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第十章 予兆
3 小部屋にて ※
しおりを挟む「はあ。ちょっと安心しました……」
「そうか? それは良かった。ということで、早速始めるとしよう」
玻璃がそう言って壁の枠のほうへ目配せをすると、枠の内側にさっと光が入った。どういうしくみかわからないが、そこに先ほどの柏木の顔が映し出されている。どうやらそれは、この部屋とあちらをつなぐ《もにたー》だったようだ。と、部屋のどこかにあるらしい機器を通じて柏木の声が聞こえてきた。
『それでは皇太子殿下、皇太子配殿下。ご準備はよろしゅうございましょうか』
「ああ、いつでも構わぬ」
言って玻璃は無造作にテーブルの隅にあるパネルに指を走らせた。と、なにもなかったように見えた中央部が四角く開き、中から何かがせり上がってきた。現れたいくつかの見慣れない器具を見て、ユーリは目を丸くした。
それは、先端に細い管のついた透明な細長い容器のようなものだった。管の先はテーブルにつながっている。先日、玻璃がユーリの後孔を洗浄したときに使ったものと少し似ているように思われた。
ユーリはそれを見た途端、今から何が行われるかを察した。
(うわ……。まさか)
かあっと勝手に体温が上がってくる。玻璃は何も言わなかったが、今の自分が相当赤面しているのは明らかだった。部屋を照らしていた天井や壁が光度を落として、全体に薄暗くなる。あまり煌々と明るいと、そんな気分にはなりにくいからだろうか。
玻璃は無造作に器具のひとつを取り上げて、安心させるようにユーリに微笑んで見せた。
「本来はここで、気分を盛り上げるための映像を見るなどしてひとり孤独に作業するわけなのだが。幸い、今回は俺もいる。同時に二人分、採取してしまえば柏木とて面倒もない。そうしようではないか。ん?」
「『ん?』ではありませんよ。まったくもう……」
ユーリは完全に両手で顔を覆ってうつむいている。
いったいこの人、何を考えておられるのだろう。やっぱり皇族だけあって、あまり羞恥心というものがおありではないのだろうか。自分も一応アルネリオの王族だけれど、こんなごく私的な行為を人の目にさらすなんて、今まで考えたことすらなかった。
「ん? お嫌か」
「い、……イヤだとは申しておりませぬ」
「そうか。ならばよかった」
玻璃がぱっと破顔した。そうしてユーリを抱きよせると、優しくその唇を食みはじめた。ちらっと視線をやると、玻璃が行動を起こす前に、目の前の画面はもとの状態に戻っていた。
すでに何度もしている行為だ。絡められてくる舌に、ユーリも本能的に吸い付いた。狭い部屋にしばし水音が響く。
「ん、……んむ」
「緊張なさるな。ここからは柏木たちが我らの姿を見ることはない。不敬に当たるゆえな。あとは完全にAIが管理と処置をする」
「んう……はい……」
顔の角度を変えながら何度も唇と舌を愛撫され、歯の裏や上顎の内側を舐められる。それだけで、もうユーリの腰の奥にあの炙られるような滾りのもとが生まれはじめた。
「ふ、う」
「存分に声を出せ。好き放題に乱れても構わぬぞ」
「んっ……、そ、そんなことっ……!」
即座に唇を離してちょっと睨んだが、玻璃はやっぱり微笑んでいるだけだった。その手がするりとユーリの足の間へ滑りおりてくる。すでに起き上がって布を押し上げているそこを、玻璃は愛おしむようにそっと撫でた。
途端、ユーリの腰が跳ねる。
「は……あっ!」
「こちらは、口とは裏腹のようだな。ん?」
「も……もうっ!」
が、抗議の声をあげる暇も与えられない。玻璃はすっかり手慣れた様子でユーリのアルネリオ式の下穿きの前をくつろげ、ユーリ自身を露出させて、先ほどの器具をさっさと装着してしまった。
もっと固いものかと思ったが、その器具は何でできているのか、ふにゃふにゃとした柔らかな素材でできていた。それに、とても薄い。玻璃の手がそこを扱くと、なんにもつけていないかのように、直接その刺激が脳天へ突き抜けた。
「あっ……は、はり、どのっ……」
「少しやりにくいな。俺に跨ってみてくれるか」
「あ、は……はい」
言われるまま、ソファに座った玻璃の太い腰に向かい合わせに跨る格好になる。促されて玻璃の太い首に腕を回し、抱きつく形になった。
玻璃も自分の装束の下穿きを緩め、器具を装着しているようだ。ユーリの首から胸元のあたりをくつろげ、首筋や鎖骨のあたりにきつめの口づけを落としてくれる。彼の吐息が熱い。
「そなたも触ってくれるか? そなたの手がよい」
「は、はい……」
導かれて、玻璃の固くて大きなものを握りこむ。器具を通してもその怒張に浮き出た裏筋がはっきりと指に伝わってきた。
これで昨夜まで、さんざんに啼かされていたのだ。文字通り、声が嗄れるまで。今もまだ、いつもの声には戻っていない。開かれた襟元からは、彼が七日七夜つけまくってくれた赤い痕がのぞけるだろう。
いまやユーリの肌のわずか一部、小指の先ほども、彼の唇に愛されなかった場所はないと言ってもいいほどだ。
「あっ、あ、あん……あっ」
玻璃がユーリの手の上から、ユーリと自分のものを一緒に握りこんで扱き上げる。次第に激しさが増していき、ユーリはあっという間に昇りつめさせられた。
玻璃の手の動きに合わせて勝手に腰ががくがく動き、甘い喘ぎを部屋いっぱいに満たしてしまう。
「ふあ、あっ……! や、いや……っ、はりどのっ……」
口づけの合い間に、必死に玻璃を見つめて訴える。
と、目尻に溜まった涙を吸い取られた。
「やはんっ……! あ、い、イく──」
「達け。ユーリ」
言われてちゅ、と頬に口づけを落とされる。
「遠慮なく、沢山出せよ」
「ん、んぅ……っ!」
途端、下腹で暴れまわっていた欲望が爆発した。
ユーリの先端から、どくんと熱い奔流が迸った。
「ん、ん……」
びゅく、びゅくと間断なく飛び出していく体液が管を通ってテーブルに吸い込まれて行くのをぼんやりと見つめる。
荒い息をついて玻璃の首にすがりついていたら、玻璃が耳元でくすっと笑った。
「よくできたな。良い子だ」
「もう。……わ、童子ではありません」
言ったら玻璃がふふ、とまた笑う。
「そうだな。俺にとって、そなたはそれだけ可愛いということだ。こんな場所でなければ、また腰のたたぬようになるほど抱いてやりたいところなのだが」
「あ、……だめ」
ぐい、と腰を抱き寄せられて喘いでしまう。
腰の奥にまた、ずくんと欲望の灯がともる。
「さて。俺の方がまだだったな。手伝ってもらえるか」
「あ。はい……」
とろんとした目のまま、ユーリはまだ怒張したままの玻璃のものへ手を伸ばした。上から握り直され、扱いて差し上げる。
こんな器具がついていなければ、いつもして頂いているように口でして差し上げたいところだったが、仕方がない。
やがて玻璃も絶頂を迎えてくれた。
「……ん」
鼻から抜ける甘い声まで男らしい。やや苦しげに顰められたりりしい眉に、かじりつきたいような気持ちになる。
そして。
……やっぱりその硬くて太いもので、自分の後ろを愛して欲しい。
ユーリはうっとりと、愛する人のその瞬間の、世にもなまめかしい表情を見守った。
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