを活かせるかどうかは、スイン次第。
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