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第二部 エスペローサ編 第四章 陰謀
7 協力者(3)
しおりを挟む王宮の中をホッパーとともにクリスに連れられて歩き、今まであまり来たことのない区画にやってきて、シュウは思わずきょろきょろしていた。廊下や壁、天井などの装飾が格段に簡素な感じがした。ナリウスたちがいつも歩くような通路とはかなり違う。
「こちらです、シュウ様。お入りください」
呼ばれて目をやると、クリスが廊下の隅にあるごく小さな扉を開いて、二人に手招きをしている。そのまま小さな部屋の中へと案内された。どうやら、ちょっとした倉庫として使われている部屋らしい。不用品らしき家具などが隅にかためて置かれている。
部屋の中には、兜をはずした若い士官らしき男が三人立っていた。年のころはいずれもホッパーと同じぐらいに見える。どの顔を見ても朴訥そうな、いかにも誠実そうな雰囲気のある男たちだった。
(……あれ?)
その三人の顔に見覚えがあることに気づいて、シュウは驚いた。
「あの、この方たちって──」
クリスがすぐに頷いた。「すでに見知っておいででしょう。先日から『医務の間』にて働きだした、新人の医療補佐官たちです」
「え、ええ……。でも」
シュウにはその三人が今、なぜ甲冑を着た兵士の姿で自分の目の前に立っているのかがわからなかった。クリスが簡単に種明かしをした。
「ご紹介します。右から、ダニエル、ソーン、ガイルです。今後の作戦活動において、極秘裏に協力を仰いでいる者たちです。どうぞ、以後お見知りおきを」
クリスの紹介を受け、若者たちもそれぞれに礼をして自己紹介をした。医療補佐官としての名前も、いま聞いたものとは異なっていたはずだ。つまり初めから偽名で潜りこんでいたということなのだろう。シュウも慌てて礼を返した。
「あ、シュウです……。どうぞよろしく……」
当の若者たちは驚きを隠せない様子だった。彼らはいま初めてシュウの姿を目にしたわけではなかったが、それは包帯姿の時のことだった。ここで素顔のシュウを初めて見て、やっぱり驚かずにはいられなかったらしい。だがそれでもみな慎み深く下を向いて、必要以上にじろじろとこちらを見ようとはしなかった。
シュウもそうだが、結構はずかしがりやな青年たちであるようだ。よく見れば、どの若者も瞳の光が純粋で優しい。シュウは密かに、彼らに親近感を覚えた。
「どうぞ、彼らの顔を覚えておいてくださいませ。特に『医務の間』において、今後も引き続きあなた様の同僚として活動することとなります。ですがどうぞ、くれぐれも今までどおりの対応をお願い致します。彼らは今回の作戦において、重要な潜入部隊ということになります。もちろん、ここでのことは陛下以外の者にはご内密にお願いいたします」
さらさらと説明されて、シュウはしばらく考えなくてはならなかった。
(作戦? 潜入……? つまり、どういうこと……?)
シュウの頭の中でぐるぐる回っている疑問符については理解しているようだったが、クリスはそれ以上は言わず、すぐに二人を伴って部屋から出た。三人は部屋に残したままである。ごく内密の話であるため、なるべく人目に立ちたくないのだろう。
「詳しいお話は陛下のほうからあるはずです。ここで、これ以上話すのは危険ですので」
それだけ言うと、クリスはまた何事もなかったかのように兜を被り、ホッパーとシュウを促して歩き出した。シュウはそのまま、予定通りにアイリスの待つ食事の間へと案内された。
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