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転換点 2
しおりを挟む絶望した訳じゃない。
諦めるつもりなんてなかった。
やれる事をやってみる。
そう思って繰り出される様々な攻撃の数々。
無敵状態なので、基本的には耐性スキルや補助スキル、生産スキルなんてのは関係ない。但し、補助魔法の開放は効果があった。
『全ての補助魔法レベル3』
ドラゴン相手には心許ない効果だが、それでも何もしないよりはまし。無敵状態 + 補助魔法。これはこれで効果大だった。
『髪の毛』
それは人体で最も強固な器官とも言われているのだとか。
1本当たりの強度は凡そ150グラム。
そして髪の本数は平均10万本。
理論上だが、1人の頭髪で15トンもの重さに耐え得るという事になる。
ここは剣と魔法のファンタジーの世界。
『カリスマヘアー』
それは神に与えられた髪。
お分かりだろう。そう。それはこの世界最強の髪。
ユニークスキルだけに、誰に教わるでもなく思いのままに髪型を変える事が出来た。それは既に1人髪型チェックで実践済み。
伸ばせばどこまでも伸び、巻けばどこまでも太くなる。強化などせずとも変幻自在に操れる。
しかも色も自由に変えられる。その気になれば透明にも出来る。つるっぱげに見えてしまうからやってなかっただけ。
それを防具にしたのなら。それを武器にしたのなら。
手持ちがないから思い付けた。裸だったからやってみた。やってみる価値はあると思って試してみた。
広く展開させればネットのようにも使え、不安定な足場でも体勢を整える事が出来た。
更には、下に突き刺して杭にも出来たし、薄く広げて足場も作れた。
意味もなく盾を作ってみたり、体に巻き付かせて鎧のようにも出来た。自分好みの。カラーリングも自在だから少し余計な時間を使った。
姿見なんかがあったからいけなかった。それ程の余裕があったという事なのか、只のアホなのか。
強度は最強、硬度も最硬。間にクッション材代わりに髪を展開させれば、衝撃も吸収してしまう最強の全身鎧が完成した。勿論、任意で動かせる。
片や攻撃力。
髪をまとめてしならせては打ち。
巨大な塊にして叩き付け。
素早く動かせば切り傷を。
まとめて素早く動かせば更に斬り傷を広げ。
鋭く刺せば突き通し。
まとめて鋭く突き刺せば貫き通す。
そう。変幻自在の攻撃をする事が出来た。出来てしまったのだ。まさに唯一無二の武器。カリスマヘアー。恐るべし。
これに全ての補助魔法レベル3が加わったのだ。只のドラゴンなど、畏れるに非ず。胃の中だったが。
胃の中だけに、更に攻撃はよく通った。直前のレベルアップが無ければどうなっていたか分からない。
だが、今はそんな事より攻撃に集中する。
時間の問題もある。
でき得る限り、髪の毛鎧のファッションチェックの時間を取り戻すべく、スインは己の頭髪を振り回しまくった。歌舞伎役者も真っ青なレベルの動きで。何度も何度も。
『補助魔法 開放』により所謂バフ掛けを行い、体力、魔力、力強さ、素早さ、器用さ、精神力を増加させて攻撃を行った。幸運の増加魔法はなかった。
それはやはり時間の問題だった。
「カリスマヘアー・ネット!」
「カリスマヘアー・アンカー!」
「カリスマヘアー・フィールド!」
「カリスマヘアー・シールド!」
「カリスマヘアー・アーマー!」
「カリスマヘアー・ウィップ!」
「カリスマヘアー・ハンマー!」
「カリスマヘアー・カッター!」
「カリスマヘアー・ソード!」
「カリスマヘアー・ニードル!」
「カリスマヘアー・ランス!」
「カリスマヘアー・ボンバー!」
なんて言葉がドラゴンの胃袋の中で響いていたが。
最後のだけは勿論乗りで叫んだだけのもの。それくらいの威力を込めて、持たせて、最後の止めとばかりに打ち込んだ一撃だった。
ドラゴンは悲痛な鳴き声を上げ、暴れるのを止め、ズッシャーンと音を立て、目を呟り、その巨体の活動を停止して、フェードアウトして行った。
勝利である。
自在に動く自分の髪が、明らかにダメージを与えられていると感じる感触、悲鳴、振動、そして静寂。解放。
途中から楽しくなってきて、調子に乗りつつ色んな技を開発して行った。それであんな叫び声が響いていたのだが。
勝利は勝利。勝者こそ全て。
これが元おっさんがカリスマヘアーを覚醒させた出来事だった。
スイン・ハーゲン。18歳。無職。
彼の本当の異世界物語は、ここから始まる事になる。
◼️◇◼️◇◼️◇◼️◇◼️◇◼️◇◼️◇◼️
『ハーゲンの逆襲【生え際の型】』をここまでご覧頂きありがとうございました。
続編、『ハーゲンの逆襲【頭頂部の型】』が投稿されるかどうかは反響次第でございます。
皆様も頭皮には気を使い、悔いのないようお過ごし下さいませ。それでは。m(_ _)m
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