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おまけのおはなし2 ロマン君のおたんじょうび

9 黒鳶の手 ※

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「んっ……んん」

 背後から抱きしめられ、丁寧に丁寧に愛撫される。黒鳶は半裸の状態にしたロマンの後ろから、首筋に、背骨のあたりに唇をずらしていきながら口づけを落とし、ロマンの肌にあますところなく触れていく。
 脇腹を撫で上げられて、ぞくぞくっと背筋に電気のようなものが走った。それが脳の中心と足の間のものを直撃し、浸食していく。

「あ……あ」

 たまらずゆらゆらと腰をゆらすと、下着の上から尻をゆっくりと揉みしだかれた。
 ロマンのそれは、もうぴんと空を目指して勃ちあがり、先端にぎっちりと欲望が集まって痛いほどになっている。先端が下着の布に擦れてつらい。それでも黒鳶の意地悪な手はなかなかそこに触れてくれなかった。
 するすると手の先が下着の中に入りこむと見せかけて、すぐにするっと逃げてゆき、別の場所の愛撫に移る。太腿の内側をなぞり、肝心の部分をそらして足の付け根をたどってから、臍の周囲をくるりと撫でて胸の突起をいじる。

「や、……あ、ああ……んっ」

 ロマンは半ば朦朧としながら、体をひくつかせることしかできない。焦らされすぎて、その場所がさらに痛みを訴えた。
 首を捻じ曲げて口づけを求めると、あっさりと与えて貰えた。黒鳶の唇が離れたところで、掠れた声でおねだりをする。

「や……。もう、さわ、て──」

 彼の手を股間へそろそろと導きながら、触って欲しいと切れぎれに訴えると、黒鳶はもう一度かるくロマンの唇を吸い、そろりと下着の中へ手を忍び込ませてくれた。

「あうっ……!」

 待ちわびすぎて、はしたないほど腰が跳ねてしまう。黒鳶の手はロマンのそれに触れると下着をずらし、外気に晒した。そのまま握られ、上下にゆっくりと扱かれる。それだけでもうロマンは背中をのけぞらせ、腰は勝手にゆらゆらと曲線を描いた。

「はっ……あ、あ……っ」

 ふとした拍子に、自分の尻が黒鳶のものに布ごしに触れている。
 ロマンの先端はすぐに先走りの雫をこぼしはじめたのだろう。黒鳶の手のあたりから、ぬちぬちと淫靡な水音が響き始める。指先で先端をしばらくぐりぐりと弄られてから、大きな手にぐっと握られ、扱かれる。

「ああっ……あ、あん……あふっ!」
 激しく上下に扱かれだしたころにはもう、ロマンの脳は早くも真っ白になり始めていた。
「い、やっ……! く、くろ、とび……どのおっ」
 そんな風に触られたら、いやでもすぐに達してしまう。ましてや夢にまで見た大好きな人の手なのだ。
 ロマンは激しく喘ぎながら、必死で背後の黒鳶の目を探した。いつのまにか涙がこぼれていて、彼の顔はぼんやりと滲んで見えた。
 と、手の動きがふっと止まった。

「……お嫌ですか」

 少し消沈したような声音に気付いて、ぶんぶん首を横に振る。そうではない。そうではなくて、一人で先に達してしまうのがいやなのだ。
 あなたも一緒がいい。本当に僕を求めてくれているなら、最初は一緒に。
 すっかり支離滅裂になりかかっている舌足らずの口で、何とかそう伝えてみた。黒鳶が、すうっと目を細めたようだった。

「了解しました」

 ぼそっとそう言うと、黒鳶はロマンの脇に手をさしこみ、軽々と持ち上げて自分の方を向かせてしまった。向かい合った状態でぼんやりしていたら、黒鳶はロマンの手を自分とロマンのものを合わせた上から握りこませるようにした。

「あ……う?」

 黒鳶の手がロマンの手ごと、ふたついっぺんにこすりはじめる。ロマンも慌てて手を動かした。
 自分のものと黒鳶のものが、こすれてどんどん熱を生み出す。

「あ! だめっ……!」

 我慢したいと思っていたのに、もうとっくに限界に来ていたロマンのそれは、あっというまに欲望をはじけさせてしまった。

「ふあっ……ん、ああ……!」

 恐ろしいほどの快感が腰から脳髄へと突き抜ける。無意識のうちに黒鳶にしがみつき、ロマンは足指を丸め、きゅっと全身を縮めた。ロマンの放ったものが、どろりと白く黒鳶の鍛え上げた腹筋を汚す。
 荒い息をつきながらそっと見れば、黒鳶のものは依然、そのままの状態で屹立していた。つまり、彼はまだ達していないのだ。
 一緒にいきたいと言いながら、さっさと自分だけが果ててしまった。いくらなんでも早すぎたのだ。

「あ……。ご、ごめんなさい──」

 ロマンは恥じ入って俯いたが、黒鳶はむしろ飄々とした声で答えた。

「お気になさらず。……それより、少し準備をしておきましょう」
「え? あっ……!」

 そのまま仰向けにベッドに沈められ、足を開かされる。精を放ったばかりのロマンのものを、黒鳶はぺろりと舐め上げた。

「ひいッ……!? な、なにを──ああっ!」

 次にはもう、ぱくりと咥え込まれている。
 ロマンは完全に混乱した。

(う、うそ──!)

 信じられない。
 あの黒鳶だぞ。
 あろうことかあの黒鳶が、いつもきりりと引き締められているあの唇で、自分のそれを愛撫してくれている……!
 そう思うだけで、ひどい羞恥が全身を駆け巡った。だが、不快だとは思わない。

「ひっ……ひいっ、あ、ああ……っ」

 黒鳶が裏筋をべろりと舐め上げ、また全体を咥えこんで、頬裏で刺激してくる。人の体内の熱い粘膜でこすられて、めちゃくちゃにい。またそのまま天国へ行ってしまいそうなほどだ。
 ……巧みすぎる。
 この男、こんな技をいったいどこで仕入れてきたのだろうか。
 だが、ロマンにはそんなことを冷静に考えている余裕などなかった。

「あっ……あっ、あはんっ、あ、だめ……! く、黒とび、どのっ……!」

 力を失っていたはずのそれは、まるで若さの証明を見せつけるようにとっくに硬さを取り戻している。
 やがて黒鳶がとぷりと何かの液体をロマンの股間に垂らしたのがわかった。

「あ……?」
 
 快楽に翻弄されてぼんやりしているうちに、つぷりと何かが体の奥へ侵入してきた。
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