星のオーファン

るなかふぇ

文字の大きさ
29 / 191
第三章 ゆれる想い

10 ※

しおりを挟む

 男の手は思ったとおり、人を抱くことにとても慣れていた。
 アルファをベッドに下ろしてからは、そこまで体を包んでいた毛布を床の上にすべり落とし、アルファの感じやすい部分を見つけ出しては、何度も優しくゆっくりとそこを責めた。
 耳朶、うなじ、首筋から鎖骨。胸の飾りは彼に何度も丁寧に舐め上げられ、歯を立てられてすっかり色づき、ぬらぬらと光って立ち上がり、彼を煽っているかのようだ。
 はじめのうち、アルファはできるだけ声を抑えていたつもりだった。だが、そんなこともすぐに諦めることになった。それほどに、体じゅうを撫で、キスしてくれるベータの手や唇は巧みに過ぎた。

「すき……。すき」

 いつのまにか、アルファは泣きながら、そう言うばかりになっていた。
 こうして彼に抱いてもらえるのなら、むしろ邪魔な記憶なんて、いっさい戻らなくてもいいと思った。あの記憶が戻ってしまえば、そして例の「ひどく可愛くないアルファ」が復活してしまえば、彼はもう、自分を抱いてはくれなくなるかもしれない。
 そうなるのは、恐ろしかった。

「は……! んんっ」

 するりと両足のあわいに手を差し入れられ、固くなったものを撫でられて、アルファの腰がまたぴくんとはねた。
 ベータはまだ、多少乱れているとはいってもほとんど先ほどと変わらぬ姿のままだった。だが生まれたままの姿のアルファの体にはそこらじゅう、可能なところにはどこにでも、思うさまに彼の印を落としていった。
 今ではすっかり、アルファは足の力を抜いている。ベータの前にすべてを晒して、それはしどけなく横に開いているばかりだ。

「あ……ああ」

 ぺろりとまた胸の飾りを舐められ、巧みに唇と舌で愛されて痛いほどだ。それだけでも足の間のものが悲鳴をあげる。自分では見えないけれども、恐らくそれはとっくに欲望の雫をたらして彼の腹の辺りにこすり付けられているはずだった。

「やあ……っああ――」

 火のようにおこった熱が、腰の中だけでせつなく暴れ狂う。それをまたあやすようにして、ベータの手がゆるゆると摩りあげ、アルファは思わず腰を振った。
「ああっ……んあっ」
 と、ベータがあっというまにそれを咥えてしまい、アルファは驚いた。
「えっ? あ……!」
 奴隷の身だった自分に対して、あの「主人」はそんなことはしなかった。むしろ自分で自分を慰め、それをじっくりと酒の肴にされたぐらいのことで。
 もちろん、こちらはさんざんに「主人」のものに奉仕させられたけれども。

「あ、あ……だめ、そん――」
 と思う間に、ベータは巧みな舌使いでアルファのものを愛しながら、そうっと後ろへと指を忍ばせてきた。
「ひっあ……ああっ……!」
 前をあやされながら、内側へ突き入れられてまた腰がはねる。
「んっ、だめ……ベータ、そんな……の、だめえっ……!」

 アルファが内側のどの場所でいい声をあげるのかを、ベータはあっさり見抜いたらしい。以降はこりこりするその部分を執拗に責めるかと思えば、急に逸らしてしばらく焦らされたりと、アルファはすべてベータの思惑どおり、しかし散々に自分ばかりが気持ちのいい思いをさせられてしまった。

「や、だめ……ん、ん……あん……あんっ!」

 頭がとろけてしまいそうだ。
 声を我慢するなど、この時点でもう無理になっていた。ぐちゅぐちゅと、彼の指が内側の襞を翻弄してくる。
 こんなことをされ続けたら、すぐに達してしまう。あまり早く達すると、あの「あるじ」は不機嫌になって、「お仕置き」という名のさらにひどい扱いが待っていたものだった。
 が、ベータはアルファが「だめ、だめ」と必死に首を横に振るのに構わず、唇と舌、そして指の動きを早めだした。

「あ、あ、あ……ああっ……!」

 そうして呆気なく、彼の前で達してしまった。
 しばらくその快感にもっていかれ、アルファは体を震わせてその絶頂を味わっていた。そうする間にベータはアルファのものを飲み下し、きれいに舐め上げ、さっさと次の準備を済ませていたようだ。
 例の手袋にもなるスプレー・ゴムを手早く自分のものに掛け、たっぷりとジェルを塗りつけている。それを受け入れるべきアルファの場所は、すでに先ほどの時点で同じものをしっかりと塗りこまれていた。

 とろりとした目で見上げると、野性味のある彼の顔が明らかな情欲を浮かべてこちらをじっと見下ろしていた。
 しどけなく開いた足のその奥に、先端があてがわれる。

 いいか、と訊かれた声がやはり情欲に掠れていて、アルファは震えた。
 それは、喜びによる震えだ。あの「主人」の相手をさせられていたときとはまったく違う、本当に心から嬉しくて、泣きたくなるほどの奔流が起こす痛み。
 こくりと頷き、おずおずと手を伸ばして、アルファは彼の体に抱きついた。
 自分から、彼の腰に足を絡ませる。

「……きて」

 かすかな声で囁いた途端、一気に体の奥まで貫かれた。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

窓のない部屋の、陽だまりみたいな君

MisakiNonagase
BL
都心の高層ビル、その「内臓」とも言える地下一階のメール室。 そこで働く山﨑智之は、目立たず、期待されず、淡々と郵便物を捌く「透明人間」のような毎日を愛していた。自分は低スペックで、華やかな地上には居場所がない。そう、諦めていた。 ​そんな彼の静寂を破ったのは、二十二階の住人、若きエース・風巻隼人だった。 完璧なルックス、圧倒的な成果、羨望の眼差しを一身に浴びる彼が、なぜか地下のメール室に足繁く通い始める。 ​「五分だけ、ここにいさせてくれないか」 ​一通の郵便物から始まった、五分間だけの秘密の共有。 次第に剥き出しになっていく隼人の孤独と、それを無自覚に包み込んでしまう智之の温度。 住む世界が違う二人が、窓のない部屋で見つけたのは、名前のつかない「救済」だった。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。 想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。 悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。 ※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。 二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...