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第十四章 未来へ向かって
10 約束
しおりを挟む「顔をあげてよ、サフィー。君たちは何も悪くないんだ。君の言う通り、子どもなら当たり前のことだもん。大バカなのは、そんなこともわかんなかった……俺だ。俺だよ!」
言いながら激しく自分の胸を叩くと、その拍子に顎から涙が飛んでいった。
再び下の子たち三人が「パパぁ」「ちちうえ~」と泣きながら抱きついてくる。
実はこの子たちだって、本当はどのぐらいの寿命があるのか定かではない。片や地球上で恐らく最長の年齢を誇るのであろう魔王と、《レンジャー》である人間の子として生まれたかれらが、どんな性質を持った存在なのかは未知数な部分が多いのだ。
ただし、驚くべき利点が一つあることは明らかになっている。かれらは《魔素》を使って魔力を操ることができるが、一方で《勇者パワー》を操る能力も同時に持っているということだ。
一般的な魔族は《勇者パワー》に対して抵抗力がなく、長く人間たちのスペースにいると体調を崩し、魔法が使えなくなる。それは人間が魔族のスペースに長くいると体を壊すのと同じだ。だが、魔王と自分の子にはそれがない。
魔王国の医者たちは、これを非常に画期的な出来事と捉えている。
この子たちが存在することにより、今後、魔族と人間との結婚に関して未来に展望が開けると考えているのだ。
地球上で《勇者パワー》が充満しているような地域でもかれらなら働ける。つまり、これまで魔族が足を踏み入れることが叶わなかった地域にも進出して行けるかもしれない、というのだ。
もちろんこれは、人間たちにとっては脅威でしかない。リョウマ自身、それを悪用されることがないよう、なるべく長くまた厳しい目で経過を見守らねばならないと考えている。この点については魔王もまったく同意見だった。
魔王と自分の子であるこの子たちの寿命については、今のところはわからない。魔王が少なくとも千年以上生きている存在なので、人間の血が混ざったとしてもさほど短くはないだろう、というのが医者や研究者たちの意見ではあるが。
いずれにしても、リョウマの方がはるかに先に彼らを遺して旅立つことは確かだろう。
「父上。父上も、どうか謝らないでください」
今度はローティが言った。親の欲目かもしれないが、長子として、必死に涙をこらえつつも毅然と立つ王子としての姿はなかなか頼もしいものだった。
「父上のお考え、よくわかるのです。父上がエルケニヒ父上のことをお考えになってなさったこと……というのも理解しているつもりです。ぼくだってイヤですから。こんなにリョウマ父上のことを愛しておられるエルケニヒ父上が、ただ一人地上に遺されることになるなんて」
「ローティ」
「ご存じでしょうが、ぼくたちはみんなリョウマ父上のことが大好きです。ですから父上には、みんなと一緒に少しでも長く、そして毎日を幸せに、仲良く暮らしていただけたらと願っています」
ローティがひとつひとつ、噛みしめるようにして言葉にしている。
「も、もちろんだよう……」
もはや子どもたちと区別がつかないぐらいにべしょべしょの顔になりながら、リョウマはローティアスとサファイラにも手を伸ばした。彼らが体を近づけてくれて、他の子とまとめて一緒に肩を抱きしめる。それをまた外側から魔王の大きくて長い腕が抱きしめてくれた。
「ローティの申す通りだ。前にも申したが、ともかくも、一日一日をなるべく仲良く幸せに暮らすこと。幸せな思い出をたくさん作ることよ。魔王とはいえ私とて、広大な宇宙からすれば塵のような存在にすぎぬ。そんなわれらにこれ以上にできることはないし、これが最も努力すべき点なのだ。そうした努力を日々積み重ねるのだ。……それがどのような寿命をもつ存在であるとしても、な」
「……うん。うん……」
「約束します、父上」
「わたくしも」
「ぼくも」
「わたしもっ」
「うわあああんっ」
さすがのローティも涙を流してうつむき、常にきりりと美しいサファイラも涙をこぼして唇を噛みしめている。他の子たちは再び大泣きをはじめ、それはリョウマも同じだった。ただ一人、みんなを両手に包み込む魔王だけが、やや悲しそうではあるものの、なぜか不思議な微笑みを浮かべていた。
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