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第九章 初夜
2 愛撫 ※
しおりを挟むそうするうち、着物の肩をするりと落とされ、肩と胸が露わになる。
さすがのユーリにでもわかった。
いま、自分がどれだけ煽情的な姿になっているかが。
「やはり、可愛らしい方だ」
玻璃がすぐさま、露わになったユーリの首に吸い付いた。優しく舐め、吸い、軽く歯を立てて愛撫される。
「あひっ……!」
びくん、とユーリの体が跳ねた。
「やはり酔いが回っておられるな。とても敏感になっている」
もう片方の手でユーリの胸元をまさぐりながら、玻璃が笑った。その吐息だけでも感じてしまい、体がぴくぴく震えてしまう。
「や……ん、おっしゃらないで……くださっ」
玻璃の手は容赦なく、しかし優しくユーリの体を愛撫しながら、手早く着ていたものを脱がせていく。そうされているだけで、全身に電流が走るように快楽が突き抜けていく。
玻璃はユーリの耳を唇で食み、戯れに息を軽く吹きかけて、いちいち敏感に反応するユーリを楽しんでいるようだった。
やがて玻璃はすっかりユーリを脱がせてしまうと、自分もさっさと最後の一枚を脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿になった。首から肩、背中にかけて隆々とした筋肉が現れる。胸元も見事に隆起した広々とした胸筋で覆われている。
(すごいな……やっぱり)
ユーリはうっとりと彼の体に見惚れた。
あの岩礁の上で最初に出会ったときの、逆三角形の後ろ姿を思い出す。
鍛え上げられた体でありながら、玻璃からは粗野な雰囲気は微塵も感じられない。それが海底皇国の皇太子としての品であり、生まれの良さの証左でもあるのだろう。
いったい何をどうやったら、こんなに美しい肉体が造り上げられるのだろうか。
ぼんやりしていたら、玻璃がこちらを見て笑った。
「ふふ。見惚れてくださるか? 嬉しいぞ」
「えっ? あ、いえ。すみません……ご無礼を」
無意識だったが、あまりにもまじまじと見つめすぎていたようだ。ユーリは真っ赤になって俯いた。
「何を謝ることがあろうか。見るだけでなく、これからは存分に触れてくだされば嬉しい。もちろん俺もそうするしな」
「え? いや……」
「もはや、だれに憚ることもない。……さ、参ろう」
玻璃はにこっと笑ってそう言うと、ユーリの手を引いて湯殿に入った。
◆
互いに生まれたままの姿で、軽く体を流してから湯舟につかる。
玻璃は当然のようにユーリを抱きよせ、胡坐をかいた自分の膝に横に座らせるようにした。肩から上が湯の上に少し出るけれども、すでに火照った体にはそれがちょうど心地よかった。
玻璃はユーリの髪や耳、こめかみに軽く口づけを落としながら囁いた。
「あまり長湯はするまいぞ。余計に酔いが回るからな」
「はい……」
言いながら、肌の上をさらさらと玻璃の手が撫でている。それは優しい愛撫だった。
ユーリは脳の中心がどんどんぼうっとしてくるのを覚えながら、側にある玻璃の唇に自分から吸い付いた。
すぐに玻璃が応えてくれる。唇を開き、互いの舌を絡み合わせて存分に味わった。
湯殿の中に、二人の口元から溢れる水音が加味されていく。否が応にも腰の中に熱が集まり始め、足の間のものが堪らなく欲望を訴え始めた。
「ん……ん」
「さて。上がって『準備』をいたそうか」
「は……準備、ですか」
言ってはみたが、すでに蕩けたような声しか出なかった。ユーリは玻璃の太い首に両腕を回して、「まだ足りない」とばかりにキスをねだった。
「玻璃どの……。もっと」
玻璃は嬉しげににこっと笑ってしばらくの間それに応え、ユーリを抱き上げて湯舟からあがった。
そのまま、湯舟のあるスペースに隣接した小部屋へ連れて行かれる。そこはアルネリオにもあるような、蒸気で体を温める部屋のようだった。
壁につくりつけられたいくつかのパネルには、それぞれに機能があるらしい。つるりとした表面には、用途を示したマークが点灯している。見たところ、そこから様々な飲み物が出てきたり、冷たいタオルが出てきたりするようだ。
玻璃はそこでユーリを下ろし、自分と向かい合わせになるように立たせた。
パネルの中の、管の先から水が飛び出るようなマークのある場所に玻璃が触れると、そこが開いて中からなにやら長いものが出てきた。管の先はパネルの中につながっている。反対側の端には、大人の指二本ぶんぐらいの太さの、不思議な細長い器具がついていた。
全体に丸みのあるフォルム。先端には小さな穴があいている。
「玻璃どの。なんです? これ……」
「うん。使ってみればすぐわかる」
言って玻璃はユーリに優しく口づけを落とすと、器具の根本にあるらしいスイッチに触れた。器具の先端から、どろりとした透明な液体が溢れ出てくる。玻璃は慣れた手つきでそれを手に取ると、片腕でユーリの腰を支えて立ち、ユーリの尻の奥へと指を滑らせてきた。
「んあ……っ?」
ぐちゅりと入り口に液体を塗りつけられる。
「少しの間、辛抱されよ。俺に抱きついておればよい」
玻璃は低く言って、ぬめぬめとしばらくユーリの入り口にそれを塗りこめ、柔らかくしているようだった。
「あ、……んあ、あっ……はり、どの……」
慣れない感覚で、ひどくくすぐったい。それに、少し気持ちが悪かった。ユーリは言われた通りに玻璃の肩にすがりついて唇を噛み、その違和感にしばらく耐えた。
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