星のオーファン

るなかふぇ

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第三章 ゆれる想い

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「……きて」

 かすかな声で囁いた途端、一気に体の奥まで貫かれた。

「あ、……あ──っ……!」

 アルファは自分の中に打ち込まれてきたその燃えるような楔を感じながら、仰け反り、喘いだ。つい先ほど達したというのに、また危うく達しかける。
 歯を食いしばってそれを堪えていると、「こら」と軽くこめかみのあたりを叩かれた。目を開けると、男の顔がすぐそばにあった。

「我慢しなくていいぞ。イきたいだけ、イけ」
「あ、う……」

 いやだ。
 そんなのでは、ベータは存分に楽しめない。
 そう思って首を横に振ったのだったが、ベータは「しょうのない奴」とくすりと笑った。

「なら、どれだけ我慢できるかやってみればいいさ。勝負だな?」
「ええ……?」

 その途端。
 がっしりと腰をつかまれ、激しい抽挿が始まって、アルファは人語を発することができなくなった。

「ひ……いっ、あ、やあ……あ、あ…ああ……!」

 激しく肉のぶつかりあう音がする。がつがつと体の奥の奥までを、その熱い楔で暴かれる。

「やっ……はあんっ、んっ……んああっ……!」

 信じられないほど、い。
 あの蜥蜴の男を満足させるためにむりやりに出していた演技の声とはまったくちがうものが、どんどん自分の喉から溢れでる。体じゅうの細胞が歓声をあげて、全身が発光するのではないかと思った。
 堪えようと思ったはずが、いつのまにかあっさりとまた達していて、くるりと体位を入れ替えられ、今度は後ろから攻められる。アルファは自分でも無意識のうちに、必死に腰を振っていた。

「いッ……あ、ああ……いい、のお、ベータ……ふあ、ああっ……」

 もはや自分でも、何を言っているのだか分からない。脳の真ん中がずっと真っ赤な明滅を繰り返して、何も考えられない。ただただ、彼の熱が自分の中をかき混ぜるのに付いていくだけだ。

 い。
 変になる。
 おかしくなってしまう。
 戻れなくなってしまう──

 同じ行為であるはずなのに。
 好きな人に愛されるというのは、こんなに。

(こんなにも、違うんだ──)

 いつの間にか涙をこぼし、嬌声のために開きっぱなしの口からは舌をのぞかせ、こぼれる唾液もそのままに。
 ただただ、アルファは啼き続けた。
 何度も何度も、彼のものに貫かれながら。



◆◆◆



 ぱちりと目を開くと、ちゃんと隣に男はいた。
 静かな手つきで、眠っていたアルファの髪を撫でてくれていたらしい。アルファはゆらゆらとした夢心地の中でも、彼の手の暖かさを感じていた。

「……起きたか」

 うっとりするほどの色気を含んだ低い声がすぐそばでして、優しく額に口付けを落とされる。アルファの両腕は彼の体に絡んでいる。前からしっかり抱きしめられる格好で、ずっと眠っていたらしい。
 互いの体液で汚れていたはずの体は、すでにきれいにされていた。彼も自分も、今はスウェットのパンツを穿いた姿である。

「少し無理をしすぎたな。大丈夫か」
「ううん。いいんだ」

 アルファはにこりと笑って首を横に振った。
 確かに腰はとても重だるかったけれども、それがただただ、嬉しかった。
 ベータは上体を起こすと、ベッドサイドのテーブルにある水差しからコップに水を注ぎ、アルファを起き上がらせて飲ませてくれた。ただの水のはずなのに、それはいやに美味かった。アルファは喉を鳴らして何杯も飲んだ。
 ベータは自分も一杯飲むと、またアルファを抱きしめる姿勢で寝床に入った。そんな風に自然に抱き寄せてもらえることが、この上なく嬉しかった。アルファは自分からも彼の体に擦り寄ると、その鎖骨のあたりに顔をうずめた。

 彼の心臓の音が聞こえる。それを聞いていればいつまでも眠っていられそうなほど、それはアルファにとって心地の良いリズムを刻んでいた。
 とろとろとまた、睡魔が襲い掛かってくる。外はすっかり朝の時間だろうと思われたけれど、男の店が開くのは早くても昼からだ。慌てる必要はなかった。
 幸せな眠りに落ちかけているアルファの額に、頬にと、また優しいキスが落ちてきている。

(……うれしい)

 このままの時間が、ずうっと続けばいいと思った。
 そのためだったら、あのうるさい元の「アルファ」、つまり「タカアキラ殿下」の記憶なんて、戻らなくてもいいとすら思った。
 それで、いいではないか。
 この男にこうして愛されて、ふたりで居させてもらえるのなら。
 あの子供たちのことは、また二人で面倒をみてやればいい。
 そのほかのしがらみについては、分からないなら分からないでいいではないか。今更そんなことを知ったところで、恐らく自分は苦しむばかりなのだろうから。

「大好き……ベータ」

 夢うつつでそう囁くと、男の腕に力がこもった。
 そのキスが、唇にそうっとおりてくる。

「俺もだ……アルファ」

 言ってまた、お互いの唇が重なりあう。
 夢のようだ。
 舞い上がる。
 まさかこの自分にこんな時間が来るだなんて、あの蜥蜴の男のものだった頃には想像もしなかった。
 アルファの目じりに浮かんだものが、また男の唇に吸い取られる。

 しかし。

「愛してる……タカアキラ」

 とろとろと幸せに包まれて眠りかけていたアルファの意識は、耳朶じだにそっと囁かれた、そのひと言で打ち砕かれた。

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