ルサルカ・プリンツ~人魚皇子は陸(おか)の王子に恋をする~

るなかふぇ

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第九章 初夜

7 発光 ※

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「あっ……あ、ああっ……あっ」

 玻璃がしっかりと自分の中に入りきるまで、ユーリは必死に息をつめないように努力した。それがすべておさまって、玻璃はひとつ息をついた。

「大丈夫か? ユーリ」
「は……い」
 あまりの圧迫感で、どうしても声が掠れてしまう。それでも嬉しくてユーリは笑った。多分それは、かなり引きつったものだったろうけれど。
 ユーリは自分の下腹をそっと撫でながら玻璃を見上げた。
「ここ……入ってます、ね」
 掠れた声で言った途端、玻璃がカッと目を見開いた。と同時にユーリの腹に収まったものがぐっと力を増して起き上がるのがはっきりと分かった。
「あ……っ」
「あまり煽らないでくださるか」
「そ……んなこと」
 していない、と告げる暇は与えられなかった。玻璃はユーリの腰を掴むと、少し腰を引いてから深く打ち付けた。
「はうっ……!」
 凄い衝撃だ。たった一度だけのことで、目の奥がちかちかする。体の最も奥の部分が熱を染み出させてじんとする。
「手加減できなくなって困るのはそなただぞ。ん?」
「あ、あふっ、あっ……」

 腰をゆるく打ち付けられながら煽られると、ただもう変な声が出るだけになった。時折り玻璃の先端が、例のあの場所をごつごつとえぐる。

「あひゃっ!? あ、やあっ……あ、あんっ! だ、だめ……え、そこ」
「ん? ここがよろしいか」
「ちっ、が……! あ、ああ、だめ、だめえっ……!」

 肉のぶつかり合う音と、淫靡な水音がまたユーリの耳を犯す。
 快感は鋭い電撃になって、まっすぐにユーリの先端へ突き抜け、脳をも犯した。
 抽挿は、次第に速く激しくなっていく。ユーリはもう、自分が何を言っているのか分からなくなった。ただただ玻璃のたくましい肩に縋りつき、蕩けた声で啼き続けた。

 溶けてしまう。
 発光する。
 体のすべてが、そして頭の中まで全部。
 自分をつくりあげている細胞のすべてが歓喜を歌い、玻璃の細胞と溶けあってひとつになりたいと叫んでいる。

「あ、あ……やあ、あああっ……!」

 最後にひと声たかく啼いて、ユーリはふっと意識を飛ばした。





 貴人たちのねやの外、少し離れた場所にしつらえられた従者の間では、少年とひとりの男が寝ずの番をしていた。
 少年は落ち着かない様子でしきりに目の前の茶器を持ち上げては紅茶をすすろうとするのだが、毎度それが空になっていることに気付いて皿に戻す。そんなことがもう何度も繰り返されていた。

「少し落ち着かれませ。ロマン殿」
「え? わ、わかっています。ぼ……私は落ち着いていますとも!」
 つい甘えた調子で自分のことを「僕」と呼びそうになり、済んでのところで言い直す。ロマンは膝の上で意味もなく手を握り合わせた。
「左様ですか」

 男のほうでは特に動じる様子もなく、いつも通りの落ち着いた声音で答えたのみだ。ここが従者専用の部屋だということで、男は今宵は空気に姿を溶かす術を用いていない。全身黒ずくめの姿で顔の下半分まで黒布で覆ったいつもの姿は変わらないが。
 簡素なつくりのテーブルと椅子を使っているロマンとは違い、男はずっと部屋の隅で片膝をついた姿を崩さなかった。

(大丈夫かな……ユーリ殿下)

 なにより心配なのはあの方のことだ。
 一応、故国で男性同士の行為について侍従たちから聞いてはおられたようだった。こんな半分子供みたいな自分がご指南するわけにはいかなかったからである。だからロマンにだって詳しいことは分からないけれど、耳で聞くのと実際にやるのとではきっと大違いに決まっていた。

(おしとねでうまくお過ごしだろうか。なにか不具合などはないだろうか……?)

 ロマンもさすがに今ではあの玻璃殿下がユーリ様にひどいことをするなんて、小指の先ほども考えていない。玻璃殿下は本当に、心の底からユーリ殿下を大切に思ってくださっている。
 けれども、なにしろユーリ殿下はなにもかもが未経験。もしやなにかの些細な不始末でもあれば、玻璃殿下ご自身がおとがめにはならずとも、下々の者から嘲笑されないとも限らないではないか。
 あの方は、故国のアルネリオ宮の中でも散々に見下され嘲笑われてきた御方だ。こんな遠国おんごくにやってきてまでそんなつらい目にお遭わせすることなど、断固受け入れるわけにはいかなかった。

(だってまだ殿下には、『皇太子配殿下』というお立場以外、こちらでの地歩らしいものが何もない──)

 そうだった。ここ滄海わだつみの人々から見れば、ユーリ殿下はあの玻璃殿下がいきなり見初めて、他国からほとんど有無をいわさず連れてきた他国の王子であるに過ぎない。それ以上でもなければ、以下でもない。万が一、玻璃殿下のお気持ちが変わったりでもすれば、明日にでもぽいと本国へ返されるようなお立場なのだ。
 とりあえずは今のところ、もの珍しそうな、あるいは胡散臭そうな目で遠目にユーリ殿下を観察しているばかりで、親しく近づいてくる者はだれもいない。それどころか逆にはっきりとした敵意を持って接してくる、あの瑠璃るり皇子のような者さえいる。
 今のところはあの第二皇子が静かにしてくれているので、ロマンもそこだけは安心しているけれど。

(だけど……)

 いかに玻璃皇子本人が大いに後ろ盾になってくれるとしても、それだけでは心もとない……と、ロマンは思ってしまうのだ。
 故国からの従者といったら、こんな半端な年齢の少年ひとり。あの玻璃殿下を除けばユーリ殿下のお味方になれるのは、この自分ただひとりだ。
 だが、たかが従者にできることは限られている。「文」はともかく「武」のほうの腕はさっぱりだし、いざとなればこの身を挺してもという覚悟くらいは決めているものの、たかだか細腕の少年ひとりでユーリ殿下をお守りしきれるものかどうか──。

「……ロマン殿」
「えっ? は、はい」

 姿こそ隠していないが、いままで気配すら消して空気のように静まり返っていた男に急に呼ばれて、ロマンはハッとした。
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