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◇
「リーナ、そろそろ洗濯物が乾いているころよ。取り行こう」
今日の分の縫い物をしていたら、同僚のミイシャが声をかけた。集中していて気づかなかった。もうそんな時間になったんだ。
ミイシャは十六歳でちょうど里奈と同じ時期に騎士寮の近くの洗濯場に来た。ミイシャもハンナお母さんと同じで農村出身だ。キャラメル色のクルクル髪の毛で、緑色の大きな目をしていて可愛い女の子だ。
ミイシャの方がずっと年下なのに、里奈を子ども扱する。
でもハキハキして世話好きで明るくて性格が滅茶苦茶いい。村では村長の息子と婚約していたけれど、非人と分かって婚約破棄された。
婚約者には妾にしてやる、と言われて頭に来たから村を出てお城で働いている。
絶対に「子どもができなくてもいい。ミイシャ、おまえが一生俺の側にいてくれるだけでいい」って言ってくれる人と結婚するんだ、と言っている。普通に魔力があっても、そんな誠実な男なんているのかな? ←里奈はかなり恋愛に関しては枯れてる。育った環境のせいで仕方ないよね……。
年配の非人たちはいつか現実を知るからと彼女になにも言わない。
「子どもはいらない、君さえいればいい」って言う男性は中世的なこの世界には少ない。
魔力ゼロの里奈もこの世界では結婚できないみたい。
はじめてそのことを教えられた夜はベットの中で涙を流した。家族ってお母さんしかいなかったから、いつか普通の家族を作りたかった。
普通の夫と普通の子ども。普通の家族。貧乏でも家族で毎晩夕食食べる家族が欲しかった。
最近の夢は一ランク下げて、妾にでもなろうと思っている。
一時期でもいいから愛されたいと思う。この世界は恋人とか飛ばして婚約して結婚してエッチだ。
だから恋人じゃなくて妾だ。非人の女と結婚する人がいないなら妾か売りしか処女膜を失う方法がない。
あ~あ、これほど処女膜が鉄の壁になると知っていたら、オタクでもいいから日本の童貞君にあげるんだったよ。
異世界でとりあえず妾募集の平均顔さんを探そう。そして少しでも生活費をくれるなら儲けもんだ。もう日本人の常識を全部捨てる。
モラルなんて異世界に飛ばされた時に一緒に飛ばされた。そうよ、せっかくなんだからエロ本バリにビッチ女になろう。
結婚できなくても一生処女って悲惨じゃない?
子どもできない、って死刑宣言されたからには、遊んで遊んでどこが悪いのだ! 逆ハーレム万歳! 複数絡みウエルカム。
エロ漫画のように快楽を経験したいなあ。
と、バカな考えをしないと毎日の生活が大変だった。もちろん非人には逆ハーレムも妾ライフも無理だと気づいたけれど。後は売りだけかあ……無理、醜男とエッチは生理的にダメだ。
だから結局里奈は毎日、洗濯下女として人のエッチの後の臭いシーツを洗う生活をしている。洗濯物が乾く時間帯は、靴下の穴などの縫っている。この世界は生活レベルが中世くらいだから衣服は貴重品だ。
毎日毎日数が減らずに永遠と積まれる穴の開いた靴下の山は、雑巾よりボロい。
この終わりのない雑巾靴下を見る毎日は、妾になってここを離れるまで続くのだろう。
「はあ……」
この世界に来て何度もしたため息がまた出た。
ミイシャと干しているシーツを一緒に畳ながら竿から取り入れる。里奈の洗濯所は騎士寮の近くにある。王族や貴族の館の洗濯場でなくてよかったね、っとみんな言っている。
王族や上級貴族たちって魔力が高いほど、なかなか子どもができないらしい。まあ非人よりはできるけれど。魔力にも相性があるらしい。
だから王族や上級貴族は性に関して緩いらしい。なんでも王様は三十歳なのにいまだに子どもがいないから側室や愛妾が両手の指くらいいる。王様の二人の弟たちもいい年しているのに子どもはいない。
なんでも側室や妾たちを王様と王弟たちはスワップしているとか。
けっ! 里奈の妄想世界より異世界は性生活が乱れているよ。もうエロ漫画を描いている友人にネタを提供してあげたい。
大体三年たっても妊娠しない側室たちは他の貴族たちに嫁ぐ。愛妾は最初から魔力の低い下級貴族や平民だから、子どもはできない。と言っても側室が多いから、愛妾を持つ王族はいないらしい。
王様と王弟たちはなりふり構わず子作りに励んでいる。
だから王族や上級貴族の住んでいる部屋担当の洗濯下女たちは毎日何度もシーツを洗っているんだって。
それでも大変なのに、王様の寵愛巡っての争いのストレス発散で、非人の下女たちに悪質な意地悪してくるらしい。
お嬢様、令嬢が呆れるわ。
絶対令嬢たちに近づかない! と思っていたのに。
騎士寮の近くにいると王宮に努めている下級貴族令嬢やいいところ出身の女官たちが旦那を探しにこの辺をウロウロしている。
この国では騎士はエリートだ。家督を継がない貴族の次男たちが多い。
「リーナはこのバスケットを先に運んでね。あたしは他の洗濯物をとってから後うを追うわ」
なぜか里奈と言いにくいみたいで、みんな「リーナ」と呼ぶ。「うん」と頷いて両手いっぱいに籠を抱えて建物の方へ歩く。
「キャッ、痛い」
突然背中を押されて前に倒れた。腕に抱えていたシーツの入ったバスケットが土の上に倒れている。
「邪魔よ。本当に非人ってノロマなこと。目障りなのよ。人間じゃない非人なんてさっさとこの世から消えればいいのに」
ひざまずいて立ち上がろうとしたら、今度は肩を押されて尻もちをついた。
唖然としながら声の持ち主を見上げると、金髪を綺麗に結えた侍女がいた。里奈を見下ろしながらニヤニヤしている。
彼女の横にいた他の侍女たちも「ほほほほー」と笑って次々に文句を発した。里奈は言葉が上手じゃないから反撃することもできずに下を向いたままだった。目を合わしたら最後もっとひどい目にあう。
里奈がなんにも反応しないから、彼女たちは飽きがきたらしく「今後わたくしたちの前に姿を現したらただではすまさないわ」と言って去っていった。
こんなに広い庭であきらかにワザと彼女たちはぶつかってきたのに。どうして里奈は文句を言われないといけないのか。
魔力なしってそんなにいけないことなの? 普通の魔力持ちって生活魔法しか使えないじゃない。
魔獣退治や治療魔法が使える人も王族と上級中級貴族しかいないじゃない。
侍女の彼女は普通の人と一緒じゃない。
非人って、人間じゃないと言う意味……。
ハンナお母さんもミイシャもずっとこんなふうに蔑まれていたんだ。
「リーナ、そろそろ洗濯物が乾いているころよ。取り行こう」
今日の分の縫い物をしていたら、同僚のミイシャが声をかけた。集中していて気づかなかった。もうそんな時間になったんだ。
ミイシャは十六歳でちょうど里奈と同じ時期に騎士寮の近くの洗濯場に来た。ミイシャもハンナお母さんと同じで農村出身だ。キャラメル色のクルクル髪の毛で、緑色の大きな目をしていて可愛い女の子だ。
ミイシャの方がずっと年下なのに、里奈を子ども扱する。
でもハキハキして世話好きで明るくて性格が滅茶苦茶いい。村では村長の息子と婚約していたけれど、非人と分かって婚約破棄された。
婚約者には妾にしてやる、と言われて頭に来たから村を出てお城で働いている。
絶対に「子どもができなくてもいい。ミイシャ、おまえが一生俺の側にいてくれるだけでいい」って言ってくれる人と結婚するんだ、と言っている。普通に魔力があっても、そんな誠実な男なんているのかな? ←里奈はかなり恋愛に関しては枯れてる。育った環境のせいで仕方ないよね……。
年配の非人たちはいつか現実を知るからと彼女になにも言わない。
「子どもはいらない、君さえいればいい」って言う男性は中世的なこの世界には少ない。
魔力ゼロの里奈もこの世界では結婚できないみたい。
はじめてそのことを教えられた夜はベットの中で涙を流した。家族ってお母さんしかいなかったから、いつか普通の家族を作りたかった。
普通の夫と普通の子ども。普通の家族。貧乏でも家族で毎晩夕食食べる家族が欲しかった。
最近の夢は一ランク下げて、妾にでもなろうと思っている。
一時期でもいいから愛されたいと思う。この世界は恋人とか飛ばして婚約して結婚してエッチだ。
だから恋人じゃなくて妾だ。非人の女と結婚する人がいないなら妾か売りしか処女膜を失う方法がない。
あ~あ、これほど処女膜が鉄の壁になると知っていたら、オタクでもいいから日本の童貞君にあげるんだったよ。
異世界でとりあえず妾募集の平均顔さんを探そう。そして少しでも生活費をくれるなら儲けもんだ。もう日本人の常識を全部捨てる。
モラルなんて異世界に飛ばされた時に一緒に飛ばされた。そうよ、せっかくなんだからエロ本バリにビッチ女になろう。
結婚できなくても一生処女って悲惨じゃない?
子どもできない、って死刑宣言されたからには、遊んで遊んでどこが悪いのだ! 逆ハーレム万歳! 複数絡みウエルカム。
エロ漫画のように快楽を経験したいなあ。
と、バカな考えをしないと毎日の生活が大変だった。もちろん非人には逆ハーレムも妾ライフも無理だと気づいたけれど。後は売りだけかあ……無理、醜男とエッチは生理的にダメだ。
だから結局里奈は毎日、洗濯下女として人のエッチの後の臭いシーツを洗う生活をしている。洗濯物が乾く時間帯は、靴下の穴などの縫っている。この世界は生活レベルが中世くらいだから衣服は貴重品だ。
毎日毎日数が減らずに永遠と積まれる穴の開いた靴下の山は、雑巾よりボロい。
この終わりのない雑巾靴下を見る毎日は、妾になってここを離れるまで続くのだろう。
「はあ……」
この世界に来て何度もしたため息がまた出た。
ミイシャと干しているシーツを一緒に畳ながら竿から取り入れる。里奈の洗濯所は騎士寮の近くにある。王族や貴族の館の洗濯場でなくてよかったね、っとみんな言っている。
王族や上級貴族たちって魔力が高いほど、なかなか子どもができないらしい。まあ非人よりはできるけれど。魔力にも相性があるらしい。
だから王族や上級貴族は性に関して緩いらしい。なんでも王様は三十歳なのにいまだに子どもがいないから側室や愛妾が両手の指くらいいる。王様の二人の弟たちもいい年しているのに子どもはいない。
なんでも側室や妾たちを王様と王弟たちはスワップしているとか。
けっ! 里奈の妄想世界より異世界は性生活が乱れているよ。もうエロ漫画を描いている友人にネタを提供してあげたい。
大体三年たっても妊娠しない側室たちは他の貴族たちに嫁ぐ。愛妾は最初から魔力の低い下級貴族や平民だから、子どもはできない。と言っても側室が多いから、愛妾を持つ王族はいないらしい。
王様と王弟たちはなりふり構わず子作りに励んでいる。
だから王族や上級貴族の住んでいる部屋担当の洗濯下女たちは毎日何度もシーツを洗っているんだって。
それでも大変なのに、王様の寵愛巡っての争いのストレス発散で、非人の下女たちに悪質な意地悪してくるらしい。
お嬢様、令嬢が呆れるわ。
絶対令嬢たちに近づかない! と思っていたのに。
騎士寮の近くにいると王宮に努めている下級貴族令嬢やいいところ出身の女官たちが旦那を探しにこの辺をウロウロしている。
この国では騎士はエリートだ。家督を継がない貴族の次男たちが多い。
「リーナはこのバスケットを先に運んでね。あたしは他の洗濯物をとってから後うを追うわ」
なぜか里奈と言いにくいみたいで、みんな「リーナ」と呼ぶ。「うん」と頷いて両手いっぱいに籠を抱えて建物の方へ歩く。
「キャッ、痛い」
突然背中を押されて前に倒れた。腕に抱えていたシーツの入ったバスケットが土の上に倒れている。
「邪魔よ。本当に非人ってノロマなこと。目障りなのよ。人間じゃない非人なんてさっさとこの世から消えればいいのに」
ひざまずいて立ち上がろうとしたら、今度は肩を押されて尻もちをついた。
唖然としながら声の持ち主を見上げると、金髪を綺麗に結えた侍女がいた。里奈を見下ろしながらニヤニヤしている。
彼女の横にいた他の侍女たちも「ほほほほー」と笑って次々に文句を発した。里奈は言葉が上手じゃないから反撃することもできずに下を向いたままだった。目を合わしたら最後もっとひどい目にあう。
里奈がなんにも反応しないから、彼女たちは飽きがきたらしく「今後わたくしたちの前に姿を現したらただではすまさないわ」と言って去っていった。
こんなに広い庭であきらかにワザと彼女たちはぶつかってきたのに。どうして里奈は文句を言われないといけないのか。
魔力なしってそんなにいけないことなの? 普通の魔力持ちって生活魔法しか使えないじゃない。
魔獣退治や治療魔法が使える人も王族と上級中級貴族しかいないじゃない。
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