ルサルカ・プリンツ 外伝《小さな恋のものがたり》

るなかふぇ

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おまけのおはなし2 ロマン君のおたんじょうび

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「あっ……んあ、んんんっ……」

 前を彼の口で愛され、後ろをその指で慣らされながら、ロマンはもう変な声で啼きながら身をよじり、涙をこぼしているしかできない。
 男の指は最初さすがに違和感があったけれども、何度も抜き挿しされているうちに次第に慣れてきた。黒鳶の指はどこまでも優しい。彼だって体はロマンを求めてくれているのだから、つらくなかろうはずがないのに。それでもどこまでもゆっくりと、ロマンを慣らすことだけを考えて進めてくれているのがわかった。
 その間、前を舐められ、袋のところまで唇だけでやわやわとまれてしまって、また我慢ができなくなりそうになる。

「っだめ……くろ、とび、どのっ……!」

 そんなにされたら、また達してしまう。黒鳶だけを放って自分が二回もそうなるなんて絶対にいやだった。
 黒鳶が心配そうにこちらを見た瞳を見返して、ロマンは必死に伝えようと頑張った。

「まえ……だめっ。また、いっちゃう……から」
「左様ですか」

 黒鳶は言われたとおりそこから唇を放すと、ロマンの最奥を指で慣らすことはやめないまま、上体を伸びあがらせてロマンの唇にキスをした。

「んっ……」

 今やなんのためらいもなくその舌を受け入れながら、ロマンは男の背中に手を回す。
 男の唇は再びロマンの耳朶をみ、うなじを舌先でくすぐり、首筋から乳首へと遠征してゆく。

「はう……っ、あ……あん」

 ロマンはもう夢見心地だ。最初はくすぐったさもあった胸の尖りは、今やすっかり女のように感じやすくなってしまった。
 と、腹の奥で蠢いていた黒鳶の指が、くん、ととある場所を押し込んだ。
 快感が前までまっすぐに貫いてくる。

「ひゃっ!?」

 ロマンはびくっと腰を跳ねさせた。
「こちらですね」
 男は勝手知ったるような顔をして、そこに触れるのはやめ、また入り口を広げる作業に戻ったようだった。
「あ、……あ、あの──今の」
 ロマンは両手で顔を隠しながら恐るおそる訊いた。男は別ににこりともせず、伸びあがってロマンの頬に軽く口づけ、耳に口を寄せて言った。

「楽しみになさってください。……いずれ、お好きなだけ突いて差し上げます」
「え、ええっ……?」

 そうか。そこがつまり……アレか。
 ロマンは例の性教育プログラムで聞きかじったことを思いだしてまた赤面した。
 やがて男はロマンの隣に寝そべると、向き合ってまた互いのそれをロマンと一緒に握りこみ、激しく扱きあげ始めた。

 今度こそ、一緒に。
 ロマンはこみ上げてくる快感を必死に逃がすことだけ考えて、黒鳶が最高潮に達するのを待った。

「ふ……っ」

 さすがの黒鳶も息が荒い。熱い吐息をそのまま互いに封じ込めるようにして、せわしなく口づけを交わす。
 閉じられた彼の目は、意外に睫毛が長いようだった。いつも精悍な彼の顔がロマンとともに快楽を貪って、男としての色気を放っている。

「くろとび、どの……くろ、とびどのっ……!」

 最後はもう、ひたすらそう叫んでいるだけだった。
 そしてようやくロマンの望み通りに、ふたりのものが時を同じくして精を放った。





 少し息を落ち着けてから、黒鳶は適当に互いの体を拭いた。そうしてロマンの体を横抱きに抱き上げ、浴室へ向かった。ロマンはまだ半分朦朧としていて、彼にされるがままだった。
 食事の前に溜めていた湯はいったん落とされて、浴槽にはまた新たな湯が張られている。アルネリオだったらこんな湯の使い方はもったいなくてできるものではない。だがこちらではそこらの蛇口からふんだんに冷水と温水が出るため、別に大したことではないらしい。こういうところも、慣れるのに随分時間がかかったものだ。
 
 黒鳶は浴室内でロマンを下ろすと、まず互いの体をざっとシャワーで流した。そのまま当然のように腕を引かれ、浴槽へ導かれる。
 ロマンが湯舟に浸かると、その背後に黒鳶も入ってきた。彼の足の間にロマンの身体がまる形だ。黒鳶の腕が柔らかくロマンの肩を抱きよせてきて、そのまま彼の胸に体を預ける形になる。
 自然、ほうっと息をついた。
 こんな風に彼と一緒に風呂に入るなんてはじめてのことだ。
 そもそも黒鳶は、普段はあの黒ずくめの姿をほとんど変えない。せいぜい頭部の巻布を外すぐらいのことだ。マスクを外した顔だって、出合ってかなり経ってから見たぐらいである。
 それがこうしてお付き合いをするようになり、ロマンの前でだけは頻繁にマスクをはずして──でなければ口づけができないのだから仕方がない──浴衣姿なんていう大変珍しい格好まで見せてもらえるようになり。

(……ああ。本当に、お付き合いをしてるんだな)

 なんだか今さらのことをまた考える。
 アルネリオで下働きをしていた日々のことが、まるで嘘みたいだ。冷たい水で山ほどの洗濯物を洗い、あかぎれとしもやけでひび割れた指の痛みと出血に悩んでいた頃のことなんて。
 あの時の自分に教えてやりたい。数年後には自分が海の底の皇国にいることを。そこで大好きな人ができ、お付き合いを始めることも。そしてそれが女性ではないことなんかも。考えてみれば、それが最も驚くべきことだった。
 と、ぽちゃりと水音をたてて黒鳶の手がロマンの頭を撫でた。

「何をお考えですか」
「ちょっと、昔のことを。……なんか嘘みたいで」
「嘘、ですか」
「その……しあわせだなあって。今、あなたとこうしてるのが夢みたいで」
 ロマンは口に出してしまってから急に恥ずかしくなり、それを紛らわすように目の前のお湯をぱしゃぱしゃと意味なくかき回した。
「……左様ですか」

 黒鳶がロマンの体を後ろから抱きしめる。その腕に力がこもり、背後から耳や頬、肩口のところに口づけを落とされた。
 と、きゅっと首筋に鋭い痛みが走った。

「あ! えっ……?」
 ぱっと手をやったらもう、黒鳶の唇は離れていた。
「おまじないをひとつだけ。『目が覚めたら夢だった』と思われては敵いませぬゆえ」

 脱衣所の鏡を見て、ロマンはまたもや茹で上がった。
 先ほどの場所にくっきりと、黒鳶の「所有の証」が咲いていた。

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